PAによる亜鉛吸収阻害作用を抑制するCWPSの作用機構を解明するため, CWPSの主成分であるCHTを用いてPAとCHTの錯形成特性,および,その錯形成とZnの挙動について検討した.
(1) PA溶液とCHT溶液の混合ではPAのリン酸基とCHTのアミノ基との反応によってPA-CHT錯体が形成された.その錯形成のpH域はpH 1.7~3.2で,化学量論比はPA:GlcN=1:6であることがわかった.この錯体は, CHTの添加量が化学量論比以上になると再溶解することがわかった.
(2) このpH領域でZnが共存する場合, PA-Zn, CHT-Zn,およびPA-CHT-Zn錯体の形成よりもPA-CHT錯形成が優先し,亜鉛は遊離の状態で存在した.
(3) pH>3.2ではPA-CHT錯体の再溶解が起こり, Zn/PA/CHT系では遊離ZnとCHTの複合体の生成が推定された.
(4) 以上の結果から, CHTのPAによる亜鉛吸収阻害を抑制する作用は,胃内のpH域でPA-CHT錯形成がPA-Znの安定な錯形成を阻害し,一時的にZnを遊離の状態にすることによって,遊離のZnの拡散による吸収やZn吸収の容易なCHT-Zn複合体の形成によるものと推定される.
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