本研究では, エソすり身摂取がラットの脂質および糖質パラメーターに及ぼす影響について検討を行った. 試料はエソすり身凍結乾燥粉末を用い, たんぱく質含量70 %, 脂質含量は1.6 %であった. 食餌はたんぱく質源をカゼイン20 %としたCO食, エソすり身をCO食のカゼインと15 %レベルで置き換えたものをエソすり身食とした. CO食の脂質含量を15 %としたHF食, HF食のカゼインとたんぱく質15 %レベルでエソすり身と置き換えたHF+エソすり身食の4種類を準備した. 5週齢雄性SD系ラットに試験食を3週間自由摂食させた. エソすり身摂取は白色脂肪組織重量を有意に低下させた. 一方, 血清および肝臓脂質濃度においてエソすり身の影響は観察されなかった. エソすり身摂取により糞中への脂肪酸, Cho, 胆汁酸および窒素の排泄が有意に促進し, 盲腸および盲腸内容物重量が増加した. 以上の結果より, エソすり身が白色脂肪組織の蓄積を低減させることが明らかになり, これらの影響は主にエソすり身のたんぱく質画分およびソルビトールに起因していると考えられる.
季節限定的な野菜であるかぼちゃを加工するにあたり, 高い保存性を有する, 品質に特徴のある, 北海道オホーツクのご当地かぼちゃアイスクリーム類を開発することを目的とした. かぼちゃは澱粉含量が高いため, フリージング時にトルクへの負荷が掛かり, 硬いテクスチャーのアイスクリーム類になる. 一方, さつまいもにはβ-アミラーゼ活性が豊富に含まれている. そこで, かぼちゃを含むアイスクリームミックスにさつまいも搾汁液を添加して, 低温殺菌する過程で, かぼちゃ澱粉をマルトースへと変換し, フリージング時の粘度上昇を抑制して, オーバーランを向上させたアイスミルクを開発した. この製品は, 市販品のかぼちゃアイスミルクと比較して, かぼちゃの色が濃く, かぼちゃ感が濃厚で, 舌触りと口溶け感が市販品と同等のものであった.
本研究では, 低環境負荷かつ豆腐の風味を保持する新たな充填豆腐の製法として考案された, 温豆乳充填豆腐の保存性を調査するため, 異なる条件で10種類の豆腐を調製し, 40日間の貯蔵期間から8回の計測日を設け, 大腸菌群数及び一般生菌数の計測を行った. また, 豆腐の品質管理における新たな品質計測手法の可能性として, 豆腐の時系列的な蛍光特性に着目し, 10倍希釈豆腐試料励起蛍光マトリクス (Excitation Emission Matrix: EEM) の測定を行った. 菌数測定の結果, 充填温度60 ℃・ボイル処理なしの温豆乳充填豆腐以外では大腸菌群が観測されなかった. 一方, 一般生菌数については, 貯蔵期間に対し指数関数的な増加が観測された. また, 凝固後に加熱処理を行わなかったノンボイル試料において, 高温の80 ℃で充填された温豆乳充填豆腐は低温度の充填と比較して長期の保存性が示された. さらに, 10倍希釈豆腐試料のEEMを取得したところ, 3つの波長帯で特徴的な蛍光ピークが観測され, 蛍光強度は貯蔵日数の経過とともに減少した. この蛍光特性の変化に基づく一般生菌数の推定可能性を検証するため, EEMデータを入力とした部分最小二乗回帰 (PLSR) およびサポートベクターマシン (SVM) による回帰モデルの構築を試みた. モデルの堅牢性を評価するため, 5分割交差検証を適応した結果, 最適化されたSVMモデルにおいて, 検証データに対する決定係数 (R2cv) は0.756であった. 以上の結果から, 温豆乳充填豆腐の有用性およびEEMによる貯蔵中の豆腐の非破壊菌数推定の可能性が示唆された.