農業経済研究
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86 巻, 3 号
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論文
  • ─シミュレーションによるアプローチ─
    有本 寛, 中嶋 晋作, 富田 康治
    2014 年 86 巻 3 号 p. 193-206
    発行日: 2014/12/25
    公開日: 2016/03/26
    ジャーナル フリー
    本稿は,区画交換による農地の団地化がどの程度可能かを,シミュレーションによって検証する.まず,現在一部の農家で行われている個別・分権的な相対交換では,自発的な交換に必要な「欲求の二重一致」が少なすぎるため,団地化の進展が困難であることを示す.次に,Shapleyらのtop trading cycleアルゴリズムを援用し,複数の農家が区画を一斉交換する集団・集権的な方法を提案する.これは,「欲求の二重一致」の制約を緩和するため,個別・分権的な交換に比べて倍以上の集団化率を実現できた.また,より多くの農家が交換に参加するほど,集団化率も劇的に高まった.多くの農家の参加を募り,集団・集権的な配分を行うことが農地の団地化にあたって有効である.
ミニシンポジウム
報告
  • 中野 晴之
    2014 年 86 巻 3 号 p. 210-215
    発行日: 2014/12/25
    公開日: 2016/03/26
    ジャーナル フリー
    「阪神・淡路大震災」で私たちは多くのモノを奪われたが,私は,初日から出勤できたおかげで多くの貴重な経験をさせていただいた.当初,全国から届いた救援物資を少しでも早く届けようと避難所にカップ麺を転送すると,市の職員からすぐに食べられるものを求められ,おにぎりやパンに切り替えると,3日ほどして,寒いのに冷たい物ばかり食えるかと怒られたことを昨日のように覚えている.この時,やっぱり人間らしいなぁ,みんな一生懸命頑張っているのに…感謝の気持ちと余裕がないとあかんなぁとつくづく思った記憶がある.この経験があったからこそ,思いやりの大切さを痛感して,私自身が強くなれたような気がしている.
  • 関根 佳恵
    2014 年 86 巻 3 号 p. 216-224
    発行日: 2014/12/25
    公開日: 2016/03/26
    ジャーナル フリー
    東日本大震災の翌日に発生した長野県北部地震は,被災地に震度6強の揺れをもたらした.本稿では,最も被害が甚大だった栄村を事例として,第1に地震被害と復旧の状況,第2に復興計画の策定における住民参加の課題,第3に地域資源を活用した復興事業と地域内外のネットワーク形成の取り組みと課題について明らかにすることを課題とする.2011~13年に実施した現地調査および統計・資料調査によると,地震後の離農の背景には高齢化や農産物価格の低迷の影響もあることが浮かび上がってきた.小規模家族農業を中心とした「全員参加型」の復興計画を掲げる栄村は,震災を奇貨とする創造的復興とは一線を画すが,住民参加においては課題が残る.
  • 伊藤 房雄
    2014 年 86 巻 3 号 p. 225-230
    発行日: 2014/12/25
    公開日: 2016/03/26
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は,各種資料の整理とフィールド調査の結果をもとに,宮城県沿岸部の津波被災地における農業生産基盤の復旧状況と農地集積状況を確認するとともに,そこで展開されている土地利用型農業や施設園芸,農商工連携・6次産業化の特徴と今後の課題を整理することである.その結果,津波被災地の農業生産基盤の復旧は多少遅れが生じているものの停滞しているわけではないこと,それよりもむしろ良質な作土を確保できないなど大都市圏での建設需要の高まりから,復旧・復興に必要な資材や人夫を確保できないという問題が生じていること,また被災の程度によって異なるが,農地整備地区内では農業生産法人や集落営農組織に農地が集積して農業構造改革が加速していることが明らかになった.また土地利用型農業であれ,施設園芸であれ,津波被災地で展開されている大規模経営体には新たな生産技術を導入して生産効率を高めていこうとする特徴がみられるものの,それと同時に,地域住民の暮らしも含めて復興を推進しようとする地域マネジメントの視点もみられる.その反面,高齢兼業農家を構成員とする集落営農組織や農業経験のない従業員を多く抱える植物工場では,何よりもまず栽培技術の習得をはじめとする人材育成が喫緊の課題であること等々が明らかになった.
  • 門間 敏幸
    2014 年 86 巻 3 号 p. 231-239
    発行日: 2014/12/25
    公開日: 2016/03/26
    ジャーナル フリー
    本論では,東日本大震災に伴って発生した放射能汚染と風評被害の実態ならびに被害克服のための取り組みを総括し,今後の風評対策の望ましい展開方向について整理した.具体的には,望ましい放射能汚染と風評被害の対策として,1)関係性マーケティングによる信頼関係,相互扶助システムの構築,2)予防と発生した場合の対策構築を重視した放射能リスク管理システムの構築,3)リスクコミュニケーションによる風評防止,4)モラル・ハザードへの対応,の意義を整理した.
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