日本農芸化学会誌
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48 巻, 1 号
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  • 井口 辰興, 沢崎 賢二, 林 晃史
    1974 年 48 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 1974年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    (1)蚊取線香中のフラン環をもつピレスロイドは,溶液中で基剤,特にタブ粉末成分の影響により分解現参象を生ずるので,これらの薬剤を定量するには安定剤を用いる必要がある.
    (2) 反応関連物質は,基質中に存在するフェオフィチンであり,クロロフィルにおいてもピレスロイドの分解促進効果を認めた.反応機構に関しては,活性物中のポルフィン環の影響が考えられるが明らかでない.
    (3) 蚊取線香中のピレスロイドに対するフェオフィチンの影響はほとんど認められず,その分解要因は空気中の酸素によると考えられた.
  • 河野 幸男, 渡辺 研, 岡本 奨
    1974 年 48 巻 1 号 p. 7-14
    発行日: 1974年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    羽毛および羊毛ケラチン溶液より皮膜の生成について検討し,次の結果を得た.
    (1) 含メルカプトェタノール・アルコール溶液を用い羽毛より約75%,羊毛より約30%の抽出率で抽出ケラチソを得た.
    (2) 羽毛ケラチン溶液より,pH 4.0~10.0で強靱な皮膜を生成した.羊毛ケラチン溶液より皮膜生成は困難で,かつ得られた皮膜は,羽毛に比しはるかに脆弱であった.
    (3)羽毛ケラチン溶液より得られた皮膜の表面,裏面および断面の微細構造を走査型電子顕微鏡で観察した結果,表面および裏面に著しい相違が認められた.また断面図より膜形成において,層状形成とケラチンフィブリルの規則的な配向が観察された.
    (4) 尿素1M添加により,羽毛ケラチン溶液より成膜が著しく阻害され,得られた膜は著しく脆弱であった.
    (5) SH基封鎖試薬は破断応力を著しく低下し,伸び率を増加した.またS-S結合選元試薬は破断応力を著しく増加し,伸び率もやや増加した.
    (6) 羽毛および羊毛,それらの抽出ケラチン粉末および皮膜のアミノ酸組成を調べたところ,羽毛の場合各過程の変化は小さいが,羊毛では皮膜においてかなり大きな変化があった.
    (7) 赤外線吸収スペクトルで羽毛および羊毛の抽出ケラチン粉末および皮膜のアミド I,IIの吸収極大を調べたところ,羽毛,羊毛とも溶液においてα構造,皮膜においてβ構造の存在が示唆された.
    (8) X線回折では羽毛,羊毛とも抽出ケラチン粉末では2θ=20~23°に輻広い極大を,皮膜では2θ=20°に鋭い極大を示した.
    以上の結果より,成膜に際してはシスチン残基が膜質に強く影響し,また成膜の難易はタンパク質のアミノ酸組成に基づく結晶領域の生成の難易に左右されるもののように思われた.また成膜におけるケラチン分子の結晶構造の形成には,β構造の寄与が推定されるとともにα構造からβ構造へのコンフォメーションの変化が認められた.
  • 花田 香一, 広瀬 明, 二宮 英治
    1974 年 48 巻 1 号 p. 15-20
    発行日: 1974年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    デキストラナーぜ生産菌の検索を行ない,振盪培養により,4日後に330単位/mlのデキストラナーゼを生産する1菌株Aspergillus ustus237を分離した.当該菌株を結合様式の異なる種々のデキストラン含有培地で培養した結果,著者らが分離したLeuconostoc mesenteroidesD 12の生産するデキストランを用いた場合にのみ,上記の値が得られた.しかし,特に結合様式との関連性は認められなかった.複式発酵(デキストラン発酵液に不足成分を添加して,デキストラナーゼ生産培地を調整する)を行なった場合,デキストラナーゼの生産性は低下するが,これは主として,デキストラン発酵後に残るフラクトースの阻害作用によると判断した.
  • 花田 香一, 広瀬 明, 二宮 英二
    1974 年 48 巻 1 号 p. 21-26
    発行日: 1974年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    Aspergillus ustus237が生産するデキストラナーゼを,塩析とDEAE-セルロースおよびBio-Gel P-150を用いるゲルフィルトレーション法で精製した.本精製酵素は電気泳動的に単一であり,分子量は35,000であった.作用至適pH 5.7,至適温度50°Cであり,pH安定性はpH 5.5~8.5の範囲にあり,温度安定性はpH 7において40°Cまでは安定だが,50°Cでは活性が半減した.しかしながら,Cr3+イオン,Al3+イオン等は温度安定性の増大に寄与することを確認した.Hg2+イオン,Ag+イオン,Cu2+イォンおよびKMnO4で著しく阻害されるが,チオール試薬(ρ-CMBおよびヨウ度酢酸),キレート剤(EDTA)および還元剤(L-アスコルビン酸)では,ほとんど阻害されなかった.
