生ニンジン,乾燥ニンジンを1Mevの電子線で処理して,乾燥速度,吸水速度,膨脹速度,膨脹機構,硬度,ペクチン物質の分解などを検討した。
(1) 生ニンジンを0.19~3.06Mrad照射すると,線量の増加に伴い硬度は指数函数型の低下を示す。生ニンジンの乾燥速度は照射後のブランチング処理の有無にかかわらず比較的低線量(0.21, 0.43Mrad)で未照射より速く,高線量(0.86, 1.71Mrad)では逆に遅くなる。照射生ニンジンより作った乾燥ニンジンの吸水速度は,線量の増加とともに速くなるが,ブランチング処理を行なったものは,0.21Mradを除き未照射と同じか,または遅くなる。
(2) 乾燥ニンジンの復元後の硬度は線量の増加に伴い指数函数型の低下を示す。乾燥ニンジンの吸水速度は線量の増加に伴って速くなり,7g/gの吸水量に達する時間は1.71Mradでは未照射の1/2である。
乾燥ニンジンを減圧下で,35℃の水中で復元させ,時間経過とともに全容積の減少を測定し,膨脹速度の変化を分析した。照射試料は未照射試料よりも,全容積減少速度も速く全減少容積量も多い。しかし同条件下での吸水速度は照射によってそれほど促進されず,乾燥ニンジンの膨脹機構が変化していることを示している。つまり全容積減少速度と吸水量の関係から,照射ニンジンでは水分子とミセルの結合,それに伴う化学反応が促進され,全容積減少速度は速くなるが,吸水による膨脹はそれほど促進されないことがわかった。
(3) 生ニンジン,乾燥ニンジンともに照射線量の増加に伴い全ペクチン,プロトペクチンが減少し,ペクテート,ペクチンの多少の増加が認められる。
(4) 0.21Mradから1.7Mradの照射処理を行なったが,全試料,試験区間に有意な差は認められなかった。またクッキングタイムは0.25Mradで2/3, 1.0Mradで1/2に短縮できる。
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