日本食品科学工学会誌
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71 巻, 12 号
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報文
  • 古澤 駿, 山梨 颯斗, 岡 大貴, 伊賀 大八, 井上 好文, 髙野 克己, 野口 智弘
    原稿種別: 報文
    2024 年 71 巻 12 号 p. 467-472
    発行日: 2024/12/15
    公開日: 2024/12/13
    [早期公開] 公開日: 2024/06/20
    ジャーナル 認証あり

    本研究では真空冷却を行ったパンのクラム物性がソフト化する要因を解明するため, 真空冷却がパンに加わる余熱を抑制する効果に着目し, 余熱の抑制がデンプンとタンパク質に与える影響について検討を行った. デンプンは余熱の抑制により粒の形状と結晶性が保たれており, 真空冷却パンは糊化の進行が抑えられることが示された. またタンパク質は, 焼成によるタンパク質の不溶化が余熱によっても進行することが示され, 余熱の加わる量が少ない真空冷却パンでタンパク質の不溶化が抑制された. さらにタンパク質の性状に及ぼす影響を明らかにするために, 余熱により疎水性が低下したEtOH画分中のグリアジンの分子種量の測定を行った. 従来では熱により不溶化するとされる, グリアジンの中でも高い疎水性を持つα-/β-, γ-グリアジンが, 余熱の抑制される真空冷却パンでは高い溶解性を持つことが示された.

  • 西本 有紀, 折田 萌花, 土肥 賢志, 藤田 明子, 北村 豊
    原稿種別: 報文
    2024 年 71 巻 12 号 p. 473-485
    発行日: 2024/12/15
    公開日: 2024/12/13
    [早期公開] 公開日: 2024/07/16
    ジャーナル 認証あり

    過熱処理した3品種の玄米をペーストに加工し, その粉砕や貯蔵性に関する特性を実験的に解析した.

    まず, 過熱処理区Bの処理方法, すなわち玄米殺菌・殺虫装置で作製した過熱玄米においてGABA含有量が増加すること, ならびに粉砕特性が優れることを確認した.

    次に, 玄米ペーストについて, レトルト保管区と冷凍保管区においては, 12ヵ月間の品質保持が可能であることを確認した. また, 玄米ペーストに含まれるGABAは, 対照区において湯煎によりその含有量が増加することがわかった. そして, 玄米ペーストの粘弾性は保管条件によって異なるため, 硬めのペーストが望ましい場合は冷凍保管, 軟らかめのペーストが望ましい場合はレトルト保管など, 用途によって保管温度を使い分けると良いと考えられた. なお,「ミズホチカラ」は徐々に硬くなる性質,「ヒメノモチ」は基本的には軟らかく徐々に粘りがなくなる性質がみられたため, 品種特性を生かして用途を検討するとよいと考えられた.

    そして,「ひとめぼれ」の玄米ペーストの食味について, 過熱処理区Bは冷凍保管・レトルト保管問わず12ヵ月後も基準と同等であり, 過熱処理区Bにおける過熱処理が品質保持に役立っていることが示唆された.

研究ノート
  • 渡辺 満, 池永 幸子
    原稿種別: 研究ノート
    2024 年 71 巻 12 号 p. 487-492
    発行日: 2024/12/15
    公開日: 2024/12/13
    ジャーナル 認証あり

    アミロース含量が異なる小麦2品種をビューラー製粉機で製粉し, 分画したストリーム粉のブレーキ (B) 粉, およびミドリング (M) 粉各3種類の品質特性, 糊化特性を調査した. さらに, 各ストリーム粉から調製した麺 (うどん) の硬さ, および1M粉から調製した麺の破断特性を測定した. その結果,

    (1) 「ゆきちから」,「もち姫」両品種でM粉よりもB粉の方がタンパク質含量は多く麺が硬かった, またM粉, B粉とも1, 2, 3の順に外層に由来する分画ほど多くなった.

    (2) RVA測定において, 内層に由来する分画ほど, 麺の粘弾性に寄与するブレークダウンが大きくなった. また, もち性小麦「もち姫」は, デンプンの老化速度の指標であるセットバック値が小さかった.

    (3) 1M粉から作製した麺の破断試験から, 「もち姫」の麺は, 柔らかであるが噛み切るためにやや力が必要であり, 「ゆきちから」は「もち姫」より硬く強靱な麺であり, デンプン組成が影響していると考えられた.

    以上の結果から, 製粉時に分画したストリーム粉は, タンパク質やアミロース・アミロペクチン等の成分特性および糊化特性が異なることにより, 利用するストリーム粉により麺の物性が影響されることが示唆された.

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