固形ジャムの製造に当り,1つの問題点として,釜揚時における糖度と,製品糖度(20℃に換算した)との関係がある。与えられた製品糖度に整一するように,釜揚時の糖度を決定していくのは,色々な条件の変化によつて,さほどたやすいともいいきれない。固形ジャムの製品糖度も規定されているから,そのゼリー状態が良好であるのみでなく,糖度も規格内でなるべく整一するのが望ましい。製品糖度の不同のうち,糖度の高すぎは経済的不利,食味への悪影響などをきたすと考えられる。ところが,往々にして,糖度不同,特に糖度不足を生ずることがある。これは肉詰後におけるジャム固形物部と,非固形物部との糖度の平衡化によつて生ずる。釜揚時において固形物へ糖分がよく浸透しておれば,このような現象はおこらないはずである。
固形ジャムの製造においては,仕上点の決定にあたつて,濃縮時間,温度と共に,果実に対する糖分の浸透状態についても考える必要がある。糖度の測定に屈折計を用いるとすれば,釜揚時と製品(20℃)との糖度間における温度補正値に,肉詰後の糖度の平衡を併せ考えて,釜揚時の糖度を決定せねばならない。果実固形物に対する糖分の浸透は,使用される果実の種類,果粒の大小,果肉片の厚薄,成熟度,果肉組織硬軟などにより影響されると思われる。固形ジャムの糖度の整一化をはかるためには,仕上点についていまだ考える余地があるように思う。そのためには,果実固形物の組織に対する糖分の浸透状態をしらねばならない。
この実験においては,果実固形物に対する糖分の浸透状態を考究するために,糖分及び果実のいろいろな種類の組合において,固形ジャムを製造した。そして,濃縮時間経過に対する糖度の変化を測定した。また,沸騰温度の変化と対照考察した。
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