凍豆腐のアンモニア処理の際にみられる膨軟性の改善について検討を行なった結果,次のような知見が得られた。
(1) 凍豆腐の水戻し時の膨軟性の改善は水戻し液へのアンモニアの溶出によって生ずる。
(2) 凍豆腐をアンモニア処理後放置するとアンモニアが凍豆腐に結合し,非溶出性となり,このアンモニアは水戻し時の膨軟性の改善には関与しない。
(3) 凍豆腐を種々のアルカリ(NH4OH, NaOH, Ca(OH)
2)で水戻しすると濃度が大きくなるほど,膨軟性が改善され,0.1Nでは著しく体積増加率が大きくなることが認められた。
(4) 0.01, 0.1Mの緩衝液(pH 6~11)で水戻しすると,膨軟性はpH 9以上で改善され,濃度が0.1Mのときに著しいことが認められた。なお,緩衝液間の差は小さかった。
(5) 凍豆腐を酸→アルカリ,アルカリ→酸で処理すると,その体積増加率の変化曲線は異なったカーブを描き,同一の曲線を示さなかった。これより,アルカリまたは,酸の前処理が,膨軟性に影響することが認められた。この現象は,膨軟した凍豆腐を水戻ししても大した体積の減少を示さない現象を説明するものと考えられる。
(6) アンモニア処理凍豆腐を放置してアンモニアを蒸散させたのち,アンモニア再処理しても,アンモニア処理の効果に差はみられなかった。
(7) アンモニア無処理凍豆腐を37℃で貯蔵しても56日後で著しい膨軟性の低下は認められなかった(76%)。
(8) 凍豆腐たん白質のアンモニア処理,無処理試料でSH基数,ペプシン消化性に大差は認められなかった。
抄録全体を表示