日本食品科学工学会誌
Online ISSN : 1881-6681
Print ISSN : 1341-027X
ISSN-L : 1341-027X
66 巻, 9 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
シリーズ—地域食品研究のエクセレンス(第21回)
  • 伊藤 和子
    2019 年 66 巻 9 号 p. 327-334
    発行日: 2019/09/15
    公開日: 2019/09/26
    ジャーナル フリー

    Large amounts of purple-colored liquid waste containing nasunin are generated by plants manufacturing lightly salted eggplant products (Asa-zuke). A combination method using HP-20 and 5mol/l acetic acid as an elution liquid can be used to prepare nasunin-containing pigment powder from liquid waste of brined eggplant. The ORAC value for the powder was estimated to be about 10432µmol trolox equivalent/g, which was 69% that of chlorogenic acid. However, the nasunin-containing pigment powder exhibited low water-solubility and a strong acetic acid odor. Here, treatment with β-cyclodextrin and γ-cyclodextrin was investigated in order to address these undesirable characteristics. The optimal conditions for improving the characteristics of the powder were obtained by mixing γ-cyclodextrin and the powder in a 1:1 molar ratio (γ-cyclodextrin: nasunin/chlorogenic acid), and stirring for more than 10 minutes. This treatment increased the water-solubility of the powder from 32% to 81% and decreased the odor of acetic acid by 81%. The contribution of nasunin to the ORAC value of the antioxidant powder was estimated to be approximately 26%. In addition, it was found that nasunin exerts an anti-inflammatory effect and that this effect is mediated by its antioxidant activity.

技術論文
  • 小出 章二, 大須賀 玲, 折笠 貴寛, 上村 松生
    2019 年 66 巻 9 号 p. 335-340
    発行日: 2019/09/15
    公開日: 2019/09/26
    ジャーナル フリー

    本研究では,カットホウレンソウを供試材料とし,その質量モル濃度の測定値から氷結点を算出するとともに,differential scanning calorimetry(DSC)冷却曲線より過冷却点を計測した.その結果,試料の氷結点は-0.95±0.19℃,過冷却点は-7.1°C~-16.8℃の範囲にあることが示された.つぎに試料をフィルム密閉包装した後,-5℃で1週間過冷却保存させた.過冷却保存後の試料の細胞膜状態と細胞活性を電気インピーダンス計測法およびTTC還元法を用いて評価した結果,全試料48サンプルのうち45サンプルにおいて,細胞膜の閉鎖性が保たれること,また細胞活性を有することが示された.本研究は,カットホウレンソウ試料を-5℃において1週間過冷却状態を保つことが可能であることを示すが,過冷却保存は試料の細胞膜状態を変化させ,細胞活性を低下させることも示唆された.

  • 岸根 雅宏, 岡﨑 法子, 石原 敏史, 加賀 秋人, 橘田 和美
    2019 年 66 巻 9 号 p. 341-345
    発行日: 2019/09/15
    公開日: 2019/09/26
    ジャーナル フリー

    食品表示の信頼性を担保するため,デジタルPCRを用いた定量的品種判別法の開発を行った.対象品目はダイズおよびダイズ加工品とし,豆腐用主要品種である「フクユタカ」および「エンレイ」について技術開発を行った.品種特異性の高い挿入・欠失DNAマーカーを見出し,その領域にデジタルPCR用プライマー・プローブを設計した.品種混合DNA試料および豆腐試料を用いたデジタルPCRの結果,開発した手法による定量値は,品種混合率に対して非常に高い相関を示した.また,意図せざる混入か否かを判定する際に重要となる少量の品種混入に対しても正確に定量可能であることが示された.

  • 中山 由佳, 野田 寧
    2019 年 66 巻 9 号 p. 346-350
    発行日: 2019/09/15
    公開日: 2019/09/26
    ジャーナル フリー

    塩の苦汁成分量の違いがカリカリウメの食感におよぼす影響について検討した.その結果,塩中の苦汁成分量が多い塩を用いたウメの破断強度は,少ない塩を用いたウメと比較して高く,塩漬け期間中のウメの軟化が抑制されることが示唆された.また,ウメのペクチン中のHSP/WSP は,塩中の苦汁成分量が多い塩を用いると高くなり,塩に含まれているCaがウメの硬度保持に影響していることが示唆された.

    また,塩中の苦汁成分量を操作することにより市販品と同等の破断強度を持つウメを作製できることが示唆された.

研究ノート
  • 後藤 優佳, 三尾 建斗, 松岡 翼, 出江 萌絵, 鮎澤 信昌, 時友 裕紀子
    2019 年 66 巻 9 号 p. 351-359
    発行日: 2019/09/15
    公開日: 2019/09/26
    ジャーナル 認証あり

    麦茶の好ましい味・香り,すなわち風味についてフレーバーホイールを作成することで,精確かつ具体的な表現を可能にすると共に,それを用いた分析型官能評価による市販の麦茶の味・香りの特徴を評価した.さらに,2種類の丸粒形状の麦茶についてAEDA法を採用したGC-O分析により,香気を比較した.よって,官能評価と化学分析の二つの手法により麦茶の好ましい味・香りについてアプローチを行い,その特性の解明を試みた.

    (1)麦茶の香り特性表現用語として抽出された122語から計28語にまとめ,香りの総合的な強さの評価項目1語と味の表現用語4語を加え,麦茶フレーバーホイールを作成した.表現用語を統一したことで市販の麦茶の味・香り,すなわち風味に関するより具体的なコミュニケーションを可能にした.

    (2)作成した麦茶フレーバーホイールの各用語を用いて市販の麦茶11商品の低温および高温条件抽出液の評価を行った.市販の麦茶は風味の特徴により5つのクラスターに分けることができ,綿菓子,ビスケットなどの甘い香りや甘味の強いもの,コーヒー,焦げなどの苦い香りや苦味の強いもの等があったことより,麦茶の香りに多様性があることが証明された.

    (3)市販の丸粒形状の麦茶2商品はGC-O分析の結果,異なる香りの特徴を有しており,麦茶Aは全体的に甘い香りの特徴を,麦茶Bは甘い香りと共に生ごみ様の香りを特徴として強く有していた.このGC-O分析による評価結果と官能評価結果は一致している可能性があることが示唆された.

シリーズ—研究小集会(第42回)卵部会
feedback
Top