日本農芸化学会誌
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48 巻, 4 号
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  • 越後 多嘉志, 竹中 哲夫
    1974 年 48 巻 4 号 p. 225-230
    発行日: 1974年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    蜂蜜生成過程における蜜のpH低下の要因を明らかにした.
    (1) 生成過程において酸度が増加するのは,おもにグルコン酸やクレブスサイクルに関係する有機酸が生成するためである.
    (2) 花蜜自体,あるいは生成時に混入する花粉粒によってはpH低下や酸度増加は起こらず,蜜蜂の分泌酵素によって起こる.
    (3) 分泌酵素中にはグルコース・オキシダーゼを初め,酸を生成する数多くの酵素が混在し,これらの酵素が花蜜中のフルクトースやスクロスよりも優先的にグルコースに作用して,グルコン酸やクレブスサイクル中の各種有機酸を生成すると考えられる.
    (4) フルクトース,グルコース,スクロースの25%混合溶液と分泌酵素液との10時間以内の反応で,蜂蜜とほぼ類似の有機酸組成を有する糖液が得られた.
    (5)グルコン酸は蜂蜜中有機酸の約70%を占めるが,この酸がpH低下,酸度増加の主要因である.
    蜂蜜生成過程では蜜蜂のグルコース・オキシダーゼが花蜜のグルコースと反応して,グルコノラクトンを生成し,この大部分がグルコン酸に変化して平衡状態になっていると考えられた.なおグルコン酸とグルコノラクトンの平衡豊比は,ほぼ12:1であった.
  • 新原 立子, 西田 好伸, 寺谷 公仁子, 米沢 大造
    1974 年 48 巻 4 号 p. 231-238
    発行日: 1974年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    (1) 各種糖のグルテンに対する作用を比較するために糖を小麦粉に添加して50°C,RH 82%に貯蔵した後,湿グルテンをとり出してその状態を調べた結果,ペントースは作用力が強く,その強さはリボース>キシロ-ス>アラビノース>ラムノ-スの順であったが,ヘキソースはほとんど作用が認められなかった.
    (2) 糖をグルテンに添加して40°C,BH 83%に貯蔵し,グルテンの溶解性に対する影響を調べた結果でも,アラビノースはかなりの影響を示すのに対し,グルコースの影響はほとんど認められなかった,なおこの実験において,糖の添加による吸湿促進のためにグルテンの溶解性が低下する現象が観察された.
    (3) グルテンのアミノ酸分析を行なった結果では,グルコース添加のものもアラビノース添加のものもともに,貯蔵後にリジンがかなり減少していることが認められた.
    (4) 手延素麺の還元糖含量は製麺時に増加し,厄中にも幾分増加を示したが,厄後には減少していた.
    (5) 素麺水抽出液中の糖組成はグルコース,キシロース,アラビノース,ガラクトース,マンノースと未知の物質少量からなり,グルコースが80%を占めている.(フルクトースは定量しなかった)単糖は水可溶性糖の約1/10を占め,その80~90%がグルコースであり,マンノースとガラクトースがこれにつぐ.ペントースは微量で素麺100g中にアラビノースが3mg前後,キシロースが1mg前後であった.グルコースは厄中に増加し,厄後に減少した.マンノース,ガラクトースは貯蔵中に増加した.ペントースは厄中に幾分増加しているようであるが,その変化量はわずかであった.
    (6) 小麦粉および厄後の素麺粉末に水を加えてincubateし,小麦粉中に含まれる多糖を分解する酵素作用の有無を検索した.incubationにより主としてグルコース(あるいはマルトース)による還元力の増加が見られ,ガラクトース,マンノースの増加も観察された,ペントースは小麦粉では増加を認めなかったが,素麺粉末ではアラビノースが幾分増加した.ただし,量的には微量である.
    (7) 厄中の素麺水抽出液中に含まれる糖を,素麺に含まれるのと同じ割合でグルテンに添加貯蔵してグルテンの溶解性に与える影響を調べたが,その影響は小さかった.またその影響は,全抽出糖のうちアラビノースだけを添加したものと同程度であった.
  • 伊藤 敞敏, 中西 武雄
    1974 年 48 巻 4 号 p. 239-244
    発行日: 1974年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    牛乳を均質化すると脂肪球膜物質として,本来の膜成分の他に牛乳蛋白質の含まれてくることが認められた.
    カゼイン溶液に脂肪を乳化させた場合,皮膜を形成する成分としては,TS-やγ-カゼインがおもなものであることが認められたが,均質化の回数が増すとαs-やβ-カゼインも含まれてきた.レンネット処理をしたカゼインを用いると,パラk-カゼインが含まれてきた.
    ホエーに脂肪を乳化させた場合には,膜成分は主としてβ-ラクトグロブリンと免疫グロブリンによって構成されていた.これら皮膜物質の組成は,脂肪を乳化させる場合の方法や程度,脂肪の添加量などによって異なることが認められた.
    カゼイン溶液の乳化力を比較した結果,Caを添加したり,レンネット処理をすると乳化力が低下し,またpHが低くなると乳化力が著しく減少することが認められた.酸ホエーとレンネットホエーでは,脂肪添加量の少ないとき酸ホエーの方が乳化力が低かった.
  • 金沢 宏和, 米沢 大造
    1974 年 48 巻 4 号 p. 245-253
    発行日: 1974年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    (1) Sephadex G-150のゲル濾過により,還元再酸化グルテニンからは鎖内SS結合をもった単一鎖ポリペプチド区分としてF II, FI IIの2区分が,還元再酸化したグリアジンからは同じくF IIIの1区分が分離された.
