日本食品科学工学会誌
Online ISSN : 1881-6681
Print ISSN : 1341-027X
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57 巻 , 9 号
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総説
報文
  • 神山 紀子, 長嶺 敬, 村田 容常
    57 巻 (2010) 9 号 p. 372-379
    公開日: 2010/11/01
    ジャーナル フリー
    炊飯麦粒を保温すると経時的にa*値が増加したが,これは粒の水分に影響された.炊飯麦の褐変におけるフラバノールの影響を明らかにするため,搗精麦を試験管内で炊飯後70℃で保温し,炊飯直後と保温後の凍結乾燥粉のa*値の変化量(Δa*)を指標とした.炊飯麦のフラバノールは保温の過程でΔa*の増加と並行して経時的に減少し,その速さはPDB3>PCB3>(+)-カテキンの順であった.フラバノール含量をジメチルアミノ桂皮アルデヒド法で測定し10品種間で比較したところ,搗精麦のフラバノール含量の多い品種は炊飯直後や保温後に残存するフラバノール量,保温中のフラバノール減少量が多かった(それぞれr=0.986, 0.968, 0.921).炊飯麦の褐変は搗精麦のフラバノール含量(r=0.716)や保温中のフラバノールの減少量(r=0.838)と高い相関があり,プロアントシアニジン欠失遺伝子をもちフラバノールを殆ど含まない6系統の炊飯麦の褐変は著しく低かった.以上の結果より,フラバノールが炊飯粒の褐変の主原因成分であると考えられた.
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  • 中村 愛美, 佐藤 文華, 吉田 智, 熊谷 昌則, 鈴木 靖志
    57 巻 (2010) 9 号 p. 380-388
    公開日: 2010/11/01
    ジャーナル フリー
    今回の試験結果から,とろみ付与による呈味成分の強度変化については官能評価と味覚センサでほぼ一致することが確認され,味覚センサを用いた評価系を利用できることが示された.官能評価に要する多大な労力とパネルの能力による評価のばらつきのリスクを考えると味覚センサによる評価は,とろみ剤の性能を評価する一つの手法として十分に利用可能であり,官能評価と互助的に利用することで味質評価の精度を高めることが期待できる.今後の課題として,とろみが味強度に及ぼす影響について,官能評価との整合性を高めることがあげられる.また,とろみ剤添加による物性値の変化と味覚センサの出力変化との関係を解析することにより,味と物性を総合的に捕えた高性能とろみ剤の創出に寄与することなどがあげられる.
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  • 加藤 みゆき, 加藤 芳伸, 木下 朋美, 山口 優一, 大森 正司
    57 巻 (2010) 9 号 p. 389-394
    公開日: 2010/11/01
    ジャーナル フリー
    紅茶を対象としてAmplified DNA Fragment Length Polymorphism (AFLP)により品種の識別・同定を試みた.実験には,からべに,べにふうき,いずみ,Z-1,べにひかり,べにほまれの7品種の茶生葉より製造した紅茶と,市販されているダージリン,アッサム,ケニア,ジャワ紅茶を,そして日本の緑茶用31品種の茶生葉を用いて実験した.AFLPの選択プライマーペアーにはEcoR I-ACA/Mse I-CTGとEcoR I-ACT/Mse I-CTCを用いた場合に,AFLP法によるべにふうきを含めて品種の識別・同定が可能であることが認められた.
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研究ノート
  • 原田 恭行, 熊谷 敬之, 小善 圭一, 横井 健二
    57 巻 (2010) 9 号 p. 395-399
    公開日: 2010/11/01
    ジャーナル フリー
    低水温である海洋深層水を17℃に加温することにより,水温を一定に保持して養殖した殻長約8cmのアワビ(エゾアワビとメガイアワビの交雑種F1)足筋について,通年にわたり肥満度,遊離アミノ酸,ATP-関連化合物,破断強度などについて分析し,その季節変動について解析した.その結果いずれの項目も,年間を通じて大きな変動は見られなかった.このことは,一般に季節変動が認められる他の貝類と比べた場合,本養殖アワビF1交雑種の大きな特徴であることが明らかとなった.この養殖アワビF1交雑種の食味について,アワビの旬とされる夏季に漁獲された天然エゾアワビ,およびトコブシを対照として官能検査を行ったところ,天然エゾアワビと養殖アワビF1交雑種の間に有意差は認められず,本養殖アワビF1交雑種は十分に市場性を有する品質であると考えられた.
