日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
16 巻, 9 号
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  • (第4報)洋ナシの追熟抑制効果と化学成分への影響
    緒方 邦安, 山中 博之, 加藤 勝一, 茶珍 和雄
    1969 年 16 巻 9 号 p. 391-396
    発行日: 1969/09/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    (1) 本研究は放射線照射による果実の熟度調整効果に関する研究の一環として,洋ナシの追熟抑制効果とその化学成分への影響について調べたものである。
    (2) 試料はおもに長野県産の緑熟バートレットを用いたが,一部鳥取産のものも用いた。照射はC060よりのγ線で250~1000 Kradを照射した。
    (3) 洋ナシバートレットの追熟は250 Krad, 1000 Kradの照射で明らかに抑制される。しかし1000 Kradもの高線量では,むしろ追熟が阻害され,微生物に侵害されやすくなる。また照射洋ナシの嗜好性は500 Kradでは低下するが,250 Kradでは対照区と有意差はみられなかった。
    (4) 照射直後果肉は一たん軟化するが,追熱中のそれはかえって抑制された。1000 Kradでは肉質が硬味のある粉質化した状態となった。
    (5) 照射果実の追熟中におけるプロトペクチン,水溶性ペクチンの減少は緩慢で,1000 Krad区ではほとんど減少しなかった。1000 Krad区のペクチンメチルエステラーゼ,ポリガラクチュロナーゼの活性度はともに対照区に比べ微弱てあった。
    (6) デンプンは照射直後減少するが,貯蔵中の分解は抑制された。遊離アミノ酸については,post-climactericstageでアスパラギン酸,グルタミン酸,セリンが照射区で少なかった。プロリンは追熟貯蔵中明らかに増加するが,増加の程度では照射区は対照区よりはるかに著しい。
    (7) 揮発性成分は250 Krad区で対照区に比べてかなりおくれて同程度に生成されるが,500 Krad区ではほとんど生成されす,風味,肉質の点で嗜好性の低いこととよく一致した。
  • 第1報 緑カビに対する有効殺菌線量と果実の品質に及ぼす照射の影響
    梅田 圭司, 川嶋 浩二, 佐藤 友太郎, 伊庭 慶昭, 西浦 昌男
    1969 年 16 巻 9 号 p. 397-404
    発行日: 1969/09/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    (1) 緑かびの胞子をミカンの果皮に接種して,5℃に貯蔵後,1MeVの電子線で処理すると,電子線照射前の貯蔵期間が長いほど殺菌効果は小さくなる。
    (2) 電子線照射線量が高くなると,果皮の軟化,油胞陥没が起こり,これに伴い褐色の斑点が発生し果皮の褐変化が起きる。この油胞陥没から褐変までの現象は,収穫から照射処理までの経過時間が短いほど発生しやすい。
    (3) 電子線照射による軟化→油胞陥没→褐変といった果皮の放射線障害は照射後の常温貯蔵によって促進され,3~5℃の低温貯蔵で抑制される。また電子線処理前のキュアリング(予措)は放射線障害の発生に抑制効果はない。
    (4) ミカン果皮の表面殺菌に,0.5MeVの電子線は,1MeVの電子線と同様な殺菌効果を示し,0.5~1.0MeVのエネルギーでは差がなかった。1MeVの電子線と60C0のγ線を比較すると,殺菌効果は同程度であるが,γ線処理では50 Kradの低線量でオフフレーバーが発生し,電子線では250 Kradまで外観,食味なんら悪影響を与えない。
    (5) 長期貯蔵後の電子線処理ミカンの成分と,未照射試料との間に差はなかった。また貯蔵後の官能検査では,照射処理によってフレーバーが劣化した例はなく,逆に100~300 Kradでは未照射区よりも高いスコアーを示した。
  • 芝崎 勲, 松本 公作, 堀江 英子
    1969 年 16 巻 9 号 p. 405-409
    発行日: 1969/09/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    DEPCの新規な利用面を見出す目的で,適用上の基礎となる2, 3の条件因子について検討を加えた。
    (1) DEPCの殺菌作用力は既往の文献と大体一致するが,Can. utilis, Ps. aeruginosa, Pen. thomii胞子について殺菌作用経過を検討し,いずれに対しても強力な作用をもっていることを明らかにした。
    (2) 殺菌作用に対する温度の影響を0°~30℃の範囲で検討し,殺菌作用力の温度係数が加水分解速度のそれよりはるかに大きいことを認めた。
    (3) 食塩などで調節した低aw環境ではDEPCの加水分解速度はほとんど変動はないが,殺菌作用力が増強する傾向が認められた。
    (4) クエン酸塩,酢酸塩,リン酸塩,可溶性デン粉,ペプトンなどは,DEPCとの濃度比,pHなどによって影響をうけるが,著しく殺菌作用力を低下させる。
  • 芝崎 勲, 松本 公作, 堀江 英子
    1969 年 16 巻 9 号 p. 410-413
    発行日: 1969/09/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    DEPCの表面殺菌剤としての有効性を2, 3の食品について検討した。
    (1) 浸漬処理によってウインナーソーセージ表面に発生するネトの防止試験を行ない,10℃以下の低温に貯蔵するとき,少なくとも無処理対照の2~3倍は貯蔵期間が延長できることを認めた。
