自然環境復元研究
Online ISSN : 2759-2472
Print ISSN : 1347-5738
4 巻, 1 号
選択された号の論文の21件中1~21を表示しています
巻頭言
寄 稿
原著論文
  • 國井 秀伸, 今田 直人
    原稿種別: 原著論文
    2008 年4 巻1 号 p. 7-14
    発行日: 2008/05/30
    公開日: 2026/01/13
    ジャーナル フリー
    オオクグ(Carex rugulosa Kükenth)は沿岸潟湖や河口域などの汽水域に生育するスゲ属の多年生湿生植物で、環境省のレッドリストや島根県のレッドデータブックでは準絶滅危倶種として分類されている。宍道湖と中海を結ぶ島根県の大橋川河口部には、オオクグの大きな群落が形成されているが、洪水対策を目的とした河川の改修計画により、この群落の大部分が消失すると予測されている。そこで本研究では、オオクグ群落の保全を目的として、本種の生活史特性を明らかにし、その生育環境の検討を試みることとした。
  • 渡辺 一哉, 嶋 栄吉, 堤 聰
    原稿種別: 原著論文
    2008 年4 巻1 号 p. 15-22
    発行日: 2008/05/30
    公開日: 2026/01/13
    ジャーナル フリー
    調査は、2005 年5 月30 日より延40 日間行い、97 地区455 筆で5 種確認された。ニホンアマガエルが全ての地区で確認された。トノサマガエルは、調査地区の86%で確認され広く生息していた。シュレーゲルアオガエルは、68%の地区で確認された。また、ヤマアカガエル、ツチガエルの分布は、他の3 種と異なり、限られた範囲での確認であり強い偏在性が認められた。ほ場整備経過年数とそれぞれの種の確認割合では、これまで報告されてきたような、年数が経過するほど種数や個体数が増加する傾向は見られなかった。圃場整備が進んだ平地の水田では、水田以外の生息環境との関係性が個体群維持のための重要な要素となることが考えられた。
  • 皆川 明子, 西田 一也, 千賀 裕太郎
    原稿種別: 原著論文
    2008 年4 巻1 号 p. 23-32
    発行日: 2008/05/30
    公開日: 2026/01/13
    ジャーナル フリー
    耕作した水田と湛水管理を行った休耕田を対象に、魚類の移入・移出個体数、発育ステージ、移入・移出の時期を比較した。その結果、湛水した休耕田は、ドジョウ、タモロコ、フナ属の繁殖・生育場として、周辺の耕作した水田と同様に利用されていた。しかし、休耕田をビオトープ化する上で、1)周辺の耕作水田に比べて取水開始が遅れると、魚類が繁殖期のピークに利用できない可能性があること、2)水管理が粗放的だと予期しない落水の危険があること、3)水田の構造上、移出が困難だと多くの個体が水田内部に取り残されること、が課題と考えられた。
  • 西田 一也, 藤井 千晴, 千賀 裕太郎
    原稿種別: 原著論文
    2008 年4 巻1 号 p. 33-42
    発行日: 2008/05/30
    公開日: 2026/01/13
    ジャーナル フリー
    東京都日野市を流れる向島用水において,農業水路に設置される堰が水路環境および魚類の生息に与える影響を明らかにする調査を,2004 年6 月から2006 年1 月にかけて行った.その結果,堰が設置される灌漑期において,堰の上流側の水理条件は流速が緩やかで,水深が大きくなり,河床には砂泥が多く堆積した.また,遊泳力の弱いメダカ,大型魚であるギンブナ,砂泥底に生息するカマツカ,シマドジョウといった魚類の密度が堰の上流側で高くなることが明らかになった.