  • 高瀬 巌, 中村 秀子
    1974 年 48 巻 1 号 p. 27-34
    発行日: 1974年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    エチルチオメトンを湛水条件下で施用した場合の土壌中での薬剤の酸化や,還元反応による消長について検討した,その結果,
    (1) 湛水状態の水田土壌中では,エチルチオメトンは短時間のうちに側鎖-C-S-C-のSが酸化されてチルチオメトン・スルホキシドになるが,さらに酸化されたスルホン体にはあまりならない.そして施用7~10日経つと,いったん生成したスルホキシドが還光され,親化合物エチルチオメトンとなり,時間の経過とともにその生成量は増加した.
    一方,P=Sが酸化されたoxygen analog P=0体は,施薬量の約5%以下の生成に過ぎなかった.
    (2) 水田土壌での還元反応は,火山灰または沖積性鉱質土壌のいずれでも見出されたが,湛水水田状態に保持した場合に限られた.
    この酸化と還元反応は,湛水下の土壌の酸化還元状態によって起きると思われる.
    (3) 湛水下の水田土壌に酸化代謝物エチルチオメトン・スルホキシドを施用したとき,還元生成物エチルチオメトンが明らかに検出され,時間とともに増加したが,エチルチオメトン・スルホンを施用したときは還元生成物は見出せなかった.
    (4) グルコースを添加した場合,無添加に比べて加水分解されやすいが,酸化と還元反応が起きた.一方,滅菌土壌では非滅菌に比較して,エチルチナメトンの分解が抑えられたが,しかし湛水状態では滅菌土壌でもスルホキシドが還元されてサルファイドの親化合物を生成し,増加することから,酸化反応には畑地,水田状態ともに土壌微生物がなんらかの形で関与しているが,還元反応と微生物との関係ははっきりしなかった.
    (5) エチルチオメトンは,畑地および湛水水田状態いずれも急速に酸化されるが,殺虫力を有するエチルチオメトンを含む5種類の酸化代謝物の合計値の半減期は湛水下の水田土壌で約50日であり,畑地状態では30~40日であった.
    なお,本報告の一部は昭和48年度日本農芸化学会(東京)で発表した.
    終りにのぞみ,本実験に助力をくださった日本特殊農薬製造株式会社,農薬研究所残留研究室,中村禎子さんに厚く感謝します.
  • 小湊 潔, 西村 昇二
    1974 年 48 巻 1 号 p. 35-38
    発行日: 1974年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    In general, monosulfoxides of di-alkyl disulfides have characteristic odor and some antibacterial activity, for instance, allicin extracted from garlic Allium sativum has strong odor and antibacterial activity but less stability.
    Di-n-propyl disulfide, di-n-propyl trisulfide, and di-n-propyl tetrasulfide were synthesized, oxidized to monosulfoxides by perbenzoic acid, and their chemical structures speculated by UV, IR spectra and moleculer refraction. They showed some antibacterial activity and more stability than allicin.
  • 長沢 徹, 梅本 和泰, 恒屋 知之, 志賀 実
    1974 年 48 巻 1 号 p. 39-42
    発行日: 1974年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    東海地方に分布する野生種,春山産ハッカ(Mentha gentilis L.)の精油から,新物質d-1,2-エポキシメントールを単離および同定し,その絶対構造を決定した.
    本ハッカの時期的な精油成分組成の変動から,生体内におけるおもなモノテルペン生合成経路を考えることにより,本品種は化学分類学の面から,新しい系に属するものであることを推定した.
  • 片山 真之, 加藤 稔
    1974 年 48 巻 1 号 p. 43-48
    発行日: 1974年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    細胞内顆粒の膜構造を構成するステロールの種類(型態)が,顆粒特有の組成をもっているかどうかという観点から,4型態ステロール(遊離型,腸肪酸エステル型,グルコシド型,アシルグルコシド型)の細胞内分布について検討を加えた.登熟途上の大豆種子・磨砕物を分画遠心法,ショ糖密度勾配遠心法などを組み合わせた系でいくつかの顆粒画分に分画し,脂質を抽出した.薄層クロマトグラフィーを2種の溶媒系で順次展開することにより.色素類・グリセリド等からステタールの脂肪酸エステルや遊離型ステロールがかなり良く分離された.薄層クロマトグラムの測定によって,各顆粒画分中の4型.態ステロールの存在比を概算した.その結果,各種顆粒画分間では4型態ステールの存在比に著しい差異は認められなかったのに顆粒画分と非顆粒画分(105,000×g上澄と脂肪層)との間には,著しい差異が認められた.すなわち,いずれの顆粒画分でも遊離型ステロールが高い比率で存在しているのに対し,非顆粒画分ではステロールの脂肪酸エステルが高い比率で含まれていた.なお各画分でグルコシドの存在比は小さかった.
