澱粉ノリの離水を防止する一方法として,分散媒によく溶けて,アミロースと澱粉分子との結合を防ぎ,その構造のなかに十分の液体を保つようにするならば,よいのではないかと考えられる。
そこで,水和性の強い高分子電解質であるアルギン酸ナトリウムを添加して,澱粉ノリの離水に及ぼす影響について究明した結果,つぎの知見が得られた。
(1) 澱粉ノリにアルギン酸ナトリウムを添加すると,澱粉ノリの離水が防止されることがわかった。これは,アルギン酸ナトリウムの添加による澱粉ノリ中の水の移動が阻止されたことを意味し,前述の推論の正しいことが証明された。
(2) アルギン酸ナトリウムの粘度が澱粉ノリの離水に及ぼす影響については,高粘性品が有効であることがわかり,この理由については高粘性品ほど,水和性が強いためである。
(3) 澱粉の種類によってアルギン酸ナトリウムの添加量が異なり,
小麦澱粉の場合 5%
サツマイモ澱粉の場合 8.3%
トウモロコシ澱粉の場合 10%
の添加で澱粉ノリの離水が防止される。なお,アルギン酸ナトリウムを添加すると澱粉ノリはベトつかなくなる。
(4) つぎに,低濃度澱粉ノリほど,離水率が高いため,これを防止するためには,低濃度澱粉ノリほど,アルギン酸ナトリウムの添加量が多くなることがわかった。
(5) 澱粉ノリのノリ化の程度による影響はアルギン酸ナトリウムの添加により最少限度に防止されるとともに,ノリ化時間が短縮されることがわかった。
(6) アルギン酸ナトリウム添加澱粉ノリは多量の砂糖を加えても離水せず,また,砂糖の浸出もなく実用上きわめて有効である。
(7) アルギン酸ナトリウム添加澱粉ノリに若干量の塩化ナトリウム,酢酸を加えても離水は認められないことがわかった。
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