‘今村温州’ (
Citrus unshiu Marc.)に‘中野3号ポンカン’(
Citrus reticulata Blanco)を交雑した‘早香’,‘カラ’ (
Citrus unshiu Marc. ×
Citrus nobilis Lour.)に‘中野3号ポンカン’を交配した‘サザンレッド’,さらに‘清見’に‘中野3号ポンカン’を交配した‘不知火’(‘デコポン’, ‘キョポン’などともいう)の果皮精油成分について比較検討した.
(1)交雑品種の炭化水素画分と含酸素化合物画分の比率は明らかに‘中野3号ポンカン’に近く,含酸素化合物に富む精油組成を有していることが明らかとなった.
(2)炭化水素画分の精油成分を比較した場合, ‘早香’は,両親に比べ, γ-テルピネンの比率が低く,両親とのパターン類似率も低かった. ‘サザンレッド’は両親よりも若干
d-リモネンの比率が低く,その分γ-テルピネンが高かった. ‘サザンレッド’と両親のパターン類似率は高かった. ‘不知火’は‘清見’と同様にγ-テルピネンが少なく, ‘清見’とのパターン類似率も高かった.
(3) ‘早香’におけるアルコール類の比率は‘中野3号ポンカン’‘今村温州’より高く,アルデヒド類,エステル類の比率はほぼ‘中野3号ポンカン’と‘今村温州’の中間にあった. ‘サザンレッド’は両親に比べ,エステル類が多く,アルコール類,アルデヒド類が少なかった. ‘不知火’はほぼ‘中野3号ポンカン’と‘清見’の中間にあったが,その比率は全く異なっていた.
(4) ‘早香’と‘不知火’の含酸素化合物画分の精油成分組成は,花粉親の‘中野3号ポンカン’に近かったが, ‘サザンレッド’の精油成分組成は,両親とはかなり異なることがパターン類似率から明らかとなった.
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