日本農芸化学会誌
Online ISSN : 1883-6844
Print ISSN : 0002-1407
ISSN-L : 0002-1407
46 巻, 3 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • フラビン存在下におけるピリドキシン-5'-りん酸およびピリドキシン-4',5'-環状りん酸エステルの光酸化について
    峯浦 和幸, 田中 正生
    1972 年 46 巻 3 号 p. 103-110
    発行日: 1972年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    PIN-PおよびcyclicPIN-Pのフラビン存在下における光分解反応について検討した.その結果,
    (1)好気的条件下,フラビンの触媒量の存在により容易に分解した.
    (2)フラビンとしてはFRよびFMNが有効であり,一方FADの触媒活性は著しく弱い.
    (3)分解反応の至適pH域は7~8であった.
    (4)この反応は多くの金属イオン,特にCu2+, Hg2+, Fe3+, Fe2+, Co2+, Mn2+, Pb2+, Al3+, Ni2+などにより強く阻害された.
    (5) PIN-Pは水溶液中において, FMNの光に対する安定性を著しく増大させた.
    (6)この反応は1次反応であり, cyclicPIN-PがPIN-Pに比較して,やや反応性に富んでいた.
    (7) PIN-PおよびcyclicPIN-Pいずれの場合においても,反応生成物としてPAL-Pおよび4'-PIC-5'-Pを確認した.従って,本反応はフラビンによる光増感酸化分解であり, PIN-Pは4'位のhydroxymethylの酸化であること,一方cyclicPIN-Pは,環状りん酸エスチル構造のまま, 4'位のみが特異的に酸化されることを明らかにした.
  • Pyridoxine-4', 5'-cyclic phosphateの光酸化法によるpyridoxal phosphateの生産について
    峯浦 和幸, 高沢 清吾, 田中 正生
    1972 年 46 巻 3 号 p. 111-118
    発行日: 1972年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    フラビン存在下における光酸化反応を利用して, cyclicPIN-PのPAL-Pへの転換について検討した.その結果,
    (1)本光酸化反応によるPAL-Pの生成には,芳香族1級アミンのある種の化合物,たとえばアニリン,スルファニル酸などの添加が有効であった.
    (2)アニリンなどの芳香族1級アミンのみの存在では, PAL-Pの生成率は低く,その収率向上のためには脂肪族アミンのある種の化合物たとえばイソプロパノールアミン, n-ブチルアミンなどを添加することが必要であった.
    (3)アニリンなどの芳香族1級アミンは,フラビン存在下における光照射に対するPAL-Pの安定化に作用し,一方イソプロパノールアミンなどの脂肪族アミンは,共存するアニリンなどの芳香族アミンの安定化に作用しているものと推定した.
    (4) PAL-P生成のための至適pHは, 8~9であった.
    (5) PAL-P生成のための至適反応組成は, FMN,アニリンおよびイソプロパノールアミンを使用する場合, cyclicPIN-P:FMN:アニリン:イソプロパノールアミン=1:1/40~1/50:1~2:3のモル比であった.この反応組成の水溶液に可視光を照射することにより, cyclicPIN-P はほぼ定量的にPAL-Pに転換された.
    (6)本光酸化反応により, cyclicPIN-Pから生成する化合物を単離し, PAL-Pであることを確認した.
  • 檜作 進, 竹田 靖史, 今村 茂行
    1972 年 46 巻 3 号 p. 119-126
    発行日: 1972年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    (1)甘藷でんぷんを1Nの塩酸,硫酸,硝酸に浸漬して粒状デキストリンを調製し,デキストリン化の経過を分子の構造の面から研究した.
    (2)酸浸漬によって,粒の部分的な分解可溶化がおこる.この可溶化の速度は硫酸の場合を1とすると,塩酸では5.5,硝酸では9.1であった.
    (3)酸処理が進むに従い,生成した粒状デキストリン(アミロデキストリン)の重合度は低下し,β-アミラーゼの分解限度は上昇した.可溶化率の等しい時点では硫酸,塩酸,硝酸の順に粒状デキストリンの平均重倉度は大きく,β-アミラーゼの分解限度は高い.平均重合度が30前後のアミロデキストリンをSephadex G-100を用いて分別したところ,重合度の小さい区分ほどβ-アミラーゼの分解限度は高いことが認められたが, 100%には達しなかった.β
    (4)でんぷんを70%エタノールを含む1N HClを用いて65°Cで処理すれば, 2~3日の短期間にNägeliのアミロデキストリンに相当するものを調製することがでのきることがわかった.
