日本農芸化学会誌
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49 巻, 3 号
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  • 桑畑 美沙子, 中浜 信子
    1975 年 49 巻 3 号 p. 129-134
    発行日: 1975年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    1. 大豆分離たん白ゲルのレオロジー的性質を得るため,実験を行なった.比較のため,卵白ゲル,寒天ゲルについても実験を行ない検討した.
    2. 圧縮型平行板粘弾性計によりクリープ曲線を得,粘弾性の解析を行なった. 20%大豆たん白ゲル,卵白ゲル, 1.5%寒天ゲルはいずれもフックの弾性体,フォークトの粘弾性体,ニュートンの粘性体からなる4要素模型で示された.弾性率(EH, EV)は105~106dyn/cm2,粘性率(ηV, ηN)は107~109 poise,遅廷時間は25~30秒であった.大豆たん白ゲルのEHは寒天ゲルと同程度であったが, ηNは寒天ゲルより大であり, EV, ηVは寒天ゲルの方が大であった.
    3. レオロメーターを用い,記録曲線とテクスチャー特性値を得, 3種のゲルの破断特性を比較した.大豆たん白ゲルの硬さは,寒天ゲルの約3倍であった.また大豆たん白ゲルは凝集性が大であり,卵白ゲル,寒天ゲルは小であった.付着性は卵白ゲルにのみ認められた.
    4. 大豆たん白ゲルは温度上昇に従い,フック体の弾性率,ニートン体の粘性率が減少したが,フォークト体の粘弾性率には明らかな傾向は認められなかった.
    5. 大豆たん白ゲルのマスター・カーブおよびシフトファクターが得られた.すなわち,大豆たん白ゲルは12.4°C~59.8°Cの温度範囲で温度・時間の換算則が成立つことが認められた.シフトファクターと絶対温度の関係から,みかけの活性化エネルギー29kcal/moleが求められた.また遅延スペクトルが求められ,遅延時間は1~105秒の間に分布することが認められた.
  • 菅野 信男, 秋山 裕一
    1975 年 49 巻 3 号 p. 135-139
    発行日: 1975年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    セルロース凝集性清酒酵母と非凝集性清酒酵母との細胞表層におけるアミノ基の量的差異を酸アルカリ滴定, SLSおよびDNS chlorideの結合量から検討した.
    1) pH 3~11における滴定数は,全般に凝集株の方が多かった.特に, pH 7~11の間に顕著な差が認められた.
    2) 酵母菌体に対するSLSの結合は, 2分間の処理で一定になり,結合量は凝集株の方が非凝集株より多かった.
    3) 一定量の酵母菌体に対し,処理時間,処理濃度を変えてDNS chlorideの結合量を測定したが,いずれの場合も結合量は,凝集株の方が約2倍多かった.
    4) 凝集における pH (1~12)の影響を調べた結果, pH 1~10までの範囲で強い凝集が起こることを認めた. 5) 以上の結果から,酵母細胞表層のアミノ基はセルロース凝集株の方に非凝集株より多く存在することが推定された.
  • 菅野 信男, 鈴木 修六, 秋山 裕一
    1975 年 49 巻 3 号 p. 141-148
    発行日: 1975年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    清酒酵母のセルロース凝集株と非凝集株の細胞壁を調製し,構成成分の差異を検討した.
    1) グルコース,マンノース,蛋白質,リン酸およびグルコサミンのいずれの成分も若い細胞壁の場合には,菌株間に含量の差は認められなかった.
    2) 古い細胞壁の場合には協会8号を除いてセルロース凝集株の方に,蛋白質とリン酸の含量が多く,逆にマンノースの含量が少なかった.これらの成分含量の差は細胞壁の表層部分の差であることが,細胞壁をエチレンジアミンにより分画した3つの画分のうち,表層のA画分における分析値から認められた.
    3) 細胞壁蛋白質の構成アミノ酸の組成比は,若い細胞壁では,菌株間に顕著な差がないが,培養が古くなると凝集株の細胞壁はリジン,ヒスチジン,アルギニンおよび水解されてアンモニアを与えるアミノ酸の組成比が高くなり,逆にスレオニン,セリンは低くなることが認められた.
    4) 以上から,凝集性清酒酵母とセルロースとの凝集の機構について推論した.
  • 小村 毅, 長山 英男, 和田 せつ
    1975 年 49 巻 3 号 p. 149-155
    発行日: 1975年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    先にヒジキから単離した強力な新促進物質フィトールについて,本報ではそのactivator作用の対象となる酵素活性が何であるかについて検討した.
    (1) フィトールの作用を受けるのは,トリブチリン,オリーブ油等の不溶性基質を分解する,いわゆる典型的なリパーゼ活性ではなく,メチルブチレート,トリアセチン等の水溶性基質を分解するエステラーゼ活性であることが明らかとなった.
    (2) DFPにより,リパーゼ活性は全く阻害されないのに対し,エステラーゼ活性とそのフィトールによる促進は明瞭に阻害されたことから,エステラーゼ活性がフィトールの作用の対象であることがいっそう支持された.
    (3) pH安定性では,フィトール添加のエステラーゼ活性は,広いpHに安定なコントロールの活性とは異なり, pH 5.0付近に鋭い曲線を示し,この点むしろリパーゼ活性と似た形を示した.