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技術用語解説
  • 藤原 正浩
    57 巻 (2010) 9 号 p. 400
    公開日: 2010/11/01
    ジャーナル フリー
    薬剤・薬物は種々の疾患の治療や健康回復に有効な化学物質であるが,そのほとんどが人間の体にとって本来は存在しない「よそ者の物質」である.生体内においては本来,必要な物質・成分を体内の適切な部位に選択的に運ぶ仕組みはあるが,「よそ者の物質」である薬剤・薬物にはこのような運搬システムは存在しない.したがってこの薬剤は,体内における部位選択性を持たず,非特異的に存在することとなる.この薬剤の非特異的存在は,「よそ者」であるが故に生体防御システムの網にかかり分解・代謝等を受けて活性を喪失する,あるいは単にそのまま体外へと放出されることにより無駄に消費されることになる.一方,体内の不適切な部位に一定量以上の濃度で運ばれれば,副作用を引き起こす.この副作用が深刻な場合は,たとえ本来の薬効が十分に高くとも,もはやその薬剤は使用することはできない.
    この「よそ者物質」である薬剤の持つ限界・制約を克服できる技術として注目されているのが,薬物送達システムDDS(ドラッグデリバリーシステム)である.このシステムは,適切量の薬剤を適時・適所へ運搬し過剰量の薬剤を不必要な時期や部位には分布させないことを実現させるものであり,用いる薬剤や目指すべき機能に応じて以下のように分類することができる.薬剤の持続性を高めるための徐放性能,体内代謝の速い薬剤の長寿命化,薬剤の吸収性の促進,薬剤を標的とする組織や細胞等の部位にのみ送達するターゲティング性能等である.これらの機能を達成するには,薬剤を何らかのキャリアーとなる物質に保持あるいはカプセル化する必要がある.そして用いるキャリアー・カプセル素材の持つ性質によって,DDS機能も決まってくる.図1には,カプセル化によるDDSの代表的な分類を示した.カプセル素材が体内で分解する場合は,その分解により薬剤の放出が促される(分解制御型).このタイプのDDSは,薬剤の標的指向(ターゲッティング)に有効である.一方,体内での分解性能の低いカプセル素材では,カプセルマトリックス内で薬剤をゆっくり拡散させることによる徐放機能が期待できる(拡散制御型).薬剤の徐放性をマトリックス内での拡散性によらず,膜の透過性により制御する膜透過制御型も知られている.
    以上述べて来たことからもわかるように,DDS技術の発展は,医学や薬学のみでは不可能であり,物理学,化学や材料工学等の分野も巻き込んだ学際融合的な試みが必要である.DDS用のカプセル素材開発では当然,材料科学・材料工学分野との協働・連携が必須となる.脂肪酸,界面活性剤等の低分子化合物はもちろん,デンプン・ゼラチン等の天然高分子化合物,近年注目されている高分子ミセルやマイクロエマルジョン,マイクロカプセル等の素材をDDSに応用する際は,医学・薬学と材料工学とが連携・融合しなくてはならない.また,体内での薬剤のセンサリング,あるいは光,電場,磁場,超音波等をトリガーとした薬剤の放出制御では,物理学・電気工学等との協力が必要である.例えば,高分子化学と医学・薬学との学際融合によって,高分子ミセルを薬剤送達キャリアーとして用い,抗がん剤を癌細胞へ選択的に送達するターゲティングDDSが開発されつつある.
    深刻な副作用や薬効の対費用効果等により,使用することができていない薬剤・薬物も多い.しかしながら,DDS技術が十分に発展すれば,薬剤を無駄無く,副作用無く使用することができる.したがって,上述の理由で使用ができなかった薬剤・薬物が日の目を見ることもあるかもしれない.今後の発展が期待されるところである.
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