赤クローバー茎葉から抽出した粗酵素液のフラボノール配糖体に対するグリコシダーゼ活性と,粗酵素液と直射日光がイソケルシトリンの酸化褐変,およびイソケルシトリンとカゼインの相互反応に及ぼす影響についてモデル系で検討し,赤クローバー葉の天日乾燥時における,イソケルシトリンでの蛋白質の褐変機構を推定した.
(1) 粗酵素液は赤クローバー葉フラボノールで最も多いイソケルシトリンを水解し,糖とケルセチンを遊離した.少量のヒペリンに対するグリコシダーゼ活性は低いものと思われた.
(2) ケルセチンは粗酵素液と直射日光により,容易に酸化分解された.イソケルシトリンの直射日光による酸化分解は小さく,また粗酵素液による酸化分解は除々に進行した.
(3) イソケルシトリンに粗酵素液を添加し,晴天下に,引き続いて室内に放置したところ,強度な褐変が認められた.また,粗酵素液とイソケルシトリン,カゼインの3者を晴天下で反応させて得た反応カゼインには,対照に比して,イソケルシトリンに由来するプロトカテキュ酸が多く,粗酵素液は相互反応を助長するものと思われた.
(4) 以上のことから,粗酵素液によるイソケルシトリンとカゼインの相互反応は,グリコシダーゼによるケルセチンの遊離が発端となり,遊離したケルセチン,またはその酵素的,非酵素的酸化分解物や,それらの酸化褐変物質とカゼインとの反応によって起きるものと思われた.
(5) 相互反応は赤クローバー葉汁液のpH値とほぼ等しいpH 6.0でも認められたので,グリコシダーゼの作用が発端となるイソケルシトリンと蛋白質の相互反応は,赤クローバー葉の天日乾燥過程でも起きるものと思われた.
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