日本食品科学工学会誌
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65 巻, 12 号
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総説
シリーズ—地域食品研究のエクセレンス(第18 回)
  • 小林 功, 神津 博幸, 王 政, 市川 創作
    2018 年 65 巻 12 号 p. 543-551
    発行日: 2018/12/15
    公開日: 2018/12/21
    ジャーナル フリー

    There has been a great deal of interest in adequately controlling digestibility of the ingested foods in the human digestive tract. Gastric digestion plays an important role in the process of food digestion, being strongly affected by both physical and chemical digestion processes. Over the last decade, the importance of in vitro gastric digestion models has been increasing, which is mainly attributed to superior applicability to various conditions as well as better reproducibility of experimental data. The authors developed a human gastric digestion simulator (GDS) that simplifies the antrum geometry and function. The major advantages of the GDS include quantitatively simulated gastric peristalsis and direct observation of the digestion behaviors of food particles in the gastric contents. In this review, we provide a brief overview of the findings obtained through a series of studies using the GDS. First, the current progress of in vitro gastric digestion studies is described. We next introduce the history and development of the GDS and findings on the digestion characteristics of representative foods and food models using the GDS. Further improvement of the GDS could potentially make it a useful tool for designing novel functional foods for which digestibility and release of nutrients and bioactives are well controlled.

報文
  • 高尾 和宏, 森下 尚紀, 寺原 典彦, 福井 敬一, 松井 利郎
    2018 年 65 巻 12 号 p. 552-558
    発行日: 2018/12/15
    公開日: 2018/12/21
    ジャーナル フリー

    紫カンショ発酵紅酢から酢酸を除去したRV画分を調製し,その糖尿病予防作用ならびに改善作用について糖尿病自然発症SDTラットを用いて評価した.その結果,正常期ならびに糖尿病前症期からのRVの摂取(4.3mg/kg/day)は,明らかな糖尿病発症予防作用を示した.また,OGTT試験によって糖尿病前症期において耐糖能改善作用が示されたことから,RVは前症期から作用し,糖代謝異常の進展を改善していることが明らかとなった.一方,糖尿病発症後からのRV摂取では空腹時血糖値の低下は認められなかった.以上のことから,RVあるいは紅酢は早期(正常および前症段階)からの摂取によって糖尿病発症予防効果が期待できる機能性食品素材であると判断された.

  • 塚越 詩織, 松浦 弘明, 塩田 誠
    2018 年 65 巻 12 号 p. 559-572
    発行日: 2018/12/15
    公開日: 2018/12/21
    ジャーナル フリー

    本研究は,W/O型乳化物における香気成分の遊離の機構解明を目的とする.57種類のモデル香気成分を添加し,モノグリセリドを用いて調製したW/O型乳化物について,ヘッドスペース-SPME-GC/MSによる香気成分分析を行った.モノグリセリドの飽和度が香気成分の遊離に与える影響について,香気成分遊離量の水-オクタノール分配係数(LogP)依存性を評価した.その結果,不飽和アルデヒド,エステルは,LogPの値の増加とともに,不飽和モノグリセリド乳化物からの遊離量が増加した.また,ラクトンは,不飽和モノグリセリド乳化物からの遊離量が多く,脂肪酸はLogPの値に関わらず不飽和モノグリセリド乳化物からの遊離量が少なかった.これらの挙動について,水滴分散,SFC,界面粘弾性測定結果を合わせて考察した.ラクトンについては,香気成分が有する炭素鎖と,モノグリセリドが有する炭素鎖間の相互作用が遊離量に影響するものと推定した.また,揮発性の脂肪酸については,飽和度の高いモノグリセリドを使用した乳化物では脂肪酸鎖が界面上に整列し,揮発性の脂肪酸が界面に接近しにくいことが,遊離量の増加に関連していると推定した.アルコールやエステルについては,香気成分の疎水性度とモノグリセリドとの相互作用の複合的な影響が遊離量に関連しているものと推定した.

  • 細井 友加里, 山谷 健太, 竹井 亮, 勝野 那嘉子, 西津 貴久
    2018 年 65 巻 12 号 p. 573-582
    発行日: 2018/12/15
    公開日: 2018/12/21
    ジャーナル フリー

    原料の異なる市販の米菓を用いて,食塊の物性,微細構造が口どけ感に及ぼす影響を検討した.

    米菓の口どけ感の評価用語を「唾液の吸収速度」と「食塊の残りやすさ」に選定した.唾液吸収速度と53µm以下の食塊粒子の質量分率が,口どけスコアと正の相関があった.米菓に α-アミラーゼ溶液を添加すると粘度は急減し,その半減期は口どけスコアと負の相関があった.気泡の膜厚と口どけスコアは負の相関が,気泡の平均サイズと口どけスコアは正の相関があった.

    以上の結果から口どけ感の良い米菓ほど,気泡膜が薄く,気泡が大きい傾向にあり,またその咀嚼過程では,唾液吸収速度が大きく,食塊が細かく破砕され,酵素による消化が進行しやすいことが明らかとなった.

技術論文
  • 種田 明子, 金政 真
    2018 年 65 巻 12 号 p. 583-591
    発行日: 2018/12/15
    公開日: 2018/12/21
    ジャーナル フリー

    2種のフィルタモジュールを備えた食品細菌検査試料液前処理用の細菌自動濃縮装置試作機を作製した.この濃縮装置は,卓上型のコンパクトな装置で,大腸菌を添加した各種食品試料懸濁液を処理し,大腸菌濃度を4倍から47倍にした濃縮液を得ることができた.

    大腸菌を添加した除菌キャベツ懸濁液では,20mLから100mLを処理して2mLの濃縮液が得られた.大腸菌の回収率は90%前後と良好で,大腸菌濃縮度9.55から47の濃縮液であった.0.5CFU/mLから2.6×104CFU/mLの大腸菌を添加した懸濁液100mLの50倍濃縮処理では,大腸菌の定量的な濃縮が可能であった.

    白菜浅漬け,わかめ,茹でさば,茹でいか,茹で牛肉,茹で鶏肉,ハム,炒りごまおよびポテトサラダの懸濁液を用いて,濃縮装置を試験した.各試料懸濁液を10mL又は20mL処理して2mLの濃縮液が得られたとき,104CFU/mL添加した大腸菌の回収率は82.3%から99.8%と良好で,大腸菌濃縮度4.23から9.98に濃縮することができた.これらの試験は,同一調製の試料液で繰り返し3回濃縮処理を行ったものであったが,濃縮液の大腸菌濃度の変動係数は,0.088以下であった.

    本濃縮装置は,簡便な操作による自動運転で,大腸菌添加各種食品試料懸濁液を処理して,大腸菌生菌数の精度良い定量的な濃縮が可能な装置であった.

技術用語解説
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