Asp. japonicas ATCC 20236の麸培養物中にcaffeoyl tartaric acid (CfT),
p-coumaroyl tartaric acid (CmT), chlorogenic acidを加水分解するhydroxycinnamic acid ester hydrolase (HCEH)が認められたので,本酵素の諸性質およびワイン醸造への利用を検討した.
(1) chlorogenic acidを基質として, HCEHの活性測定法を定めた.
(2)
Asp. japonicus菌のHCEH生産は100% (v/w)散水した麸培地で30°C, 8日間培養することが適当であった.
(3) 酵素反応のための最適pHは6~7,最適温度は55°Cであった.また70°C, 10分の熱処理により,HCEHは完全に失活した.
(4) 12株の糸状菌より調製した酵素溶液について, HCEHおよびtannase活性を測定したところ, HCEHは
Asp. japonicus, Asp. nigerに, tannaseは
Asp. nigerに強い傾向が認められた.また両酵素間に活性の相関は認められなかった.
(5) CfT, CmTは各種酵母の発酵において安定であったが遊離の
p-coumaric acidは
Sacch. cerevisiae酵母で効率良く, caffeic acidはわずかに資化された.
(6) HCEH活性は反応液のアルコール濃度12% (v/v)で43%阻害されたが,亜硫酸による影響は認められなかった.
(7) HCEHのアセトン粉末をブドウ果汁に添加して,ワインを試醸したところ, CfT, CmTが消失し,褐変が抑えられ,苦味・収レン味の少ないワインが得られることが明らかとなった.
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