農業経済研究
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86 巻, 1 号
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論文
  • 玉 真之介
    2014 年 86 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 2014/06/25
    公開日: 2016/03/26
    ジャーナル フリー
    戦前期の日本においては,農家数の変動に際だった地域性があった.本稿の課題は,都道府県別データを用いて,戦前に見られた農家数変動の地域性を検出し,その要因について,イエ制度との関連で考察することである.結論は,以下の6点である.①大都市圏を除くと,東日本と南九州で農家数が増加し,西日本で減少するという地域性があった.②農家数の増減率は,小作農家の増減率と強い相関関係を持っており,農家数の変動は小作農の高い流動性によってもたらされていた.③耕地面積の増減も農家数の増減と相関関係があり,農家数変動と連動していたのは田の面積増加であった.④農村部人口の増減と農家数変動が相関関係にあり,人口の増減が農家数の増減を規定する関係にあった.⑤イエ=単独相続というのは誤認であり,イエは家族の生活保障のため,後継ぎ以外にも最小限の生前分与を行っていた.⑥東日本での農家数の増加は,イエの維持存続を優先しながらも,後継ぎ以外の家族の生活保障として小作地を生前分与した結果と推定される.
  • ─地域農業の担い手としての特例子会社の可能性─
    吉田 行郷, 香月 敏孝, 吉川 美由紀
    2014 年 86 巻 1 号 p. 12-26
    発行日: 2014/06/25
    公開日: 2016/03/26
    ジャーナル フリー
    農業の担い手が不足し,耕作放棄地が増加しつつある中で,農業分野に進出する特例子会社が増えており,今後も増加する可能性が高い.そして,農業に本格参入してきた新たなタイプの特定子会社は,経験の蓄積等により現在抱えている課題を克服できれば,すでに地域農業の担い手が出現している社会福祉法人等に比べて,多様な経営展開を可能にするマンパワーや経営力での強みもあり,今後,地域農業の多様な担い手の一翼を担い得る存在であることを明らかにした.さらに,既存の農村コミュニティを形成している農家や社会福祉法人等と有機的に結びつくことで,地域経済や農村コミュニティの維持・再生にも貢献する可能性があることを示した.
研究動向
  • 澤野 久美
    2014 年 86 巻 1 号 p. 27-37
    発行日: 2014/06/25
    公開日: 2016/03/26
    ジャーナル フリー
    本稿は,我が国の農村女性起業研究の動向をレビューによって明らかにし,今後の農村女性起業研究の方向を展望したものである.まず,農村女性起業が政策として位置付けられた1990年代以降の政策動向を確認し,農村女性の位置付けと現在の農村女性起業の実態を概観した.その上で,1)農村女性起業をめぐる社会関係や組織形成原理,2)農村女性起業の特徴や効果,3)社会的企業としての農村女性起業の可能性や役割,4)農村女性起業の継承問題をめぐる研究動向について議論した.今後は,個人経営の展開,地域農業と起業活動の関係,活動内容と性別役割の固定化の可能性,若年層女性の起業への参加や新規創業等についても研究の進展が見込まれる.
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