味噌や納豆製造工場から排出される大豆煮汁は,有用成分が多いにもかかわらず廃棄されている.その有効利用の一つとして,大豆煮汁を乳酸醗酵用の培地成分として使用した,一方,乳酸醗酵では生産物である乳酸による醗酵阻害が生ずる.その醗酵阻害を軽減するために通電透析醗酵法を応用し,以下の結果を得た.
(1) 大豆煮汁だけでは乳酸生産量が少なかったため,炭素源としてサトウキビの廃糖蜜を添加して乳酸醗酵を行った.その結果,廃糖蜜を使用した場合の最適培地(MYP培地)と比較して,乳酸生産量は変わらなかったが,醗酵速度が速くなり,大豆煮汁は酵母エキス,ポリペプトンおよび塩化アンモニウムの代替物質として有効利用できることが判明した.
(2) MS培地を用いて通電透析醗酵による乳酸の生産を行ったが,通電透析効率の低下が認められ,通電透析醗酵の効果は顕著には認められなかった.大豆煮汁に含まれる粘質物がアニオン交換膜に著量付着しており,このために,通電透析効果が低下したと推察した.したがって,大豆煮汁を遠心分離し,その上澄液を使用した.通電透析醗酵の醗酵液の乳酸は約1%と低く保たれており,通電透析醗酵の乳酸生産量は, 36.49であり, pHを制御しなかった醗酵のそれの約3.5倍,また,炭酸カルシウムでpHを制御した醗酵のそれの約1.2倍の増収が得られた.
通電透析醗酵では,大豆煮汁を遠心分離することにより,通電透析効率の低下は認められず,醗酵液の乳酸濃度を低く保ったために,乳酸による醗酵阻害が軽減され,その結果,乳酸の増収が得られたものと考察した.
(3) MS培地を用いて,乳酸醗酵を行った結果, BODは減少し,その減少率は約65%であった.
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