日本農芸化学会誌
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48 巻, 11 号
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  • 茂田井 宏, 井上 進
    1974 年 48 巻 11 号 p. 579-584
    発行日: 1974年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    味噌の水溶性の色をSephadex G-15, DEAE-セルロースおよび酸素存在下で高分子化することを利用して分画を行ない,醤油の色との比較検討を行なった.
    (1) 味噌の色は,DEAE-セルロースにより8つの色素成分に分画され,色素成分の分布および各成分のΔAは醤油のそれらとほぼ一致した.
    (2) グリシンーキシロース系メラノイジンの色素成分を標準物質としてSephadex G-25,G-50によるゲル濾過法で推定した分子量はP1=700,P2=1200,P3=1400,P4=1800,P5=2500,P6=2700,P7=4000,P8=4700であった.
    (3) 酸化条件下で,各色素成分がDEAE-セルロ-ス上の溶出位置を変化させる性質を利用して,酸化条件下で新たに生じた色素成分の分画を行なった.分画された色素成分は,高分子化するに従ってΔAが少なくなり,1%1cmE450450値が大きくなった.またP2~P8セこは,ダクトンは認められなかった.
    (4) 分画精製された色素成分のKdとlog1%1cmE450の間に直線関係が認められ,さらに分子量の対数と1%1cmE450の対数の問にも直線関係が認められた.従って,味噌の色もモデル系メラノイジン同様,E=kMαの式に従うことを明らかにした.その関係式は,E=4.57×10-4×M1.32と計算された.算出されたk,α値は,醤油のそれらとよく一致した.一方α値より味噌の色において,主要褐変物質はdi-またはtripeptide起因のものであろうと推定した.
    (6) 本実験において,米味噌の色と醤油の色の間には分子量と色の強さの関係式,化学的諸性質にほとんど差異は認められなかった.
  • 三上 正幸, 三浦 弘之
    1974 年 48 巻 11 号 p. 585-590
    発行日: 1974年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    γ-カゼイン画分(UAM)にαSS-,k--および全カゼインを混合し,Ca2+2+の存在するときとしないときの相互作用について,白濁性および白濁部分と上澄部分のカゼイン成分を検討した.
    (1) Ca2+の存在しないとき,UAMに他のカゼインを混合すると,その白濁はおさえられ,抑制力はK-カゼインが最も強く,ついで全,β-およびααs-カゼインの順で下がった.
    上記の白濁物質はおもにS-,TS-およびγ・B-力ゼインであり,このほかにαs-,β-およびk-力ゼインもともに含まれていた.上澄中におけるUAM中ではγ・A-カゼインが多く,またこのほかにαs-,β-およびk-カゼインも多く存在した.
    (2) Ca2+の存在するとぎ,UAMにαs-およびβ-カゼインを混合すると,いずれの場合も沈殿を生じ,濁度を測定することはできなかった.k-カゼインを混合したときは、Ca2+の存在しない場合よりも濁度はわずかに減少した.
    全カゼインを混合したときは,αs-およびβ-カゼインが存在するため白濁を生じ,k-力ぜインの存在で沈殿を生じなかった.混合比が小さなときは,全カゼインのため白濁度は大きく,比率が1.0付近で濁度は下がり,さらに比率が大きくなるとUAMが増加するため白濁度は上昇した.
    UAMは全カゼインと混合し,比率を大きくしてもほとんどは白濁部分に存在し,上澄中の量は増加しなかった.
  • 岩原 章二郎, 金丸 康人
    1974 年 48 巻 11 号 p. 591-598
    発行日: 1974年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    ビオチン活性物質の蓄積に対するアデニン,Fe2+およびMn2+の作用について検討し,以下に示すような結果を得た.
    (1) アデニンの存在下において,酵母エキスの灰化物がビオチンの蓄積に対して顕著な効果を示すことが明らかとなった.
    (2) 各種の金属塩の効果について検討し,アデニンおよびFe2+の共存下において,Mn2+が特異的にビオチン活性物質の蓄積に対して有効であった.
