柑橘のカロチノイド生合成に関する研究手段として,電子線照射によるカロチノイドパターンの攪乱,維管束部よりの標識化合物導入法が可能かどうか,また標識化合物の導入を電子線照射の前後のいずれに行なうのが妥当かを検討した。
2.5Mrad照射した果皮の全カロチノイドは照射直後に約40%低下したが,その後徐々に増加して2日目以降のカロチノイドの増加率は未照射と同じである。これに対し12.5Mrad照射したものは放射障害の回復が遅れ,全カロチノイドの増加率も未照射,2.5Mradより低く,照射後8日目でも全カロチノイドの量は照射前より少ない。
照射後の時間経過に伴うカロチノイドパターンの変化は2.5Mradも12.5Mradもほぼ同じである。照射直後のカロチノイドパターンは未照射と同じで,2日目からDD1, DD2の減少と,5日目からD, DM1の増加が目立つ。結局,照射によつて起こる変化はDDの極端な減少,MMの減少,D, DM, Pの増加であり,H, Mはほとんど変化をうけない。
果皮のカロチノイドへの2
-14C-MVAの取込みは,ミカン果梗部の維管束部から吸収させた。取込速度は速く,1, 3, 12日目では1日目の取込量が最も多く,以後急速に減少した。各カロチノイドグループへの取込量,取込速度,減衰速度はそれぞれ異なる。また電子線を2.5Mrad照射したミカン果皮のカロチノイドへはMVAは取込まれず,照射処理によってMVAのカロチノイドへの取込みは阻止されるものと考えられる。
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