  • 穀類の微生物に関する研究第14報
    伊藤 均, 飯塚 廣, 岡沢 精茂, 渡辺 宏
    1972 年 46 巻 3 号 p. 127-135
    発行日: 1972年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    著者らが米から分離した放射線抵抗性細菌Pseudomonas radios nov. sp.の菌株の中には,細菌胞子と同程度の放射線抵抗性を有する菌株があった.すなわち,放射線抵抗性株であるO-1株のD10値は,溶存空気平衡下の条件で140 kradであり,通気下では60 kradだった.そして,この値は放射線抵抗性細菌として有名なMicrococcus radioduransの値に近いものである. Ps. radioraの細胞懸濁液は,溶存酸素ガス平衡下および空気通気下でのγ線照射により,著しく放射線感受性が高まり,溶存空気平衡下と溶存窒素ガス平衡下においては,ほぼ同じ放射線抵抗性を示していた.これは,一般細菌とは異なった特徴である.さらにNaCNを0.002M添加することにより,著しい放射線増感効果を示すということは,呼吸系酵素が保護効果に大きな役割をはたしていることを示唆している.
    照射細胞の培養温度による回復効果は, 18~40°Cで著しく, E. coli B/r株の18°Cとは著しい相遠点である.また培地による回復効果は,合成培地のような最少栄養培地で著しく,栄養豊かな培地では逆に生存率が低かったのも,この菌の特徴の一つである.さらにクロラムフェニコールの添加により,回復が妨げられたことは, M. radioduransと同様に,損傷DNAの修復能が異常に強いことを推測させるものである.
  • 梶田 武俊, 千田 貢
    1972 年 46 巻 3 号 p. 137-145
    発行日: 1972年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    (1)AAおよびTRは, pH 3.6の溶液中で臭素によって定量的に酸化され,それぞれDAAおよびDTRに変化する.このDAAおよびDTRとOPDとの縮合物は, 2段の還元波を示し,除酸素された酸性溶液中ではきわめて安定であり,分離定量に利用しうる.
    (2) DAAの分解物であるDKAおよび糖のアルカリ分解物中のDC類は, DTRの第2波を妨害する.しかし,これらは第1波には影響しないため, DTRの第1波と第2波の波高比をあらかじめ求めておけば, DTRの第2波の増加分から計算によって,同時定量が可能である.
    (3)従ってAA, R, DAA, DRおよびDC類のポーラログラフ法による分離定量が可能であることを認めた.本法を食品分析への応用の可能性について検討し,ほぼ満足すべき結果を得た.
  • 村田 晃
    1972 年 46 巻 3 号 p. 147-153
    発行日: 1972年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    J1ファージ感染L. casei菌細胞では,ファージDNAの合成に並行して,宿主菌DNAの合成が続く.したがって,ファージDNAの合成あるいはそれに対する化学物質の影響について研究するに際しては,菌のDNAと分別してファージDNAの定量する必要があった.
    紫外線を照射した宿主菌のファージ合成能について検討のうえ,適当な条件さえ選べば,不完全殺菌線量の紫外線を照射し,菌DNAの合成を停止させた細胞にファージを感染させ,合成されるファージDNAを定量する方法が,本菌-ファージ系に適用できることを示した.
    紫外線照射による菌DNAの合成停止は,照射後培養することによって表われる菌DNAの崩壊をともなった.このDNAの崩壊は,培養開始時に抗生物質を添加することによって,抗生物質の種類・量によって程度の差はあるが,抑制された.これらのことは,各実験ごとに必ずファージ添加以外は,同一条件で同一時間培養するブランクを置き,菌DNA量の基準とする要があることを示した.
    なお,本研究を通じて, J1ファージの増殖は,宿主依存性が高いということが判明した.
  • Aspergillus nigerのマンナナーゼの精製とその性質
    辻阪 好夫, 檜山 圭一郎, 竹西 繁行, 福本 寿一郎
    1972 年 46 巻 3 号 p. 155-161
    発行日: 1972年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    Asp. nigerの生産するマンナナーゼの精製を行ない,その性質ならびに各種マンナンに対する作用を検討して,次の結果を得た.
    (1)本酵素はキシラナーゼなど,他のヘミセルラーゼ活性を有さない酵素で, β-1, 4マンナンに特異的に作用するβ-マンナナーゼである.
    (2)本酵素の作用最適pHは3.5, pH安定範囲はpH 4~7,熱安定性は50°C以下であった.
    (3)大豆種皮のガラクトマンナン,グアーガムのガラクトマンナン,コーヒー豆のマンナン,コンニャクのグルコマンナンに作用させたとにろ,マンノオリゴ糖を生成し,分解限度は各12, 12, 58, 39%であった.
  • 井村 シゲミ, 野並 慶宣
    1972 年 46 巻 3 号 p. 163-166
    発行日: 1972年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    By the ion exchange column chromatography the dialyzable nucleic acid derivatives in hen and duck egg were separated. In hen egg white they were adenosine, guanosine, xanthine, uric acid, UMP, UDP-sugars, GDP and UDP. The kinds of them in duck egg white, pullet hen egg white (laid by the hens within 2 months after first lay) and old hen egg white (laid by the more than 9 months after first lay) were almost the same. But quantitatively, hen egg white contained about 6_??_7 times more GDP and about 2 times more UDP than duck egg white. In hen egg yolk and duck egg yolk xanthine and uric acid were detected as dialyzable substances.
    The acid soluble nucleic acid derivative was UDP-sugars and others were too small in quantity to identify. Therefore it seemed that the extraction by dialysis was more useful than that by acid.
feedback
Top