次の4種の食餌; 1) 対照飼料, 2) Phe欠乏飼料, 3) Ile欠乏飼料, 4) アミノ酸欠乏飼料を給与する条件としない条件下のヒナに,
14C標識Phe, TyrおよびIleを注射して,呼気CO
2および総排泄物中への
14Cの移行を調べた.注射4日後に屠殺して, 1)および2)区のヒナにPhe-
14CおよびTyr-
14Cを注射したときの
14Cの体内保留量,および体内のPhe-
14CとTyr-
14Cの比を調べた.また2)区のヒナに, Phe-
14Cを注射したときの総排泄物中の放射能の分布と,その担体を検索した.それらの結果は,次のようにまとめられる.
(1) 飼料2), 3), 4)は自由摂取させ, 1)は3)と同量摂取させたが, 1)区以外の区におけるヒナの体重は減少した.
(2) 24時間(5)区のみ4時間)にわたる呼気CO
2への
14Cの移行量は, 1)区ではPhe-
14Cを注射したときに注射量の10%, Tyr-
14CおよびIle-
14C注射では,ともに15%であった. Tyr-
14Cを注射した場合の移行量は2)区で15%, 3)区では12%であったが, Ile-
14Cを3), 4)区に注射した場合は, 12%および14%と1)区の場合に比較して,わずかに減少した. Phe-
14Cを2), 3)区に注射した場合,呼気CO
2への
14Cの移行量は,ともに0.1%以下であった. 5)区ではTyr-
14CおよびIle-
14C注射の場合, 1)区に比較して移行量は増加したが, Phe-
14Cの場合は1/2に減少した.
(3) 4日間にわたる総排泄物への
14Cの移行量は, 1)区でPhe-
14Cを注射した場合8%, Ile-
14Cで10%, Tyr-
14Cで11%であった.他の区では,どの標識アミノ酸の場合とも, 1)区に比較して増加した.
(4) 1)区にPhe-
14CおよびTyr-
14Cを注射したときの4日後における
14Cの体内保留量は,それぞれ85%と79%で, 2)区ではそれぞれ92%と77%であった.
(5) 1), 2)区のヒナにPhe-
14Cを注射したとぎの屠体中のTyr-
14C/Phe-
14C×100は,それぞれ35%および0.2%で, Tyr-
14Cを注射したときのPhe-
14C/Tyr-
14C×100は,両飼料区とも0.01%であった.
(6) 2)区にPhe-
14Cを注射したときの第1日目における総排泄物中の放射能の84%は, Phe画分から回収された.
以上の結果から,ヒナではPhe欠乏飼料給与時にもTyrからPheへの転換はなく,ヒナはPheからTyrへの移行を少なくして, Phe欠乏飼料に対処しているものと考えられる.
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