(1) 蒸〓前の粉砕白米の浸漬米水分は約35~38%が適当であると思われた.
(2) 粉砕白米を蒸〓する際,米層が薄い場合にはきわめて短時間で糊化されるのに対し,米層が厚くなると,蒸気通過抵抗が著しく大きくなり,糊化され難くなった.このことから,米層を薄くして蒸気との接触を促すような粉砕白米用の蒸〓装置を開発すれば,蒸〓時間をきわめて短縮化できる可能性が示唆された.
(3) 粒状蒸米と短時間蒸〓により得られた粉砕状蒸米の脂質を比較した結果,粗脂肪含量は粉砕状蒸米のほうが低く,また,脂肪酸の飽和度も全く差がなかったことから,粉砕白米の短時間蒸〓は脂質の揮散に関しても,何ら問題がないものと考えられた.
(4) 走差型電子顕微鏡により粒状蒸米ならびに粉砕状蒸米の糊化過程を観察した結果,粉砕状蒸米のほうが澱粉粒の吸水ならびに膨潤が速く進行していることが明らかとなった.
(5) 粒状蒸米および粉砕状蒸米のBAP法による糊化度と消化酵素による消化性を比較した結果,粒状蒸米の場合には高い相関が得られた.一方,粉砕状蒸米の場合は糊化度が低くても高い消化性を示した.
(6) 粉砕状蒸米の糊化度が約65%以上であれば,実際の醪中での蒸米の溶解に関してもほとんど差がなく,粒状仕込に比べ原料利用率が向上した.
(7) 仕込に持ち込まれる脂質を粒状仕込と粉砕状仕込で比較した結果,麹に関しては粉砕状麹のほうが粗脂肪は若干多かったが,掛米と併せて比較するとほとんど差がないものと思われた.
(8) 醗酵工程中の醪濾液中の遊離脂質,ならびに醪固形部の粗脂肪,結合脂質共ほとんど差がなかったことから,脂質という観点から見ても粒状仕込と粉砕状仕込では全く差がないことが明らかとなった.また, 16人のパネリストによる官能検査の結果,酒質にも全く差が認められなかった.このことより,粉砕状仕込による清酒醸造では,原料利用率の向上が期待できるとともに,従来の清酒に比べて,何ら遜色のない酒質のものを醸造しうる可能性が示唆された.
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