糖用屈折計で果実のように複雑な組成のものを測定した場合,得られた示度と実際の成分とがどのような関係にあるかを検討した。
(1) 可食適期の果実を種類別に調べた結果,屈折計示度は分析糖度よりつねに高い値を示した。また,示度のなかに占める糖の比率は果実の種類で異なり,多くは90%前後を示した。しかし,示度に対し糖の比率の低いものもあり,レモンのごときは10%強にすぎず,示度の大半が有機酸で占められるものもあった。したがって,屈折計示度だけから糖の含量,あるいは食味を推測することは非常に危険である。
(2) ブドウについて熟期別に屈折計示度と成分との関係を検討した。成熟初期の果実は糖に比べて酸の含量がはるかに高く,屈折計示度は主として酸によって占められる。熟度が進むにつれて酸は減少し,逆に糖の増加は著しく,収穫期には示度中に占める糖の比率は最高となる。そのように熟期によって成分組成に顕著な変動がみられるが,可溶性固形量は成熟の全期間を通じつねに示度と近い値を示した。
(3) 果汁を醗酵させた際の関係を調べた結果,屈折計示度,可溶性固形量,全糖のいずれも醗酵が進むにつれて低下した。しかし,三者の低下率は異なり,全糖の低下がもっともすみやかで,次いで可溶性固形量,屈折計示度の低下はゆるやかであった。それがため,醗酵によって示度中に占める糖の比率は急激に低下した。なお,普通の場合示度と可溶性固形量の値は比較的よく一致するが,醗酵が進むにつれて両者の値は大きく開いた。以上の現象は,可溶性固形量の主体をなす糖が,醗酵により揮発性のアルコール,酢酸などに変化するためにおこるものである。
(4) 結局,糖用屈折計の示度のなかに占める成分組成は,果実の状態ですべて異なるため,その数値の取扱いには慎重な配慮を必要とする。
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