以上を要約すると
(1) 試食成績の結果よりみて素麺の味と硬さ(歯切れのよさ)は大体一致しており,煮上りの硬い歯切れのよい物程,美味しいとして賞用される様である。この事は素麺の良否がその物理的な感触に大きく左右されることを意味すると考えられる。
(2) 製造後の経過日数が大なる程素麺はその煮上りが硬く,歯切れがよくなり,従つて味もよくなる様である。尚色は年月の経過と共に黄褐を帯びてくる。
(3) 吸水率溶出率共に製造後の経過日数の大なる物程低かつた。但し外麦薄力粉を原料とせる素麺に於いては溶出率は相当低いが,吸水率は最も高い値を示した。之れより吸水率は素麺の煮上りの硬さ(歯切れのよさ)に溶出率は煮崩れの程度に関係があると考えられる。
(4) 増容度も大体吸水率,溶出率と同様な傾向を示すが誤差が大きく素麺の品質判定には不適当の様に思われる。
(5) 以上より供試品の太さ,形状が一定なる時は吸水率と溶出率とを測定することによりある程度素麺の品質を比較判定し得る事を認めた。終りに本実験の際に御援助を賜つた食研の上村技官,渡辺技官及び当所高嶋化学部長に深く感謝致します。
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