日本食品科学工学会誌
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66 巻, 5 号
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報文
  • 木村 圭一, 堀 清純, 米澤 加代, 西堀 史也, 岡 大貴, 飯島 健, 齋藤 彰宏, 辻井 良政, 高野 克己
    2019 年 66 巻 5 号 p. 159-169
    発行日: 2019/05/15
    公開日: 2019/05/23
    ジャーナル フリー

    良食味であるコシヒカリは,現在まで約40年間日本一の米の生産量を誇っている.そのコシヒカリの米飯食味を向上させる遺伝子座が第3染色体短腕に確認されている.しかし,コシヒカリの良食味遺伝子座による理化学的な米飯特性については,いまだ解明されていない点が多い.そこで本研究では,コシヒカリと日本晴の交雑体を用いて米飯食味に関わる低分子量化合物を精白米,炊飯米および炊飯外液について解析することにより,コシヒカリの良食味遺伝子座が米飯食味に与える影響について検討した.解析の結果,コシヒカリと日本晴の低分子量化合物のプロファイルは,精白米,炊飯米および炊飯外液それぞれで異なっていた.交雑体では低分子量化合物のプロファイルが置換した良食味遺伝子座の由来する品種に近づいていた.また,今まで良食味の要因とされてきたグルタミン酸およびアスパラギン酸以外の低分子量化合物にも変動がみられた.従って,コシヒカリの第3染色体短腕の未同定遺伝子は,今まで食味に関すると言われていた以外の化合物組成に影響を与えていることが示唆された.

  • 田村 匡嗣, 前原 那波, 熊谷 千敏, 齋藤 穂高, 小川 幸春
    2019 年 66 巻 5 号 p. 170-178
    発行日: 2019/05/15
    公開日: 2019/05/23
    ジャーナル フリー

    本研究は,米飯粒を試料とした異なる胃消化環境の2段階の胃小腸系in vitro消化試験を実施し,糖質消化率および構造的特性の変化の調査を目的とした.米飯粒の糖質消化率は,胃消化環境に関わらず120分間の胃消化過程でほぼ0%を示し,続く240分間の小腸消化過程で88.1~100.3%まで上昇した.米飯粒表面は,炊飯後において滑らかであったのに対し,胃消化後において組織の崩壊と,胚乳細胞,デンプン顆粒,細胞壁および繊維状物質が観察された.胃消化時における強酸およびペプシンが米飯粒の硬さおよび付着性に影響し,胃消化前後において米飯粒の硬さは9.4Nから2.5~4.2Nに,米飯粒の付着性は0.33kJ/m3 から0.10~0.18kJ/m3 にそれぞれ有意に減少した.小腸消化後における米飯粒表面には,デンプンが欠如した無数の細胞壁が観察された.これらの結果から胃消化環境は,胃消化時の米飯粒の力学物性に影響するものの,米飯粒の糖質消化率や細胞壁で構成される構造体に対しては大きな影響を及ぼさないことが明らかとなった.

研究ノート
  • 舩津 保浩, 廣瀬 智啓, 吉川 修司, 落合 芳博
    2019 年 66 巻 5 号 p. 179-185
    発行日: 2019/05/15
    公開日: 2019/05/23
    ジャーナル フリー

    貴重な桜えび資源を有効に利用して特徴のある製品を製造するために,異なる発酵方法で桜えび醤を製造し,その品質を調査した.桜えびを細切し,食塩と水を加え,① 米麹,② 米麹+乳酸菌,③ 米麹+乳酸菌+酵母,④ 桜えび麹,⑤ 桜えび麹+乳酸菌,⑥ 桜えび麹+乳酸菌+酵母および ⑦ 米麹+桜えび麹の7つの試験区を作成し,30℃で24週間発酵させた.また,24週間発酵させた試料を火入れ・ろ過し,最終製品とした.その結果,pHの変化をみると,米麹添加区が桜えび麹添加区より比較的速く低下する傾向がみられ,12週まで混合区は ① と ④ のほぼ中間の値を示した.全窒素分はいずれの試料も発酵に伴い4週目まで急激に増加し,その後緩やかに推移した.桜えび麹添加区の方が米麹添加区よりも全窒素分は高く,混合区は中間の値を示した.タンパク質分解率は混合区が他の試料に比べて発酵初期にやや高かったが,発酵終了時には桜えび麹添加区のそれと近似した.最終製品の遊離アミノ酸組成をみると,いずれの試料もGlu,Asp,LeuおよびAlaが多く,総量は米麹添加区より桜えび麹添加区の方が多く,混合区は後者に近かった.したがって,発酵法の違いにより桜えび醤の品質が異なるが,米麹添加区は発酵中のもろみのpH低下が速い点,桜えび麹添加区は全窒素分が高く,遊離アミノ酸総量が多い点,混合区はタンパク質分解率が高い点に特徴があることが分かった.

技術用語解説
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