  • 小山田 智彰, 平塚 明, 間山 秀信
    原稿種別: 原著論文
    2008 年4 巻1 号 p. 43-50
    発行日: 2008/05/30
    公開日: 2026/01/13
    ジャーナル フリー
    ラン科植物のアツモリソウ(Cypripedium macranthos var. speciosum )は、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(種の保存法)」に登録されている植物のひとつである。野生個体の減少が著しい植物ではバイオテクノロジーの技術を用いた人工増殖が絶滅回避のための一手法として有効である。植物バイオテクノロジーの分野におけるラン科植物の増殖は、1922 年にKnudson が3 大栄養素と糖を用いた無菌培養法で発芽に成功したことから始まる。以来多くの研究が行われているが、アツモリソウは特に難しい。岩手県におけるアツモリソウの自生地はほとんどが消滅し、種は絶滅の危機にある。本研究は、地域の要請からはじまった。種の保存のための増殖および環境保全の資料とするため、無菌播種法を用いた種子発芽と苗の育成について検証した。
  • 豊田 光世, 山田 潤史, 桑子 敏雄, 島谷 幸宏
    原稿種別: 原著論文
    2008 年4 巻1 号 p. 51-60
    発行日: 2008/05/30
    公開日: 2026/01/13
    ジャーナル フリー
    トキ放鳥を2008 年秋に控えた佐渡島では,トキ野生復帰に向けた自然再生事業の推進が最重要課題となっている。自然再生事業は,地域の空間を再編する「自然環境整備」と,人びとの営みを方向づける「社会環境整備」という二つの枠組みを含む。これらの枠組みにもとづいて,佐渡島の自然再生事業は推進されている。本論文では,「トキの野生復帰のための持続可能な自然再生計画の立案とその社会的手続き(環境省地球環境研究総合推進費)」の活動を報告し,トキ野生復帰に向けた自然再生における社会環境整備の必要性と課題を明らかにする。また,社会環境整備を推進するための地域づくりワークショップ「移動談義所」の理念と手法を整理するとともに,教育的側面から考察する。
  • 井上 祥一郎
    原稿種別: 原著論文
    2008 年4 巻1 号 p. 61-80
    発行日: 2008/05/30
    公開日: 2026/01/13
    ジャーナル フリー
    環境復元の対象を流域にまで広げる重要性は認識されているが、流域における環境コミュニケーションの道具として重要な技術論が未成熟である。この原因は、具体的な手法が専門技術分野に限られ、かつ、分野横断の連携も十分でないことに起因すると考える。 筆者は幸い流域環境修復に寄与できると考えられる4 本の技術軸(土壌浄化法、低負荷・半回分活性汚泥法、吸引・送気微生物発酵法、小山・岸式底質好気化法)を学び、経験を重ねて技術レベルの客観評価を国家資格の技術士試験に委ねてきた。その結果は上欄に記載した技術士登録部門の通りである。これらの経験と、以後の複合する専門分野に関する継続研鑽成果を加味した結果、読者にとっては想定外であろうが、一人の技術者単独での垂直統合的かつ総括的な流域環境修復技術モデルを構築したので提言する。
  • 山田 辰美, 杉野 孝雄, 関川 文俊
    原稿種別: 原著論文
    2008 年4 巻1 号 p. 81-84
    発行日: 2008/05/30
    公開日: 2026/01/13
    ジャーナル フリー
    強度間伐によってヒノキ林の環境を改善し、多様な植物相を復元するために、静岡県袋井市の小笠山総合運動公園で間伐率の違いによる環境や下層植生の変化について調査した。その結果、間伐率40%以上では、間伐後すぐに下層植生の出現種数は増加する。60%、80%ではその後、いち早く出現した先駆性の落葉樹の生長により、草本類の減少が見られた。一方、40%では出現種数は高いまま維持されるが、樹木の成長は緩やかであった。ヒノキ林の環境改善を行うためには、40%以上の間伐を行うとともに、目標とする林相を定め、その目標に沿って間伐後の植生を制御する手法を検討する必要があると考えられた。
総 説
事例研究
  • 嶋 栄吉, 堤 聰, 渡辺 一哉
    原稿種別: 事例研究
    2008 年4 巻1 号 p. 89-94
    発行日: 2008/05/30
    公開日: 2026/01/13
    ジャーナル フリー
    湿原は,水資源の涵養機能,洪水防止機能,気象の緩和機能,生物種の保存機能,水質の浄化機能,環境教育機能などの多様な機能を持っている。しかし,農林地域の湿原における水環境と植生環境が大きな問題となっている。そこで,本研究では,青森県の田代湿原における地下水位,流出水量,それらの水質変動を調べた。その結果に基づいて湿原における地下水,流出と水質の特性ならびに保全対策を検討した。
  • 木村 尚
    原稿種別: 事例研究
    2008 年4 巻1 号 p. 95-104
    発行日: 2008/05/30
    公開日: 2026/01/13
    ジャーナル フリー
    横浜市沿岸汽水域における市民活動団体による自然再生の取り組みは、近年めざましく発展してきたが、今後の自然再生活動に資するため、これまでの活動の歴史を振り返り整理し紹介する。
  • 松下 潤, 安谷屋 隆司, 入嵩西 正治
    原稿種別: 事例研究
    2008 年4 巻1 号 p. 105-112
    発行日: 2008/05/30
    公開日: 2026/01/13
    ジャーナル フリー
