農業経済研究
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90 巻, 4 号
90巻4号
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論文
  • ミャンマーにおける企業レベルデータを用いた分析
    足立 徹
    2019 年 90 巻 4 号 p. 283-300
    発行日: 2019/03/25
    公開日: 2020/03/25
    ジャーナル フリー

    本研究は,開発途上国において農業関連企業が売上を広域化する際の影響要因について,ESCAP他の調査によるミャンマー国内の企業レベルデータを用いて,製造業企業と比較しながら分析を行ったものである.売上の広域化にあたり,生鮮品を扱う農業分野においては,特に生産・在庫・輸送管理の面で製造業分野よりも困難の度合が高いことから,これに対応するための高度な知識を有する人材の存在が重要と考えられる.分析の結果,売上の広域化に対し,農業分野では製造業分野よりも企業規模の指標としての従業員数が与える影響が小さい一方,高度な知識を有する人材としての大卒以上の従業員の割合が影響を与えること等が示された.

第1回連携委員会・国際委員会共催シンポジウム
  • 現場からの報告
    萩原 英樹
    2019 年 90 巻 4 号 p. 303-312
    発行日: 2019/03/25
    公開日: 2020/03/25
    ジャーナル フリー

    本稿では今後の通商交渉の展開と展望を明らかにすることを目的としている.ドーハ・ラウンド交渉は,途上国への特別かつ異なる待遇を与えることがマンデートであるとの認識の下,交渉が行われてきた.しかし,途上国といっても,経済発展を遂げた新興国を一律に途上国として取り扱うのかという大きな論点が生じている.また,経済連携協定(EPA)/自由貿易協定(FTA),米国の通商政策,食料安全保障のための公的備蓄の取扱などの問題が存在しており,当面,進展が困難である.WTOは,自由貿易の推進という点において,ルールが一本化できることにその存在意義があり,我が国としては政治的な関与も含めて積極的に関与する必要がある.

  • 千葉 典
    2019 年 90 巻 4 号 p. 313-320
    発行日: 2019/03/25
    公開日: 2020/03/25
    ジャーナル フリー

    GATTウルグアイラウンドで成立したWTO協定では,すべての分野に関する一括受諾が要求されたが,農業協定では開発途上国に対して保護・支持の削減を通常の3分の2の水準とする優遇策も用意されていた.しかし,1995~2000年の農産物価格低下のため,従来型の措置は「優遇策」として機能しなかった.このことが,新たな交渉を「ドーハ開発アジェンダ」とする推進力となった.今世紀の世界農産物貿易は,2000年代末の価格急騰後も穀物輸出が高水準で堅調に推移,食肉輸出も拡大する一方,一次産品市場は価格的に乱高下を示している.「開発アジェンダ」の実効性を確保するためには,一次産品輸出国や農産物輸入途上国に配慮した内容的整備が望まれる.

  • 福井 清一
    2019 年 90 巻 4 号 p. 321-331
    発行日: 2019/03/25
    公開日: 2020/03/25
    ジャーナル フリー

    米国第一主義を掲げるトランプ政権は,途上国にとって好都合な貿易・投資の自由化の流れに逆行する政策を打ち出している.本稿のテーマは,米国第一主義にもとづく一連の貿易政策のもとで,貿易と投資の自由化の行方を占うことである.そのため,まず,WTO交渉が難航し遅れが生じた要因について検討する.次に,WTOの交渉難航と逆比例して増加してきたEPA・FTAのような地域協定,なかでもWTOのような多角的貿易交渉の進展に影響が大きいと考えられるメガFTAのうち,TPPおよびRCEPの将来について考察する.TPPについては,今後,米国抜きでも参加国が増加するのか,米国が再び参加する可能性があるのかについて考える.参加を希望する16ヵ国が協議を開始したRCEPについては,既存の2ヵ国間の協定の内容を比較することにより交渉の進展を阻害するであろう要素を明らかにし,交渉合意の可能性について検討する.さらに,EUや日本が検討しているWTO改革が米国のWTO回帰と中国によるWTOの規律遵守を促し得るのかについても検討を加え,最後に,今後の通商協定の行方について,やや途上国よりの立場から見解を述べたい.

  • 生源寺 眞一
    2019 年 90 巻 4 号 p. 332-338
    発行日: 2019/03/25
    公開日: 2020/03/25
    ジャーナル フリー

    日本の農業や食料には後発先進国としての特徴がある.日本の農産物貿易も,海外の食料に大きく依存する点で,EUや新大陸の先進国とは異なっている.やや長期の視点からこれらの特徴を分析することは,モンスーンアジアの発展にとっても有益である.日本の政策には,自由貿易論による農産物輸入の拡大とは異なる視点が反映されている.食料の安全保障と農業の多面的機能への配慮である.食料安全保障については,途上国のフード・セキュリティとの違いに留意する必要がある.多面的機能については,EUやアジアの国々とも共有できる面がある.国際的な所得格差や農業の外部性を考慮するとき,FTAやEPAには懸念される面もある.

報告論文
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