Aspergillus niger β-キシロシダーゼの糖転移反応を利用したアルキル-β-キシロシドの酵素的合成について,応用性を高めるために,キシロビオース以外にキシロトリオースやキシロースなどを含むキシランの酵素加水分解物を基質としたときのアルキル-β-キシロシドの合成を試みた.
アルコール共存溶液 (25%, v/v) 中でキシロトリオース (1%) を単独基質として
A. niger β-キシロシダーゼを作用させたところ,キシロビオースを単独基質としたときと同様,最終生成物として,アルキル-β-キシロシドおよびキシロースが得られた.アルキル-β-キシロシド生成に及ぼす共存キシロースの影響を1-ヘキシル-β-キシロシドの場合を例に調べたところ,キシロビオース濃度50mM (1.41%) のとき,キシロース濃度が5%以上となると1-ヘキシル-β-キシロシドの生成がかなりおさえられるが,2.5%程度の濃度であれば,生成量に影響はなかった.キシラン標品に放線菌キシラナーゼを作用させた際に得られるキシロオリゴ糖液を基質として使用したときも最終的にはアルキル-β-キシロシドとキシロースが得られた.なお,キシロオリゴ糖1g (キシロビオース42.3%,キシロトリオース37.2%,キシロテトラオース20.4%) 当りのアルキル-β-キシロシドの収量(再結晶標品)は,1-ペンチル-β-キシロシド215mg, 1-ヘキシル157mg, 1-ヘプチル60mg, 1-オクチル20mg, ベンジル118mgであった.
抄録全体を表示