    沖縄・石垣島は、世界有数のサンゴ種が生息する海域に囲まれている。表土の国頭マージ土壌(通称赤土)は、人為的影響を受けると侵食されやすく、海域に流出して美しいサンゴ礁の衰退をもたらしてきた。本文は、農地からの赤土・栄養塩類の流出問題に焦点をあて、赤土流出が引き起こされる原因について島の農業の耕地体系と地力再生産体系の二面から分析する。その結果、(1)サトウキビ単作や換金作物単作を基本とする大規模な圃場の構造に根本的な原因があること、(2)化学肥料の多用により土壌の団粒構造が崩れ土壌浸食が生じやすくなる施肥条件に副次的な原因があることの二点を明らかにした。また、今後の島の持続的な農業に関して、赤土・栄養塩類流出抑制効果と収益性の両面とも高い農業経営モデルへの転換が望まえるという考えのもとで、(a)島嶼の風土になじんだ伝統的な間作栽培の長所を再評価すること、(b)新たな耕畜連携体系のもとで家畜糞尿の資源循環・エネルギー利用の仕組みを取り入れることの二点を提示した。
短 報
  • 神宮字 寛, 竹村 武士
    2008 年4 巻1 号 p. 113-116
    発行日: 2008/05/30
    公開日: 2026/01/13
    ジャーナル フリー
    イバラトミヨ雄物型の繁殖地として創設された保全池を対象に、区画法および潜水目視調査による営巣数の調査を行った。区画法による調査では、調査区域の推定営巣数は76.3 個、95%信頼区間の推定営巣数は76.3±25.8 個となった。一方、潜水目視調査では、7 個の巣を確認した。密生した水生植物群落内を対象とした営巣調査では、潜水目視調査による巣の確認は困難であり、群落の一部分の調査によって群落全体の営巣数を推定する区画法が有効であると考えられた。区画法では直接巣を除去してしまうことから、調査回数が増大すれば、繁殖場所の破壊といった問題が生じる。また、1 回の調査にかかる時間と労力は潜水調査法に比べて大きかった。水生植物が密生した部分では、区画法を導入した調査が有効であるといえるが、生息地の保全を考慮した場合、営巣盛期に限定した調査が望ましい。
技術・調査報告
  • 関谷 明, 宮田 司, 岩佐 隆広, 木村 成利
    原稿種別: 技術・調査報告
    2008 年4 巻1 号 p. 117-120
    発行日: 2008/05/30
    公開日: 2026/01/13
    ジャーナル フリー
    本研究は、景観に配慮し、多様な魚の遡󠄀上が可能となり、かつ遡󠄀上可能な流量範囲を拡大できるプール式魚道の提案を目的としたものである。本魚道は、擬岩を用いることで①景観に配慮し、かつ②多様な流れ場が形成できるものとしたものであり、横断方向のみならず、縦断方向にも流れ場が変化するため、魚の遡󠄀上に適した流れ場のみが越流部に形成されるのではなく、遡󠄀上に困難となる流れ場も同時に形成させることで、より自然な流れ場が形成できる隔壁形状としたものであり、水理実験によりプール内の水理量の確認とウグイを用いた実験により遡󠄀上環境として適していることを確認している1) 。本報告では、国内の遡󠄀上魚として一般的であり、魚道計画時の対象魚として最も代表的な稚アユの遡󠄀上について調査した結果を報告するものである。
技術・調査報告
  • 玉上 和範, 五明 美智男
    原稿種別: 技術・調査報告
    2008 年4 巻1 号 p. 121-126
    発行日: 2008/05/30
    公開日: 2026/01/13
    ジャーナル フリー
    最近の自然再生への取り組みの進展により、内湾の干潟の保全・再生も新たな展開を迎えている。行政的あるいは学術的な取り組みと同時に市民が積極的にその場に関わり始めている。海辺つくり研究会では、東京湾に流入する河川の河口域に残された泥質干潟として多摩川河口にて、見学会を実施してきた。見学会では、生物観察を中心にトビハゼ等の底生生物の巣穴調査、生息場所の地形調査、生息数調査等を実施してきた。本報告では、自然環境の復元に向けて泥質干潟の保全・再生を行う際に必要な知見を得る目的で、これまで実施してきた多摩川河口の泥質干潟に関する調査結果を整理すると共に、干潟の地形や底質、植生等の変動の調査により明らかとなった生息場の変動特性について記す。
研究ノート
  • 小杉山 晃一
    原稿種別: 研究ノート
    2008 年4 巻1 号 p. 127-134
    発行日: 2008/05/30
    公開日: 2026/01/13
    ジャーナル フリー
    生き物はその発生以降の歴史を通して、周囲の環境から得られる物質を利用し細胞や組織の構成成分を作り、機能的分子を作ってきた。これらの物質は、現在でも生物圏と非生物圏(環境)との間を絶え間なく循環している。本稿は、人間の栄養素としても重要ないくつかの元素に注目し、地球規模の物質循環システムの中での移動を大まかに追った。この循環の中では、生き物は元素の運搬者として機能し、健全な自然環境が維持されることによって、栄養となる元素は周囲の環境や農地に供給される。自然環境の保全や再生は、生物多様性や生き物の自由な移動の再構築を通して人間の健康にも貢献する。
  • 黒田 知幸
    原稿種別: 研究ノート
    2008 年4 巻1 号 p. 135-144
    発行日: 2008/05/30
    公開日: 2026/01/13
    ジャーナル フリー
    IPCC第4 次報告書(AR4)は、「21 世紀末までに、地球温暖化の結果として平均地上気温が1.1℃ー6.4℃上昇する可能性があり、これを原因として海面水位は18cmー59cm上昇する可能性がある。」と報告した。本稿は、同報告書に基づき、地球の大気、海洋、大地の3つに区分し、①表層海洋の酸性化、②TERRAの二酸化炭素吸収力の低下、③排出シナリオによらず今後20 年間(2030年まで)は10 年当り0.2℃地上平均気温が上昇、④北極海氷の消滅(21 世紀中)、⑤温室効果ガスの安定後も数百年に亘って気温上昇が続く、等について報告した。また、沖縄先島諸島で確認されたさんご礁の産卵の様子を、TERRA(地球)からの強く切実なメッセージとして報告した。
シンポジウム報告
書 評
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