甜菜の貯蔵中に微生物により生成する多糖類,すなわちデキストランおよびレバンの濾過作業に対する影響を検討した.
両者とも分子量は10
6~10
9ダルトンと類似した高分子構造を有していたが,炭酸飽充に対する影響には顕著な差異があり,デキストランが粗汁中に200ppm以上,第2炭酸飽充で100ppm以上存在すると濾過障害を発生するのに対し,レバンは全く影響を示さなかった.高分子のデキストラン(MW 5×10
5以上)には,第2炭酸飽充で生成する炭酸カルシウムの結晶に吸着し,凝集体の生成を阻止する作用があり,このため見掛けの粒径が小さくなり,濾布の目詰りを起こして濾過障害を発生すると結論された.このデキストランの作用は,低分子化すると減少し,標準デキストランで検討した結果,分子量10
4ダルトンでは実用上無視できる結果を得た.一方,シュガーエンドの濾過障害に対しても高分子デキストランが主因と考えられ,この場合も分子量10
4ダルトン程度に分解すると櫨過障害を解消できる結果が得られた.レバンはシュガーエンドの濾過障害には無視できない影響を有していた.
次に,デキストランの低分子化の目的で, endo型デキストラナーゼの応用を検討した.デキストラナーゼによるデキストランの分解反応はきわめて容易に進行し,粗汁中のデキストラン当り1/100の添加量で60°C,5分の反応により10
4ダルトンまで分解した.
引続き現場試験を行った結果,粗汁中のデキストラン当り1/50~1/100のデキストラナーゼの添加により,第2炭酸飽充の濾過障害は完全に解消する結果が得られ,その実用性を確認することができた.
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