(1)セファデックスG-150のゲル濾過により,水を溶媒として,カゼインミセル,乳清蛋白質および遊離電解質と分子の小さい窒素化合物の3つのピークに分離することができたが,カゼインミセルのピークの部分は純粋に単離されたことが,ポリアクリルアミドゲルのディスク電気泳動法により確認された.
(2)ゲル濾過の際に,ミセルのカルボキシル基に結合するカリウム,くえん酸,ナトウムおよびマグネシウムの各イオンは,それぞれ100%, 100%, 91%および50%だけ遊離した.エステルりんは,全く遊離しなかった.
(3)カルシウムとエステルりんの各イオンは,ミセルから遊離しにくく,コロイド性りん酸カルシウムとして,約37%が遊離した.すなわち,ミセル中のこの塩の部分は,約63%のイオン結合層と約37%の吸着層の2層の形で存在するものと考えられた.
(4) G-150ミセルとCPFミセル(コロイド性りん酸カルシウム除去ミセル)を牛乳で透析して,ミセルへのミネラルイオンの可逆性(再構成)について比較検討した結果,ともに,コロイド性りん酸カルシウムは膜を通して侵入しないので,カルシウムと無機りんの可逆性は低かったが,カリウム,ナトリウム,マグネシウムおよびくえん酸の可逆性は顕著で,約74~153%を示した.カルシウムは,両ミセルともに約28~29%可逆したが,無機りんはG-150ミセルで約74%, CPFミセルで約16%可逆し, CPFミセルへの可逆量が著しく低かった.これは, CPFミセルのカルボキシル基からコロイド性りん酸カルシウムが除去されているので,このカルボキシル基が他の基群とイオン結合あるいは水素結合したことによるものと推察された.
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