    (3) 培地に添加したアデニンは,培養の途中にアデノシンおよびヒポキサンチンへ変化し,最終的に全部ヒポキサンチンへ分解されることが明らかとなった.
    (4) 添加したアデニンが存在している培養の初期には,ピメリン酸からのデスチオビオチンの蓄積は起こるが,ビオチンの蓄積は認められなかった.培養後期においては,添加したアデニンはほぼ完全にヒポキサンチンへ分解され,ビオチンの蓄積が急速に起こる.
    (5) 培地中に蓄積されるビオチン活性物質の主成分はデスチオビオチンであり,微量のビオチンおよび7-ケト-8-アミノペラルゴン酸が認められた.
  • 駒井 功一郎, 佐藤 庄太郎
    1974 年 48 巻 11 号 p. 599-604
    発行日: 1974年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    ジャガイモ塊茎に殺線虫梨DBCPを噴霧処理することにより,塊茎組織内にファイトアレキシン様物質rishitinが生成されることを認めた.rishitinは,DBCP処理で発現した褐変組織およびその隣接組織で認められた.rishitinは,抵抗性品種(R1-遺伝子)および普通栽培品種(r-遺伝子)の両方で認められた.蓄積量は,DBCP処理後25°Cで放置した場合,5~7日で最高に達し,その後も急激な消失はなかった.塊茎の周皮を除去後DBCP処理した場合は,rishitinはこん跡程度しか認められず,DBCP処理によるrishitin誘導には周皮の存在が重要な因子であると考えるが,その蓄積量は非親和性疫病菌(レース0)接種の場合に比較して少ないと思われる.
  • 鈴木 幸雄, 内田 絅, 藤森 茂樹
    1974 年 48 巻 11 号 p. 605-611
    発行日: 1974年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    Two new derivatives of adenosine were isolated in crystalline form from the incubation mixture containing o-nitrophenyl-β-D-galactoside, adenosine and crystalline β-galactosidase from Escherichia coli, and identified as adenosine 2' (3')-β-galactoside and adenosine 5'-β-galactoside from various data, viz., elemental analyses, ultraviolet and NMR absorption spectra, products by hydrolysis with acid and with β-galactosidase, and oxidation with sodium metaperiodate.
  • 茂木 恵太郎, 逆井 利夫
    1974 年 48 巻 11 号 p. 613-617
    発行日: 1974年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    (1) 醤油諸味から分離した醤油酵母を血清学的手法により分別することを試みた.
    (2) Saccharomyces rouxii因子血清を調製し,この因子血清によりs.rouxii群と熟成型Torutopsis属菌群を分別することができた.
    (3) 熟成型Tovulopsis属菌群は,血清学的に因子血清により2つのグループに分別できた.T. nodaensis, T. halonitratophilaはAタイプとし,T. versatilis, T. halophila, T. mannitofaciensはBタイプとした.
    (4) 醤油諸味中の雑酵母として知られるCandida polymorpha, Torudopsis famataについても,特異的に反応する因子血清が作製でき,それぞれの因子血清により他の有用酵母と分別できた.
    (5) 以上の血清学的手法により醤油諸味中の酵母の分布状態を調べた.発酵期の諸味は,S. rouxiiが主体であるが,Aタイプの熟成型Torulopsisが共存する諸味があった.熟成期の諸味は,Torulopsisが大部分を占めるが,AタイプとBタイプの割合は諸味の種類により差が認められた.
  • 浜野 光年, 青山 康雄
    1974 年 48 巻 11 号 p. 619-625
    発行日: 1974年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    醤油の一加工法として,加熱噴霧乾燥した際の粉末醤油の成分の変化,吸湿成分の検討および広幅NMRによる水の挙動を検討した.
    (1) 105~118°Cの加熱乾燥により,lysine, histidine, glysine, methio-nineなどのアミノ酸の減少が多く,aspartic acid, proline, leucineは変化が少なく,非アミノ態窒素(T.N-F.N)は増加していた.糖ではXyl,Araの減少が多く,オリゴ糖は減少していなかった.