    (4) 熱安定性では,エステラーゼ活性はリパーゼ活性よりやや不安定であり,そのフィトールによる促進は50°Cから減少し, 60°Cでほぼ完全に失われた.
    (5) NaCl添加により,エステラーゼのコントロール活性自体は増加し,かつそのフィトールで促進される部分のみが逆に打ち消され,この点リパーゼ活性と異なる挙動を示した.
  • 小村 毅, 長山 英男, 和田 せつ
    1975 年 49 巻 3 号 p. 157-162
    発行日: 1975年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    すでに前報で,粗膵リパーゼ標品中のエステラーゼ活性が,フィトールの促進作用を受けることが判明したので,本報ではこの対象となる酵素の性格について明らかにしようとした.
    (1) フィトールは,酵素標品中の胆汁酸塩を要求するコレステロールエステラーゼ活性,サリシルバレレートを特異的に分解する“プロエステラーゼ”活性(活性化型),およびプロテオエステラーゼ活性のいずれに対しても全く促進作用を示さなかった.
    (2) このフィトール促進性酵素は,不溶性モノグリセリドの“ミセル溶液”を分解する酵素ではなく,“真の溶液”状態の短鎖脂肪にのみ作用し,しかもその際,胆汁酸塩よりはフィトールのようなテルペンをactivatorとして要求するきわめて特殊のカルボキシルエステラーゼであると推定した.
    (3) しかし,この酵素は,肝エステラーゼのような脂肪族以外に芳香族エステルをも分解するいわゆる典型的カルボキシルエステラーゼではないものと推定した.
    (4) このフィトールによる活性化は,界面活性剤である胆汁酸塩,レシチン, Triton X-100, SDS,および尿素の添加により,顕著に阻害された.これに対し,リパーゼ活性は比較的抵抗性を示した.
  • 山田 哲也, 久松 真, 滝 基次
    1975 年 49 巻 3 号 p. 163-167
    発行日: 1975年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    アミロペクチンの平均鎖長測定を行なうために, α-1, 4-グルカン(短鎖アミロース)の重合度を, GLCを用いて測定する方法を検討した.その結果,次のような測定方法を定めた.
    (1) 短鎖アミロースを氷中で1N NaOHに溶解後,希釈.
    (2) NaBH4で還元後,アンバーライトIR-120 (H+), MeOHで処理して, Na+とH3BO3を除去.
    (3) 濃縮乾固後, 0.2N HClを加え, 120°C, 75分間加水分解.
    (4) アンバーライトIR-400(炭酸型)を加え, Cl-を除去し,アセチル化.
    (5) Silicone OV-17 (lm)カラムでGLC.
    (6) GlcとSorの面積比を求め,補正曲線より重合度の算定.
    (7) 本法による,モチトウモロコシデンプンのアミロペクチンの平均鎖長は, 24であった.
  • 桜井 稔三, 久保 須実子, 尾上 えい子
    1975 年 49 巻 3 号 p. 169-177
    発行日: 1975年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    1. Lactobacillus casei S-1株を宿主とするファージは, S-1株から分離されたファージ抵抗株3株に対する感受性の差,および血清学的性質から, J1系ファージタイプI, II, III, IVおよびSG-Tファージの5つに分類された.
    2. ヤクルト製造工場4工場の排水系に分布するファージの消長を, 2力年間にわたり調べた結果,タイプINのファージが持続的に分布し,タイプIIIおよび一部工場でSG-Tファージの増加がみられた.
    3. 排水系から分離されたファージの性質の検討から,ファージ叢を規定している性質は,熱,薬剤, pHなど物理的因子に対する抵抗牲,および適温での増殖の良否であると考えられた.
  • 加藤 博通, 石川 久隆, 樫尾 一, 土田 広信, 藤巻 正生
    1975 年 49 巻 3 号 p. 179-183
    発行日: 1975年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    グルコースまたはキシロースとグリシンまたはn-ブチルアミンから調製した非透析性メラノイジンを過マンガン酸カリウムで酸化,および水素化ホウ素ナトリウムで還元して得られた生成物の抗酸化性を調べた.
    (1) 糖-グリシン系メラノイジンをアルカリ性室温下,過剰にならない量のKMnO4で酸化して得られるブタノール可溶物は,酸化前のメラノイジンの抗酸化性を維持していた.
    (2) (1)の酸化分解により得られる抗酸化性を有する有効画分は低分子であり,着色度はきわめて低い.
    (3) 糖-n-ブチルアミン系メラノイジンをNaBH4で還元して得られる生成物の着色度は還元前の40%程度に低下するが,抗酸化性も着色度とほぼ平行して低下した.
  • 樋浦 光男
    1975 年 49 巻 3 号 p. 185-187
    発行日: 1975年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    A new polysaccharide was isolated from corn smut galls in their early stages of development. Total acid hydrolysis proved this substance to be a glucan. On partial acid hydrolysis, followed by column chromatography, glucose, gentiobiose and laminaribiose were isolated and identified. Gentiotriose and laminaritriose were also isolated and inferred. Infrared spectra as well as low specific rotation of the polysaccharide indicated that the glycosidic linkages might be of the β type. When oxidized by periodate, the polysaccharide consumed 1.91 moles of oxidant and yielded 0.94 mole of formic acid per mole anhydroglucose, suggesting that about 90% of glucose units may be joined by β-(1→6) linkages, and the remainder by β-(1→3) linkages. The glucan was tentatively termed as “zeagallan.”
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