AsAによるJ1ファージ不活化に対するアミノ酸の促進作用の機序について研究し,次のことがわかった.
(1) この不活化促進作用に関与するアミノ酸の官能基は, α位のアミノ基とカルボキシル基である.
(2) AsAとグリシンによるファージ不活化は,分子状酸素が存在しAsAが自動酸化される条件下で起こる.
(3) この不活化に関与するのは, AsAの自動酸化に伴って生成する酸素ラジカルである.すなわち,不活化反応にフリーラジカル反応機構が関与している.
(4) 酸素ラジカルのうち,ファージに直接作用するのは,主としてOHである.
(5) OHの作用を受けたファージでは, DNAの1本鎖切断が起こっていると考えられる.
(6) AsAの自動酸化がグリシンによって促進される.
(7) 以上のことから, AsAによるファージ不活化に対するアミノ酸の促進作用は,分子状酸素によるAsAの自動酸化がアミノ酸によって促進されることによって,酸素ラジカルであるOHの生成量が増大し,そのためにAsAによるファージ不活化(DNA鎖切断)が促進されることであると結論できる.
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