    (2) 総末醤油中の吸湿成分はグルコース,乳酸など多いが,重回帰分析に,よると,窒素成分および色沢の影響が顕著であった.イオン交換樹脂による分画では,陽イオン部の区分の平衡吸湿量が最も大であった.
    (3) 広幅NMRにより粉末醤油中の水分子が観測でき,各相対湿度下で吸湿させた粉末醤油のNMRの水分子の半値幅と水分含量との関係から,水分量1.5~3.50の範囲で収着の変位点がみられ,水の存在状態に変化がみられた.
  • 杉浦 正昭, 新保 外志夫
    1974 年 48 巻 11 号 p. 627-632
    発行日: 1974年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    家蚕繭より得たフィブロイン膜について,糖類(ブドウ糖,ショ糖,ラフィノース)および塩化カリウムの透過速度を広い温度範囲(5~90°C)にわたって測定し,得られた結果から,糖類の透過性と膜の構造との関係を検討した.
    糖類と塩化カリウムの透過速度の測定より得られたlog kmd/A~1/Tの曲線から,25°Cと65°C付近に,フィブロイン膜の2つの転移点が見出される.これらは,比容や粘弾性の測定から得られる転移温度と一致する.フィブロイン膜の溶質が透過する細孔は,セロハン膜のそれより狭く,そのためフィブロイン膜では分子が大きくなると急激にその透過性を減少する.ブドウ糖の透過におけるpH依存の測定では,フィブロイン膜の等電点付近において,その透過性は最小となる.これは,膜の膨潤性によるものである.
  • 藤田 安二, 藤田 真一, 吉川 久
    1974 年 48 巻 11 号 p. 633-636
    発行日: 1974年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    1.奄美大島以南に産するシバニッケイの精油成分をトカラ列島の横当島以北に産するマルバニッケイおよび台湾南端の恒春半島の海岸のみに産するハマグスの精油.成分と比して,その化学系統学的意義を追究した.
    2. 本シバニッケイは,精油の収率生試料に対して0.08%,主成分としてl-linaloo 45%を含み,.このほかα-pinene 4.2%, camphor 4.6%,セスキテルペンとしてα-,β-santalene 11%を含むが,フェノールエーテル類はsafrole 0.2%,methyleugenol 0.7%, eugenol 2.3%の少量である.
    3. このものは,その精油成分および地理的分布からすれば,台湾残存のハマグスからマルバニッケイとともに各別に分化して,沖縄列島に分布するもので,一方マルバニッケイはトカラ列島から屋久島,種子島,九州の性多岬,野母崎,男女列島および宗像大農にのみ産する.すなわちマルバニッケイの方が,より北部まで分布するクスノキ属の残存植物である(5).
    著者らは主として,わが国の南島各地に産するこれらシバニッケイ,マルバニッケイ,その他のきわめて興味深いクスノキ属植物の精油について,すでに採集採油をおわり(6),引き続きその精油成分の追究を進めつっある.
  • 石井 俊夫, 山西 貞, 望月 悌二朗, 戸井 文一
    1974 年 48 巻 11 号 p. 637-641
    発行日: 1974年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    北海道産のスイートコーンから製造したペーストおよびパウダーを用いて,減圧蒸留法および減圧炭酸ガス蒸留法により香気濃縮物を調製し,GC-MS分析した.
    その結果,エタノール,ブタノール,ペンタノール,ヘキサノール,cis-3-ヘキセノール,リモネン,2,5-ジメチルピラジン(または2,6-ジメチルピラジンを含む),2,3-ジメチルピラジン,α-ヨノン,β-ヨノン等を同定した.ペーストとパウダーでは,香りのパターンに相違が見られた.
    トップノートの主成分としては,ジメチルスルフィドを確認した.
    パウダーの品質劣化は,低沸点物質の減少とヘキサナール,トランス,トランス-2,4-ヘプタジェナール,トランス,トランス-3,5-オクタジエン-2-オン,シス-2,トランス-4-およびトランス,トランス-2,4-デカジエナール等の増加によるものであることが認められた.
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