ラットの結腸の形態および内部環境に対する盲陽切除,食物センイ摂取の影響について調べた.食物センイとして小麦ふすまを用いた.ラットを1)精製飼料(fiber free diet, FF飼料)-sham-operated群, 2) FF飼料-盲腸切除群, 3) FF+10%小麦ふすま(WB飼料)-sham-operated群, 4) WB飼料-盲腸切除群の4群に分け, 5週間飼育した.その結果,次のような知見を得た.
(1) ラットの成長速度に対して,飼料および盲腸切除の影響は全く認められなかった.
(2) たんぱく質のみかけの消化率は盲腸切除,WB飼料摂取により低下した.
(3) 糞の排泄量,糞塊数はともにFF飼料に比べWB飼料摂取により多くなり,また, sham-operatedラットに比べ盲腸切除ラットのほうで多くなった.
(4) 飲水量に対して,盲腸切除および飼料の影響は認められなかった.
(5) FF飼料-盲腸切除ラットの飼料の消化管通過時間(TT)は, FF飼料-sham-operatedラットのそれの約2/3に短縮された.しかし, WB飼料-盲腸切除ラットのTTとWB飼料-sham-operatedラットのそれとの間には差は認められなかった.
(6) ADFの排泄量はsham-operatedラットと盲腸切除ラットの間で差は認められなかったが, NDFの排泄量は前者に比べ後者のほうで有意に増加した.
(7) 飼料中の小麦ふすまは盲腸切除ラットよりもsham-operatedラットのほうでより腸内細菌の作用を受けたことが,糞中の小麦ふすまの走査型電子顕微鏡像より認められた.
(8) 盲腸の組織重量は飼料の影響を全く受けなかったが,内容物のpHはWB飼料を摂取したラットのほうがFF飼料を摂取したラットのそれよりも低かった.
(9) 結腸の重量と長さ,および結腸の粘膜のたんぱく質量とDNA量に対して,飼料および盲腸切除の影響は認められなかった.内容物のpHはWB飼料を摂取したラットのほうが低かったが,盲腸切除の影響は認められなかった.
(10) 結腸の粘膜を走査型電子顕微鏡で観察したが,盲腸切除および飼料による影響は認められなかった.
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