トマト果実中にNO
3-Nが蓄積する要因を知る目的で,大豊(有支柱),チコー,H1370(いずれも無支柱)の3加工用品種を用い,Nの施肥量を3段階とし,1968,1969の両年,東大農学部ほ場で栽培を行ない,収穫果実中のNO
3-N含量を調べた。
(1) 品種間差異は明らかでなかった。施肥量による差もはっきりせず,少施肥区においても含量の多い場合がみられた。
(2) ホルモン(トライロントマト)散布による影響は認められなかった。
(3) 時期的変動がみられ1969年度は6月下旬~7月上旬の収穫前期は低く,7月中下旬に高く,8月上旬の末期には再び低くなった。
(4) 大豊で果房別の果実中のNO
3-Nを調べた結果は,時期的変動のパターンとよく類似していた。
(5) 熟度の影響は,大豊では緑熟果よりも完熟果のほうがNO
3-N含量が低かったが,他2品種では分析時期が異なったため,時期的変動の影響を受け,はっきりした傾向が得られなかった。
(6) 果実の部位別では各品種とも,へた直下部分の濃度が高く,ついで果肉中で,プラセンターには少なく,ゼラチナスパルプには全く含まれていなかった。
(7) 完熟果を収穫後28℃の室温下におき貯蔵したが,7~10日までNO
3-Nの変動は少なく,またNO
2-Nの蓄積も認められなかった。
(8) 以上の結果より,NO
3-N蓄積に及ぼす諸要因中,もっとも大きいと思われるのは時期的変動であり,これは気温,降雨量などの気象環境,土壌中のNO
3-N含量,植物体の生活機能などの条件が相互に関連しあい,その結果として現われたものと考えられる。
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