  • 梁 逸, 中村 隆, 米沢 大造
    1974 年 48 巻 1 号 p. 49-56
    発行日: 1974年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    (1) 脱脂乳に各種の濃度にリン酸塩を添加して,30°でカゼインミセルに対する影響をクエン酸塩,グリセロリン酸塩と比較して調べた.
    (2) ペレット重量,濁度,および粘度の測定の結果,リン酸塩の添加により,ミセルが膨潤を起こすことが観察された.この膨潤は,添加リン酸塩濃度0.06M付近から急に著しくなる.
    (3) 添加リン酸塩のミセルに対する結合をしらべた結果,0.06M付近から結合が認められるようになり,このリン酸塩濃度がミセルの構造に大きい変化が起こる臨界濃度に相当することが認められた.
    (4) 沈降による観察の結果,リン酸塩濃度0.05M付近からミセル間結合が起こり始めることが観察された.粘度測定の結果も,このことを裏書きしている.
    (5) クエン酸塩,グリセロリン酸塩の添加では,ミセルの膨潤は起こるけれどもミセル間結合の生成は認められず,ミセルからのタンパク質の溶出が著しかった.
    (6)リン酸塩の添加により脱脂乳はゲル化を起こすが,ゲル化の起こり始めるリン酸塩濃度は0.07~0.1Mであった.このゲル化の臨界濃度は5×10-4Mのクエン酸塩の添加で低下し,10-2M以上の添加で上昇した.グリセロリン酸塩および食塩の添加でも,臨界濃度は低下した.塩化カルシウムの添加も,著しくゲル化を促進した.
    (7) 以上の観察に基づき,添加リン酸塩によるミセル間結合の生成機溝について考察し,カルシウムリン酸複合体によるカゼイン分子間の架橋が,リン酸イオンにより可逆的な切断をうけ,ミセル構造の変動による内部構造の露出に伴って,ミセル間結合を形成するという仮説を提案した.
  • 重川 弘宜, 山下 恭平
    1974 年 48 巻 1 号 p. 57-62
    発行日: 1974年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    Preparation of 2-phenoxymethylchromone (10 a, b), chromanol (11 a, b) and chromanone (12 a, b) and the attempt to convert to rotenoids were described.
    Condensation of ethyl phenoxyacetate (7 a, b) and acetophenone (8) afforded 2-phenoxymethylchromone (10 a, b).
    Bromination of the corresponding chromanone (5 a) gave a mixture of mono-bromides (12 a, b) and a dibromide (12 c). Reaction of 12 c with KNH2 afforded bromochromone (13).
    Treatment of chromanol (11 a) with PPA or H2SO4 and chromene (14) with HBr-AcOH gave the same bicyclo-3, 9-dioxa-(4, 3, 1)-decane derivative (17 a).
    Reaction of chromone alcohol (19) with PPA gave coumaranone derivative (20).
    Phenol oxidation reaction of dihydroxyphenoxymethylchromanone (5 b) afforded hydroxymethylchromanone (23 a).
  • 下条 節子, 荒木 和美, 中山 清
    1974 年 48 巻 1 号 p. 63-68
    発行日: 1974年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    B. flavum No. 2247, B. ammoniagenesKY-3454,Microbacteriumsp.KY-3823,C. murisepticumKY-3505,C.glutamicumKY-9003から誘導した2 FA抵抗性変異株が,アデニンおよび/またはヒポキサンチンを培地中に分泌蓄積することをみいだした.これらの変異株の1株C. giutamicumKY-10478を使用して,アデニン生産に対する培養条件の影響を検討したところ,炭素源として,廃糖蜜11.25%(糖濃度換算),グルコース3.75%を混合し,窒素源として硫安を3~6%添加した培地が好適であった.また最高アデニソ蓄積量は,廃糖蜜10%(糖濃度換算)培地において2.0mg/mlであった.
  • 三鴨 正朋
    1974 年 48 巻 1 号 p. 69-71
    発行日: 1974年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    Free sugars in Lentinus edodes, which are assumed, together with amino acids, to be important constituents for its taste, have been investigated.
    Extracts with 70% ethanol were fractionated for three parts, neutral, acid and amino sugars by ion-exchange resins. D-Arabitol has been isolated and identified from the neutral parts for the first time as well as already-reported D-mannitol and α, α-trehalose.
  • 前川 英一
    1974 年 48 巻 1 号 p. 73-75
    発行日: 1974年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    Water, DMSO (dimethyl sulfoxide) and alkali solution were used as the solvents of polysaccharides from a preparative meal of bamboo shoot. From the polysaccharides extracted with the individual solvents, starch and the concomitant protein were removed by enzymic hydrolysis with α-amylase and protease, respectively. The yields and properties of the resulting water-soluble polysaccharides were compared with each other. As a result, DMSO was found to give water-soluble polysaccharides in higher yield comparable to extraction with water. Therefore, DMSO seems to be useful as the solvent of water-soluble polysaccharides in plant cell wall.
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