農業経済研究
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83 巻, 3 号
大会特集号
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報告
  • 野田 公夫
    2011 年 83 巻 3 号 p. 133-145
    発行日: 2011/12/25
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    農業基本法立案の中心人物の一人である小倉武一は,かつて,次のような反省を述べた.「自分は西欧の理論にとらわれていて,日本農業の現実を見なかった.日本農業と日本農村の性格を研究し,それをふまえて立案すべきものであった」と.本報告の課題は,小倉の反省をふまえて,農業構造改革の日本的類型を考察することである.日本で農業構造改革が順調に進まなかった最大の理由は,農政が農村社会の力を軽視したことである.伝統的な日本村落では,いわば,農地は村落の領土であり,農家にとっては家産であった.このような伝統をもつ日本農村で構造改革を実施するためには,まずは農民の農地所有権を守ることを明らかにし,そのうえで農地の所有と利用の分離を工夫することが必要である.そして,村の地権者集団の合意を得たうえで,経営能力があり信頼できる人やグループに農業経営を任せるべきであろう.しかし,これらの方途は,地域ごとで工夫する余地が大きい.したがってその形態もさまざまであり,また長期を要するだろう.以上の点において,日本型農業構造改革はWTOが想定する構造改革のイメージとは大きく異なるであろう.これらのことを,日本農政は,国の内外にはっきりと言明すべきである.
  • 家計と農業の連携可能性を探る
    草苅 仁
    2011 年 83 巻 3 号 p. 146-160
    発行日: 2011/12/25
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    本報告では食料消費サイドのベースラインを提示する.課題は次の3点である.(1)日本の家計が経験してきた戦後の食生活の変化を考察して,その規定要因を明らかにする.(2)今後の国産農産物需要の見通しを明らかにする.(3)家計と農業の連携(家計による持続的な国産農産物の需要)の可能性を探る.結論は以下のとおりである.(1)戦後の食生活を主に規定した要因は栄養学的な要因ではなく,経済的要因である.(2)このままの状態では,家計の食料消費における国産農産物需要の割合は減少していく.(3)今後,家計が持続的に国産農産物を需要して,家計と農業が連携していくためには,国内農業の生産効率を向上させる必要がある.
  • 荘林 幹太郎
    2011 年 83 巻 3 号 p. 161-174
    発行日: 2011/12/25
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    さまざまな主体が多様な場におけるルールに基づき直接あるいは間接的にかかわりながら,食料,農業,農村に関する政策(以下「農政」)が立案・決定・実施されている.そのような構造(「農政システム」と定義する)がその目的を達成しようとする場合に,他の政策システムの影響を受ける.本論では,新基本法以降の農政システムと,国際貿易政策システム,財政システム,地方分権政策システムとの関係性について概念的に論ずることによって,現代農政システムの制約要因とその克服への将来展望を議論するものである.
  • 水稲・畜産・野菜の比較検討を通して
    福田 晋
    2011 年 83 巻 3 号 p. 175-188
    発行日: 2011/12/25
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    本論文では,わが国稲作,畜産,野菜部門の構造を経営規模階層の変動とともに産地移動という視点を取り上げて考察する.その際,国境措置,生産調整,農地用役市場,土地基盤整備とそれに伴う土地利用変化および農家の論理の影響について考察している.畜産,野菜部門は,国内外の市場競争とインフラ整備を踏まえた上で,立地移動を伴った産地形成を図りながら構造変動を経験してきた.この産地移動のもたらしたものは,経済合理的な適地適産を基礎とした北海道,九州への進展である.これに対して,水稲部門は国内に広く産地を維持し,一定の大規模化を進めながらも,「家の行事」としての稲作の位置づけが依然として存続した構造となっている.稲作の位置づけがどのように変化するかが,わが国農業構造再編の1つの鍵を握っている.
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