食品添加物である界面活性剤(乳化剤)としてショ糖脂肪酸エステルを用い,ヒラタケに対して界面活性物質が子実体形成効果をもつことを初めて明らかにした.
(1) HLB値1,7,15のショ糖脂肪酸エステル(S170, S770, S1570)をMA(マルトエキス2%,寒天1.8%)培地に添加したシャーレ培地を用いてヒラタケを培養したところ, S170では原基の誘起が起こり, S770を添加した培地で,子実体が形成された.
(2)オガ粉・米ヌカ培地を用いた試験では, S770を添加することにより,ヒラタケ菌糸の培地内への伸長の阻害と子実体形成の促進が観察された.
(3) HLB値1,7,9,11,15のショ糖脂肪酸エステルは,ヒラタケの菌糸伸長を抑制することが明らかになった.その効果は, HLB値が大きくなるほど,また同じHLB値の場合は脂肪酸がオレイン酸よりパルミチン酸のとき,より強く現れた.
(4) HLB値の違いによってショ脂肪酸エステル間に子実体形成促進効果の違いが見られたことから,子実体誘起に有効な界面活性強度が存在することが示唆された.
本研究を実施するに際し,実験に協力いだたいた千田(旧姓雑賀)君子さん,試料を提供頂いた現徳島大学医学部(前食品総合研究所脂質研究室長)寺尾純二氏,ショ糖脂肪酸エステルのサンプルと情報を提供して下さった(株)三菱化学フーズ松田孝二氏に深謝します.
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