暖地ビートの処理方法の一つと考えられる,ドライ・コセット法を検討する実験の一環として,界面活性剤の使用がビート切片の乾燥効率をたかめるか否か,さらにそのドライ・コセットの製造歩留り,品質性状にいかなる影響をあたえるかを検討するとともに,天日乾燥の可能性を再検討した結果,つぎのような知見を得た。
(1) ビートコセットの天日乾燥は気象条件がよければ,4~5日間で水分.73~78%の生ビートを水分11.2~11.5%まで乾燥することができる。
(2) 界面活性剤の添加により,天日乾燥初期の2~3日は水分減少がやや早いが,後半になるとほとんど差がみとめられなかった。
(3) 火力乾燥の場合も界面活性剤添加の影響は,乾燥初期(15分くらいまで)は水分減少がやや早い傾向がみとめられたが,乾燥終期にはその差はほとんどみとめられなかった。
(4) ドライ・コセットの歩留りは,天日乾燥においては,界面活性剤添加区も無処理区も同程度であったが,火力乾燥においては,界面活性剤添加区は低い歩留りを示した。
(5) ドライ・コセットの製造中における糖度減少は,火力乾燥のほうが天日乾燥の場合よりもやや大であり,天日乾燥においても火力乾燥においても,界面活性剤添加区は無処理区にくらべ,糖度減少が大であった。
(6) ドライ・コセット製造中における還元糖の増加は,糖度の減少と大体対比的であった。
(7) マルクおよび灰分,磨砕汁中の全窒素量の変化などは,天日乾燥と火力乾燥の間にも,また対照の無処理区と界面活性剤添加区の間にも,いちじるしい差はみとめられなかった。
終りに試料のビートを提供していただいた岡山,香川,大分,熊本,宮崎,鹿児島の各県農業試験場,ならびにこれが斡旋の労をとられた農林省振興局研究部杉企画官および北尾企画官に,感謝の意を表するとともに,界面活性剤試料を提供されたライオン油脂株式会社,ならびにT.C.型試験用乾燥機を貸与していただいた日本機工株式会社に厚く御礼申し上げる。
抄録全体を表示