日本食品科学工学会誌
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66 巻, 12 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
総説
シリーズ—地域食品研究のエクセレンス(第23 回)
  • 内沢 秀光
    2019 年 66 巻 12 号 p. 443-450
    発行日: 2019/12/15
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー

    Shijimi, the brackish-water bivalve Corbicula japonica, is one of the most important fishery resources in Aomori Prefecture. We worked on developing a new product using Shimiji extract to promote the prefecture’s industry. In the course of researching the stabilization of the quality of Shimiji extract, we found that the ornithine content of the extract increased when the bivalve was frozen. It was not influenced by the period of freezing. This phenomenon was not apparent in the scallop, little-neck clam, or hard clam. We applied various low-temperature conditions for processing the bivalve from 4°Cto -10°Cand measured the ornithine content of each extract. The ornithine content was maximized by processing at -4°C. The increase in the ornithine content was reduced when the bivalve was stored at 5°Cor 15°Cafter processing at -4°C, and this decrease was reversed when the bivalve was again processed at -4°Cafter warming. Based on these experimental results, it was thought that freeze processing the bivalve increased the ornithine content of the extract. Furthermore, a novel ornithine-containing tripeptide, named acorbine, was found in the bivalve and is believed to be the source of increased free ornithine.

報文
  • 竹口 誠也, 本同 宏成, 佐藤 有紗, 青木 美緒, 上原 秀隆, 上野 聡
    2019 年 66 巻 12 号 p. 451-458
    発行日: 2019/12/15
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー

    異なる脂肪酸からなる単一飽和脂肪酸型TAGについて,不安定なαおよびβ'型から安定なβ型への固相転移に着目し,異なる多形から出発した際の結晶形態,熱力学的安定性,結晶化および試料全体が多形転移し終えるまでに要する時間の違いを検証した.αおよびβ'型の異なる結晶から固相転移し,得られた多形はどちらも同じβ型であったが,α型から固相転移したβ型は α型の結晶形態を維持したまま転移するのに対し,β'型から固相転移する際にはβ型が新たに核形成した後に成長し,その結果結晶形態の変化を伴い転移することが明らかとなった.また,LLLのβ'型の結晶化温度を上昇させると結晶形態が変化し,熱力学的安定性が高い β'型が結晶化することがわかった.さらに,β'型の結晶サイズにより,固相転移後の最終的なβ型の結晶サイズが決まること,β'型の固相転移の温度を上昇させると多形転移速度に影響するが,結晶形態への寄与は小さいことが示された.本研究によって,β'型の結晶を結晶化に要する時間と結晶サイズのバランスを鑑みて析出させ,析出後に昇温することでβ型への多形転移を促進し,結晶サイズを制御することで分離効率が高い結晶を得ることができる可能性が示された.また,脂肪酸鎖が長くなると,β'型の転移に必要な活性化エネルギーが大きくなることが示唆されたため,目的の脂肪酸鎖長によって最適な結晶化経路を選択する必要があることが示された.

技術論文
  • 恩田 匠, 小嶋 匡人, 長沼 孝多
    2019 年 66 巻 12 号 p. 459-468
    発行日: 2019/12/15
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー

    山梨県の主要な赤ワイン原料ブドウである ‘マスカット・べーリーA’ を用いて,直接圧搾法により果汁を調製し,得られた果汁からのワイン製成と瓶内二次発酵法によるスパークリングワイン製成を行い,次の知見を得た.

    (1)‘マスカット・べーリーA’ を原料とした場合,良好な色調のロゼ・スパークリングワインが製成できた.したがって,最も簡便なワイン製成法によって,ロゼのスパークリングワインができることが分かった.

    (2)‘ピノ・ノワール’ を原料とした場合,製成された原酒ワインにおいても,赤色の色調が認められず,白のスパークリングワインが製成された.したがって,直接圧搾法ではロゼスパークリングワインを製成することができなかった.

    (3)いずれの製成スパークリングワインも良好な香味を示した.

  • 桑原 悠史, 川井 清司, 羽倉 義雄
    2019 年 66 巻 12 号 p. 469-476
    発行日: 2019/12/15
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー

    基準試料のレトルト殺菌前後の電気インピーダンスを室温で測定したところ,殺菌前の試料に比べ殺菌後の試料は,回帰直線の傾きが大きく低下していた.レトルト殺菌によって試料中の澱粉の構造等の何らかの変化が起こり,この変化がインピーダンスのベクトル軌跡の形状に現れたと考えられる.米-水系試料の殺菌中のインピーダンス変化を,殺菌装置内で連続的に測定した.また,各殺菌時間のレトルト米飯の米粒の硬さの測定を行った.電気インピーダンスのベクトル軌跡は直線的な形状を示した.インピーダンスのベクトル軌跡の回帰直線の傾きを本研究における試料の変化の指標とし,解析を行った.昇温工程および殺菌工程において,基準試料(標準的な米と水の割合の試料)の回帰直線の傾きは減少していた.殺菌工程(13分~43分)では,試料温度はほぼ一定であることから傾きの変化は試料の何らかの変化を表してしている可能性がある.これを澱粉の物性変化に伴う変化であると予想した.また,加水量を変化させた試料の傾きは,加水量が少なくなるに従って,23分(殺菌10分)以降の傾きの減少幅が大きくなっていた.加水量が少ない試料ほど米粒が試料に占める割合が高いため,殺菌過程における澱粉粒の物性変化の影響を強く受けたためであると考えられる.米粒の硬さ測定では,同じ殺菌時間で比較すると,水分量の多い試料ほど硬さの絶対値は低かった.殺菌時間の増加における試料の軟化は澱粉粒の崩壊によるものであると示唆された.回帰直線の傾きと硬さとの間に高い相関(R2=0.6926)が見られた.このことから,米-水系試料の殺菌中の硬さを電気物性によって非破壊・未開封で連続的に測定できる可能性が示唆された.

技術用語解説
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