フヂツボカヒガラムシ(Ceroccocus muratae Kuw.)の含窒物よりGuanin, Cystin, Lysin, Glutamic acid, Arginine, Alanine及Hydroxyvalineを分離せり.本含窒物は水に不溶性にしてTrypsinにて變化せずPepsinにて容易に分解せらるゝ一種の硬蛋白質と想像す.蝋質物よりは脂肪酸としてCerotic acid(C
26H
52O
2),未知液状樹脂酸(C
19H
36O
4,不鹸化物としてCerylalcohol及Isoceryl alc. (C
26H
54O)及び未知環状性炭化水素C
46H
92~C
45H
〓0を得たり.Ceryl alc.は著者既載のCeroplastes屬介殻虫の共通成分なるも,その他の成分は本昆虫に於て新しく分離せしものなり.
前報と綜合すればフヂツボカヒガラムシの介殻の主成分は無水硅酸,Lignin,硬蛋白質及蝋質物等が複雜なる混合をなして構成せらるゝものなることが判明せり.從て本昆虫は藥劑に對する抵抗性の可也強大なることが推察せらる.
稿を終るに當り御指導と御校閲を賜る恩師鈴木文助教授に衷心より感謝すると共に便宜と激勵を蒙りし工場長伊庭野薫氏,大阪出張所長高橋清氏並びに實驗の援助を得し丸山隆之輔君に深謝す.
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