日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
17 巻, 3 号
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  • (第5報)トマト果実の追熟およびその生理作用に及ぼす影響(その2)
    加藤 勝一, 茶珍 和雄
    1970 年 17 巻 3 号 p. 97-103
    発行日: 1970/03/15
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    (1) ガラス室栽培の「高津」と「揚子」(熟度breaker)を供試し,250, 500および1000Kradの線量のγ線を照射し,20℃貯蔵における呼吸作用,エチレン生成へのγ線の影響について検討した。
    (2) トマト果実の炭酸ガス排出量は照射によって一時増大する。比較的空気の流通のよい貯蔵下で未照射区では2日後に,250Krad区ではそれより2日遅れてmaximumに達する。着色の進行も未照射区より2日遅れる。1000Krad区ではclimacteric riseは示さず漸減し,その量も少ない。
    (3) エチレン生成量は照射により一時増加する。未照射区では貯蔵後2~7日の間に比較的ゆるやかなpeakが認められ,250,500Krad区では2日後の極大値を除けば追熟に伴う炭酸ガス排出量の変化とほぼ同様の傾向を示した。1000Krad区では照射直後増加するが数時間のうちに急減し,貯蔵中の生成量も少ない。
    (4) 照射トマト(250,500Krad)に照射直後と照射後4日にエチレン処理(100,500ppm. 18時間)を行なった。未照射区では100ppm処理によってエチレン生成量は増加するが,貯蔵中そのpeakが早められることはない。250,500Krad区ではエチレン生成の増大が早められ,着色もやや促進される。また照射後4日に500Krad区(熟度light pink)に100ppm, 500ppmエチレン処理した場合でも同様な結果が得られた。
    (5) 組織切片のエチレン生成は未照射区では組織を切ることにより増大するが,照射区では照射後1日ではその生成量は未照射区よりも少ない。250Krad区は貯蔵中に回復するが,1000Krad区は貯蔵中増大せず,生成量も少ない。
    組織切片はH2O2, glycolate, oxalate, L-methionine,L-methionine+H2O2, citrate+H2O2を添加したところ,未照射区では各試薬について添加による増大効果がみられた。250Krad区では貯蔵中増大効果が回復するが,1000Krad区では生成量も少なく添加による増大効果もほとんどみられなかった。
    (6) 1000Krad照射トマト組織のリン酸緩衝液による粗酵素抽出液を調製し,これを未照射,250Krad区の組織切片に添加するとエチレン生成が増大することが認められた。
  • (第2報)露地トマト果実の成熟・追熟に伴うリン脂質の変化
    南出 隆久, 上田 悦範, 緒方 邦安, 釜田 英雄
    1970 年 17 巻 3 号 p. 104-109
    発行日: 1970/03/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    (1) 露地栽培トマト,品種「米寿」を用い,成熟追熟中に伴うリン脂質の変化を調べた。
    (2) 総リン脂質については,成熟が進むにつれて増加し,貯蔵4~5日後climacteric peakが現われるころに著しく減少し,その後追熟が進むにつれ漸次減少するが,貯蔵末期の果実が水泡状態になったものでは,増加を示した。
    (3) 総リン脂質をTLCで各組成に分画し,そのおもな組成について定量した結果,PC, PEが全体の約60%を占め,PCは成熟中は,ほとんど変化ないが,貯蔵後4~5日ごろ,急激に減少し,その後漸次減少している。
    PEは成熟中やや増加し,貯蔵後4日に減少しその後増加している。他の組成については,あまり著しい変化は認められない。
    (4) リン脂質を構成している脂肪酸を,総リン脂質,PI, PC, PE, Cardiolipidについて,GLCを用いて調べたとこ,C18:0, C18:1, C18:2, C18:3, C16:0などが多く検出され,SFAは追熟が進むにつれ多くなり,climacteric peakが現われる貯蔵後5日には, C18:3, C18:2,C18:1などの高度不飽和脂肪酸が活発に利用されることが認められた。
  • 鈴木 たね子, 竹内 誠
    1970 年 17 巻 3 号 p. 110-112
    発行日: 1970/03/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    (1) 鮮肉中の大部分の水は自由度が高く,共鳴線巾は狭く,ブロードラインNMRスペクトルからは多くの知見が得られなかった。
    (2) 高分解能による水プロトンのスペクトルでは,鮮肉の水は見掛け上非常に自由度が高く,水分42.8%に乾燥したものは著しく共鳴線巾が広っている。さらに脱水すると共鳴線巾は広がり見掛け上水の自由度は失なわれると解された。またある限度以上脱水が進むと共鳴線は再び狭くなることが観察された。
    (3) 脱水とともに水プロトンのスペクトルの型は非対称型となり魚肉中にいろいろの状態の水が存在しており,それらの水は脱水処理に対して安定度が異なっていると解釈された。
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