煎茶の水抽出液と,これに耐熱性芽胞菌芽胞を接種したものを室温から80℃までの加温のもとに加圧処理(0~700MPa)し,殺菌効果と茶の主要成分の変化について調べた.その結果,
(1) 茶の温水(70°C)抽出液中には,一般生菌およびカビ,酵母は残存しないが,水抽出液中には一般細菌が若干生存した.これは,室温で400MPa,30分間の加圧処理で完全に死滅した.
(2) 耐圧性芽胞を接種した茶抽出液中に温度(60~80°C)と加圧(0~700MPa)処理の併用をほどこした結果,耐圧性芽胞を完全に死滅させるには,70°C, 700MPaの処理が必要であった.このとき,リン酸緩衝液中よりも茶抽出液中の芽胞のほうが殺菌されやすかった.
(3) 温度と加圧併用処理を行うとき,加温が80°CでもビタミンCとテアニンが多少減少する以外に他の成分の変化は認められなかった.
(4) 殺菌には,温度上昇よりも加圧の影響が著しいが,成分劣化には加圧よりも温度上昇の影響が大きかった.
(5) 70°C, 700MPaで加圧処理した茶抽出液は,宮能的性質も保存性も優れていた.
以上の結果より,茶抽出液の殺菌にはレトルト殺菌処理法よりも70~80°Cの加圧処理による殺菌法のほうが適していることが明らかとなった.
最後に,本論文の作成にあたり,御指導をいただいた京都大学食糧科学研究所林力丸博士に深く感謝いたします.
なお,本研究の概要は,平成3年度日本農芸化学会(1991年4月1日)において発表した.また,本研究は食品産業超高圧利用研究組合の研究課題として行った.
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