エチルチオメトンを湛水条件下で施用した場合の土壌中での薬剤の酸化や,還元反応による消長について検討した,その結果,
(1) 湛水状態の水田土壌中では,エチルチオメトンは短時間のうちに側鎖-C-S-C-のSが酸化されてチルチオメトン・スルホキシドになるが,さらに酸化されたスルホン体にはあまりならない.そして施用7~10日経つと,いったん生成したスルホキシドが還光され,親化合物エチルチオメトンとなり,時間の経過とともにその生成量は増加した.
一方,P=Sが酸化されたoxygen analog P=0体は,施薬量の約5%以下の生成に過ぎなかった.
(2) 水田土壌での還元反応は,火山灰または沖積性鉱質土壌のいずれでも見出されたが,湛水水田状態に保持した場合に限られた.
この酸化と還元反応は,湛水下の土壌の酸化還元状態によって起きると思われる.
(3) 湛水下の水田土壌に酸化代謝物エチルチオメトン・スルホキシドを施用したとき,還元生成物エチルチオメトンが明らかに検出され,時間とともに増加したが,エチルチオメトン・スルホンを施用したときは還元生成物は見出せなかった.
(4) グルコースを添加した場合,無添加に比べて加水分解されやすいが,酸化と還元反応が起きた.一方,滅菌土壌では非滅菌に比較して,エチルチナメトンの分解が抑えられたが,しかし湛水状態では滅菌土壌でもスルホキシドが還元されてサルファイドの親化合物を生成し,増加することから,酸化反応には畑地,水田状態ともに土壌微生物がなんらかの形で関与しているが,還元反応と微生物との関係ははっきりしなかった.
(5) エチルチオメトンは,畑地および湛水水田状態いずれも急速に酸化されるが,殺虫力を有するエチルチオメトンを含む5種類の酸化代謝物の合計値の半減期は湛水下の水田土壌で約50日であり,畑地状態では30~40日であった.
なお,本報告の一部は昭和48年度日本農芸化学会(東京)で発表した.
終りにのぞみ,本実験に助力をくださった日本特殊農薬製造株式会社,農薬研究所残留研究室,中村禎子さんに厚く感謝します.
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