トマトジュースをガラスアンプルに充填し,glycerinbathで80℃から130℃の範囲で加熱し,高温加熱がトマトジュースのcarotenoidsに及ぼす影響について2, 3検討した。lycopeneの定量は3G3ガラスフィルターを使うメタノール・ベンゼン抽出法で行なった。
(1) 7分間の加熱で比較すると90℃,100℃では約1~2%のlycopeneの減少であるのに対し,110℃,121℃, 130℃では4.4%, 10.6%, 17.1%と減少は急激であった。
(2) 加熱当初の1分間がもっともlycopene減少が著しく,それ以後は各温度ともそれぞれ一定の率で減少していた。
(3) 加熱によるlycopeneの減少に伴ってメタノール抽出部のcarotenoidsが著しく増加していた。
(4) メタノール抽出部を活性アルミナクロマトグラフィーによって分画し7つのフラクションを得た。吸収スペクトル,薄層クロマトグラムなどによりF3, F7をそれぞれβ-carotene, lycopeneと同定した。そしてとくに増加していた3つのフラクションのうちのひとつがlycopeneであった。
(5) 加熱温度別にメタノール抽出部中のlycopeneを定量したところ,加熱温度の高くなるにつれてメタノール部へのlycopene溶出の著しいことがわかった。80℃ 10分の加熱では約2.0%であるのに対し130℃ 10分の加熱では約6.7%のlycopeneがメタノール部へ溶出していた。
(6) lycopeneを定量する際のメタノール洗浄液中に,加熱温度の高かったトマトジュースほどlycopeneが多量に溶け出してしまう原因について考察がなされた。
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