日本食品科学工学会誌
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68 巻, 5 号
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報文
  • 鈴木 絢子, 宮島 詩織, 望月 聡, 梅木 美樹, 酒井 久美子, 古屋 マミ, 小田 裕昭, 信岡 かおる, 石川 雄一
    2021 年 68 巻 5 号 p. 197-205
    発行日: 2021/05/15
    公開日: 2021/06/01
    ジャーナル フリー

    本研究では,高ショ糖食誘発脂肪肝ラットに対する,ユズ果皮エタノール抽出物(YPE)による影響を検討した.高ショ糖食とYPEを同時に摂取させたところ,肝臓中性脂肪の蓄積が有意に抑制された.YPEを分画し,GC-MS/MSにより作用候補物質を同定した.高ショ糖食と作用候補物質を同時に摂取させた結果,そのうちのmyo-イノシトールが,肝臓中性脂肪の蓄積抑制効果をもたらす成分のひとつであることが明らかになった.myo-イノシトールによる脂肪肝抑制の作用点を明らかにするため,肝臓の脂質メタボローム解析を行い,脂肪酸に着目したところ,高ショ糖食で増加したミリスチン酸とオレイン酸について,myo-イノシトール添加食では有意な低下が認められた.これらの結果から,YPE中に含まれる脂肪肝抑制作用をもたらす物質としてmyo-イノシトールが強く推測されるとともに,myo-イノシトールは,脂肪酸合成を抑制することにより,高ショ糖食誘発脂肪肝を抑制しているものと考えられた.

技術論文
  • 水谷 智洋, 吉川 茂利, 大澤 克己
    2021 年 68 巻 5 号 p. 206-211
    発行日: 2021/05/15
    公開日: 2021/06/01
    ジャーナル フリー

    緑色野菜中の緑色物質のクロロフィルは,酸性環境では黄褐色のフェオフィチンに急速に変化する.それ故,野沢菜漬などの乳酸発酵した緑色野菜は黄褐色となる.乳酸菌の中には,グルタミン酸からGABAを生産するときに,周囲のpHを上昇させる株が存在することが知られている.本研究では,当センター保有の長野県産野沢菜漬より分離された乳酸菌ライブラリーから,GABA生産時に培地pHを上昇させるL. buchneri LB130を選抜した.本菌をスターターとして用い,グルタミン酸ナトリウム(MSG)を添加して乳酸発酵野沢菜漬を試作製造した.その結果,MSGを無添加で発酵したものと比較して,緑色の退色を抑制することができた.また,試作した野沢菜漬数グラムの摂取で,機能性食品効果が期待できる十分量のGABAを摂取できる.この時の塩分摂取量はわずかであるため,機能性表示食品の開発にも利用が期待できる.

研究ノート
  • 恩田 匠, 小嶋 匡人, 長沼 孝多
    2021 年 68 巻 5 号 p. 212-215
    発行日: 2021/05/15
    公開日: 2021/06/01
    ジャーナル フリー

    ‘マスカット・べーリーA’ を原料として,フランス・シャンパーニュ地方の伝統的な製法により,ブドウからの果汁調製を行った圧搾過程の成分推移を調べた結果,次の知見が得られた.

    (1)スパークリングワイン製造のために早期収穫したブドウ果の圧搾の結果,圧搾が進行する後半で酸度が高くなることが認められた.

    (2)圧搾後半で酸度が高くなる傾向は,我が国固有の ‘甲州’ に類似することが分かった.一方で,圧搾後半で,‘甲州’ は酒石酸含量が急激に増大したが,‘マスカット・べーリーA’ は酒石酸は一定濃度で推移した.また,リンゴ酸の溶出は,圧搾時の加圧により影響を受けるパターンを示した.

    (3)スティルワイン製造に適熟のブドウ果を用いた検討でも,(1)および(2)とほぼ同様な傾向が認められた.

    (4)‘マスカット・べーリーA’ を圧搾して得られる一番搾り果汁(キュベ)と二番搾り果汁(タイユ)では,タイユの方が酸度が高い結果が確認された.これは,ブドウ果の圧搾過程で,後半にリンゴ酸含量が顕著に高くなることに起因することが明らかとなった.

    以上のことから,キュベとタイユからのワインをブレンドするときには,そのブレンド比率などを考慮しなければならないことが考えられた.

解説
シリーズ—研究小集会(第46回)大豆部会
  • 中森 俊宏
    2021 年 68 巻 5 号 p. 216-218
    発行日: 2021/05/15
    公開日: 2021/06/01
    ジャーナル フリー

    大豆は,世界的に広範囲に栽培されている重要な植物資源の一つである.特に “畑の肉” と言われるほどタンパク質含量が高く,40 %程度を占めている.この大豆タンパク質には,人間にとって必要なアミノ酸20種類全てが含まれており,また,必須アミノ酸が9種類も豊富に含まれている.さらに大豆には,タンパク質だけでなく,オリゴ糖,イソフラボン,サポニン,ステロールやトコフェロール等様々な栄養機能性成分が含まれている.大豆の遺伝資源の中にはこれらの栄養機能性成分を多く蓄積するものが存在しており,これらの遺伝的変異を解明し積極的に活用することで,より栄養特性に優れた大豆を創出できる可能性がある.2019年日本食品科学工学会第66回大会の研究小集会大豆部会では,大豆の栄養機能性成分の遺伝変異による分子制御の機構解明と成分育種を進められている北海道大学農学研究院山田哲也先生に栄養機能性成分の向上を目指した育種改良の現状と展望を示していただいた.

  • 山田 哲也
    2021 年 68 巻 5 号 p. 219-224
    発行日: 2021/05/15
    公開日: 2021/06/01
    ジャーナル フリー

    Soybean seeds contain high-quality proteins that are used as a source of food, and also abundant lipids that are used as a vegetable oil. Many functional ingredients are also included in soybean seeds. We have identified qualitative and/or quantitative genetic variations in several components, such as protein, α-tocopherol, chlorophyll, and isoflavone, among soybean genetic resources. These genetic variations are available to improve the processing properties and to add some values for soy foods. We also demonstrated that a high and low temperature during seed filling enhanced the biosynthetic pathways of α-tocopherol and isoflavone, respectively. These suggest that it is possible to increase the amounts of functional components, such as α-tocopherol and isoflavones, by improving the cultivation environment of soybean in addition to the development of new soybean varieties by using genetic variations. The successful use of genetic variations and physiological properties related to soybean quality will not only enable differentiation from conventional soy products, but also create new uses for soybean.

技術用語解説
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