    (2) 還元再酸化グルテニンのF II, F IIIおよび還元再酸化グリアジンのF IIIのSS結合量は,それぞれ蛋白質105g当たり5.3モル,6.9モルおよび8,6モルであった.
    (3) これらモノマー区分の2%溶液(pHによっては沈殿を含む)にpH 4.4からpH 6.3の各種のpHにおいて,システインを蛋白質105g当たり0.83モルの割合で加えてSH-SS交換反応を起こさせると,グルテニンの2区分はpH 4.6で約30%が重合し,pH上昇とともに重合性を急速に増し,ほとんど100%ポリマーとなる傾向を示した.しかしグルテニンとは異なり,その増加の割合はpH上昇とともにおとろえpH 6.3でも重合は50%で,上昇は頭打ちになる傾向を示した.
    (4) これに対し,還元再酸化の処理をしない元のグリアジンは,システインで処理してもpH 4.6~pH 7.3の範囲で重合を起こさなかった.
    (5) 一方還元再酸化グリアジンからダイマー区分として得られたF IIはF IIよりも重合しやすく,pH 4.6では重合を起こさなかったがpH5.0では40%が重合した.
    (6) 塩添加によりポリペプチドの会合を促進した条件下で交換反応を起こさせたとき,還元再酸化グルテニンF IIIでは重合性に影響はなかったが,還元再酸化グリアジンF IIIは重合性を増した.
    (7) 上述の重合反応の観察結果に基づき,小麦穀粒中におけ1るグルテニンおよびグリアジンの生成機構について考察した.
  • 荒川 力, 松本 幸雄, 米沢 大造
    1974 年 48 巻 4 号 p. 255-259
    発行日: 1974年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    (1) 0.01M酢酸に溶解したグルテン溶液をpH 5.3,食塩濃度lMとしたときに析出するグルテンの凝集にもとづく濁りの変化を,自記分光光度計を用いて記録した.
    (2) この測定結果からグルテン粒子の凝集速度を求めるために,分散粒子の凝集速度を示すSmolukowskiの式-dN/dt=KN2(N:粒子数,t:時間,K:凝集の速度定数)を,分散系の濁度Tと関係づけることにより,式dT/dt=r/t2を導いた,ここにrはKに比例する定数である.
    (3) この式を用いて濁度の経時変化からγの値を求め,この値が,理論の示すとおりタンパク質濃度Cの4乗に比例することを確かめた.
    (4) 品質を異にする小麦粉より分離した4種のグルテンについて求めたk(=r/C4)の値は,それぞれ6.22×104(薄力粉),8.76×104(中力粉),12.7×104(中力粉),14.2×104(強力粉)であって,薄力粉,中力粉,強力粉の順に凝集速度が大きくなる結果を得た.
  • 小林 武一, 稲森 悠平, 田辺 幾之助, 大林 晃
    1974 年 48 巻 4 号 p. 261-267
    発行日: 1974年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    (1) 自然界より分離した単細胞緑藻類を中心に他養培養における有機酸生成力の強い藻株を検索しChlorella vulgaris Al-40を得た.
    (2) 生成有機酸は同定の結果,ギ酸,コハク酸,乳酸,ピルビン酸であった.
    (3) Chlorella vulgarisAl-40は炭素源としてグルコース,窒素源としてポリペプトンを含む基本培地でよく有機酸を生成し,
    a) 静置条件下では主として乳酸を生成し,コハク酸,ピルビン酸を副生した.
    b) 好気条件下では主としてピルビン酸を生成し,コバク酸,乳酸がわずかであった.
    c) 揮発性酸としては,いずれの条件下でもギ酸のみを生成した.
    (4) 自養培養においては,ほとんど酸を生成しなかった.
    (5) Scenedesmus basilensisIAM C-66においても有機酸の生成が認められ,生成量がChlorella vulgaris-Al-40に比べて少ない以外はすべて同じ結果を示した.
    (6) Chlamydomonas sp.の有機酸生成は微弱であった.
  • 小林 武一, 田辺 幾之助, 大林 晃
    1974 年 48 巻 4 号 p. 269-273
    発行日: 1974年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    (1) 静置条件下での他養培養における7藻株(Chlo-rella4株,Scenedesmus1株,Chlamydomonas2株)の生成する乳酸の旋光性を検討し,7藻株の生成する乳酸がすべてD(-)-乳酸であることを認めた.
    (2) Chdorella vulgarisA1-40の乳酸脱水素酵素はD(-)-乳酸に特異的に作用するD(-)-乳酸脱水素酵素で,至適pHが8.0,ピルビン酸,NADH2に対するKmはそれぞれ6×10-4M,1.7×10-4Mであった.
  • 中村 秀子, 渡部 賢二, 水谷 純也
    1974 年 48 巻 4 号 p. 275-277
    発行日: 1974年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    As taste substances in green asparagus and taranoki-no-me, (leaf buds of Aralia elata Seem.), free sugars were examined. The sugars were extracted by conventional methods, tentatively identified by paper and thin-layer chromatographies and quantitatively analyzed by gas-liquid chromatograpy of O-trifluoroacetyl derivatives on Silicone DC QF-1 and SE-52.
    Green asparagus contained monosaccharides (glucose and fructose) as the major components, amounting to 92% of the total free sugars, and small quantities of sucrose and raffinose. Taranoki-no-me contained 63% of monosaccharides (glucose and fructose) and 24% of sucrose and small quantity of raffinose.
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