クリ甘露煮製造工程中の渋皮剥離について現在の手剥ぎ方法に形態的に近い方法を見い出す目的で,薬品処理によって渋皮のみならず果肉最外層をも併せて除く方法を検討した。本報で得られた結果を要約すると次のようになる。
(1) まず果肉各部位の成分の相違をみるためにクリ果肉を外層,中層および内層に3分割してそれぞれの部位の成分を分析した。その結果,表層ほど水分少なく,その他の成分は高い傾向にあり,ことにでんぷん,全窒素および灰分含量は明らかに表層に向うに従って多かった。
(2) 渋皮とともに果肉の表層を除くには過塩素酸,塩酸および硝酸の3種の鉱酸が有効であったが,処理温度を50℃以下にする必要があり,53℃を超えると表層の硬化が起こり,表層除去が不可能となる。渋皮とともに表層を酸を用いて除去するための条件として,酸濃度2%, 50℃,約30分処理して渋皮を除き,同条件で約15分処理して表層を除くのが適当と考えられた。
(3) 酸による表層除去に当たっては形態からみて,全果に対する歩留りを60%以下にする必要があると思われる。
(4) 酸処理を行なうと果肉が硬化しやすい傾向があり,pHの低下と果肉の硬化は水溶性蛋白質が一部関与しているものと推察された。したがって本法で処理した果肉を軟化させる方法をさらに検討する必要がある。
抄録全体を表示