    (2) ウインナーソーセージ浸漬条件としては,DEPC 1000ppm程度の濃度で,浸漬溶液のpHを5.0以下にし,50℃以上で5分以内の浸漬時間で処理するのが最適である。
    (3) DEPCのフレオンまたはLPガスで稀釈した噴射剤を用いて,ウインナーソーセージ,パン,味噌の表面に存在する変敗微生物を殺菌することができることを認めた。
  • (第1報)L-リジンによる古米臭の消去について
    山本 淳, 木暮 正祐
    1969 年 16 巻 9 号 p. 414-419
    発行日: 1969/09/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    (1) 典型的な古米臭を有すると判定された新潟県産の古米に,各種のアミノ酸を添加して炊飯し,官能検査によって検した結果,L-リジン塩酸塩を添加したときにのみ,古米臭を消去する効果を認めることができた。
    (2) このような効果を確かめるために,上述の古米に添加量を変え,また,現在市販の経路で入手可能な各種の米に対して,一定量のL-リジン塩酸塩を添加して炊飯し,官能検査により検した結果,使用する米の種類によって効果に差異はあるが,少なくとも異臭,異味を付与する逆の効果はまったく認めることはできなかった。
    (3) このような,L-リジン塩酸塩による古米臭消去の機作を知るために,n-プロパナールの稀薄水溶液に,等モルのL-リジン塩酸塩,遊離L-リジン,DL-アラニン,L-オルニチン,L-アルギニンを添加して加熱し,直接G.C.で検した結果,n-プロパナールはL-リジンの位のε-アミノ基と反応し活性化されることを知った。
    (4) また,このときL-リジン塩酸塩と炭酸カルシウムを共存させることによって,n-プロパナールが不揮発化されることを明らかにし,実際に炊飯するときの機作を推定できた。
    (5) 揮発性脂肪酸として,n-プロピオン酸についても,同様にモデル系による検討の結果,揮発性脂肪酸はL-リジンとの弱い塩結合によって不揮発化されるものと考えられる。
  • 山本 淳, 安井 浩
    1969 年 16 巻 9 号 p. 420-424
    発行日: 1969/09/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    (1) 牛肉エキスの世界的な生産の減少に伴って,酵母エキスをはじめとする種々の代替物がスープなどの原料に用いられているが,牛肉エキスと酵母エキスの温水溶液では,表面に浮遊した脂肪の分散に明確な差異が認められた。
    (2) このような浮遊脂肪の表面分散の差異の原因を明らかにする目的で,両者のコロイド滴定を行なった結果,牛肉エキス中にのみ見出される正コロイドが浮遊牛脂の分散に重要な因子となっていることを知った。
    (3) さらに,この正コロイドの役割を明確にする目的で,牛肉エキスを透折,強酸性イオン交換樹脂による吸着分別によって,正コロイド含有区分,非解離性高分子区分,低分子区分に分け,おのおのの浮遊脂肪の表面分散ならびに表面張力の測定を行なった結果,添加した牛脂の分散には正コロイドの影響がもっとも大きいことを確実に裏付けることができた。
  • (第4報)大豆の3-sn-phosphatidylcholineの構成脂肪酸組成
    木村 繁昭, 本木 正雄, 柴崎 一雄
    1969 年 16 巻 9 号 p. 425-429
    発行日: 1969/09/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    大豆3-sn-phosphatidylcholineは硝酸銀薄層クロマトグラフィーで4バンドに分離されRfの大きいものよりSBL-1~4と命名した。SBL-1はオレイン酸8.2%,リノール酸46.9%, SBL-2はリノール酸93.2%, SBL-3はリノレン酸24.0%,リノール酸21.4%, SBL-4はアラキドン酸63.8%,エイコサトリエン酸10.2%で不飽和度により分離されることが明らかになった。いっぽう硝酸銀カラムクロマトグラフィーでは構成脂肪酸を異にするフラクションA, A', B, C, C', D, E, F, Hに分画されたので,同様にこれら各区分の構成脂肪酸を明らかにした。なお,フラクションAはSBL-2に,フラクションEはSBL-4に相当した。
  • 蔡 平里, 上田 博夫, 辰巳 忠次
    1969 年 16 巻 9 号 p. 430-432
    発行日: 1969/09/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    (1) 水素炎イオン化検出ガスクロマトグラフィーを用いて,天然のカプサイシン結晶,市販とうがらしオーレオレジン,合成カプサイシン系辛味物質などの分析を試みたところ,試料注入口温度を360℃にすることにより,Silicone GE SF-96カラムでよく分離することがわかった。
    (2) 天然のカプサイシン結晶は少なくとも4成分の存在を示し,そのうちピークbは水素添加によりピークaにうつることや,従来の報告からその主成分がカプサイシンであることを考えあわせた場合,ピークはbカプサイシン,ピークaはジヒドロカプサイシンと推定される。
    (3) カプサイシン系辛味物質はトリメチルシラン化した場合,試料注入口温度250℃で同じくSilicone GESF-96カラムによりよく分離し,それぞれの相対保持時間が示された。
  • 1969 年 16 巻 9 号 p. 433-436
    発行日: 1969/09/15
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
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