日本食品科学工学会誌
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67 巻, 6 号
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総説
  • 藤原 孝之, 久保 智子, 佐合 徹, 山岡 千鶴, 山﨑 栄次, 近藤 宏哉
    2020 年 67 巻 6 号 p. 179-185
    発行日: 2020/06/15
    公開日: 2020/06/24
    ジャーナル フリー

    We developed a method to produce high-quality semi-dried fruits by microwave irradiation pretreatment followed by hot air drying. The dissemination of this method has resulted in the increased commercialization of some fruits. This method can produce various varieties of semi-dried Japanese pears with unique colors and textures. In addition, unripe Japanese pears harvested about 2 weeks before usual can be used to produce semi-dried fruit. The use of unripe fruit in our method enables growers to utilize fruits that are often affected by typhoon-related fruit drop and lengthens the processing period during each year. Newly developed grape cultivars such as “Shine Muscat” and “Oriental Star” have processing characteristics suitable for our method: they are thin-skinned and the skin does not easily slip off. Our method can be used to produce semi-dried grapes in the shape of berries that remain attached to the stems; this presentation of dried fruit is preferred by customers. Furthermore, semi-dried fruits produced by our method are used in other foods, such as confections and jam.

報文
  • 那須田 祐子, 大沼 正人, 古坂 道弘, 原 かおる, 石田 倫教
    2020 年 67 巻 6 号 p. 186-192
    発行日: 2020/06/15
    公開日: 2020/06/24
    ジャーナル フリー

    以上,見てきたように,SAXS測定により食品状態のままの乳製品において,種々のナノ構造が観測できた.得られた結果は以下の通りである.

    ・乳脂肪の鎖長構造として2L構造が低脂肪乳をのぞく,全ての試料で観測された.さらに22 months試料ではでは2L構造に加えて,3L構造が観測された.

    ・多くの先行研究と同様,low fat milk とregular milkでは直径2~3nmのCCPに起因する散乱が観測され,ほぼ同じサイズのCCPがmozzarellaでも観測された.一方,2,6,22 months試料では直径6~17nmの粒子からの散乱が観測された.プロファイル形状の熱安定性も含め,この散乱はCCP起因と考えられ,熟成チーズではCCPの凝集が生じている可能性が高い.

    以上の結果は,これまで食品状態に観測のための加工を加えた試料で観測されてきた結果が食品状態のままの乳製品でも問題なく観測できることを示している.それゆえ,今回得られた個々の情報は既知のものも多いが,原料となる牛乳からチーズまでを全く試料加工なしでナノ構造を観測した初めての例と考えられる.また,mozzarellaおよび熟成チーズでは作製プロセスや熟成期間の違いによると考えられるCCPサイズの差異や体積分率の差異が観測された.

    市販品を対象とした検討では,原料乳や製造プロセスが異なることに起因するナノ構造の差異を排除できない.そこで,液体である乳からチーズに至る凝乳プロセスを詳細に検討する目的で原料乳や作製環境を完全に把握できる環境下で同様な検討を酪農学園大学との共同プロジェクトとして開始している.その結果について今後,随時報告予定である.

技術論文
  • 坂崎 未季, 宮坂 清昭, 永井 幸枝
    2020 年 67 巻 6 号 p. 193-202
    発行日: 2020/06/15
    公開日: 2020/06/24
    ジャーナル フリー

    パラチノースの血糖値上昇抑制効果について,疾病に罹患していない健常者を対象に,プラセボの摂取と比較してパラチノースの摂取が血糖値の上昇を抑制するかを検証するため,ランダム化並行群間試験またはランダム化クロスオーバー試験によって示された研究に限定して定性的なシステマティック・レビューを実施した.PubMed,The Cochrane Library,JDreamⅢ,UMIN-CTRを用いて文献検索を実施し,適格基準をもとに文献を選定し,採用された各文献における研究の質を評価した.

    採用された文献はランダム化クロスオーバー試験の文献4報であった.いずれの文献でもプラセボと比較してパラチノースの摂取において血糖値の有意な低下が認められた.エビデンス総体について,バイアスリスク,非直接性,非一貫性はいずれも低リスクであったが,不精確およびその他(出版リスク)は中/疑いあり(-1)と判断したため,最終的にエビデンスの強さは中(B)とした.

    パラチノースは,疾病に罹患していない健常者において摂取後の血糖値の上昇を抑制する効果があると結論づけた.また,1回あたり7.35g以上の摂取が有効であることが示唆されたが,今後さらなる研究報告の集積と追加的解析の実施による検証が必要である.

研究ノート
  • 澤井 祐典, 玉城 盛俊
    2020 年 67 巻 6 号 p. 203-208
    発行日: 2020/06/15
    公開日: 2020/06/24
    ジャーナル フリー

    沖縄で生産が多いアブラナ科野菜のカラシナについて,気温の高い時期における栽培を考慮し,遮光栽培の試験を行った.遮光により栽培期間中の受光量を変えたカラシナのアミノ酸含量,グルコシノレート含量,イソチオシアネート生成量を調査したところ,これら成分の多くが,遮光により低下する傾向にあった.1株新鮮重量や乾物率についても,遮光により低下する傾向にあった.今回の結果から,無遮光で栽培した方が,アミノ酸含量,グルコシノレート含量,イソチオシアネート生成量の多い収穫物が得られると考えられた.一方で,遮光栽培を行うことにより,水分含量が多く柔らかい食感となり,辛味成分が少なく食べやすいカラシナになると考えられ,栽培方法の工夫により様々なカラシナの生産が可能になると考えられた.

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