日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
19 巻, 10 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • (第7報) トマト果実の着色に伴うクロロプラストの形態的変化と脂質の消長
    南出 隆久, 緒方 邦安
    1972 年 19 巻 10 号 p. 453-459
    発行日: 1972/10/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    トマト果実の着色に伴うクロロプラストの糖脂質の消長と形態的変化を調べた。
    (1) 緑色果では,糖脂質,クロロフィル含量が多く,果実が着色するbreaker期からlight pink期にかけて,その含量は激減した。タンパク質は成熟とともに増加し,breaker期でもっとも多く,その後着色が進むにつれて減少した。リン脂質についても同様の傾向がみられた。
    (2) クロロプラスト中の糖脂質のうちmonogalactosyl diglyceride (MGDG)とdigalactosyl diglyceride (DGDG)の脂肪酸組成をガスクロマトグラフィーで分析した。MGDGについては,linoleic acid, palmitoleic acidなどの不飽和脂肪酸が多く,緑色果ではlinolenic acidもかなり含まれていた。果実が着色しはじめるlight pink果ではlinolenic acidはほとんど消失した。一方,DGDGはlinolenic acidがほとんど存在しない。着色が進むにつれ,しだいに不飽和脂肪酸が多くなった。
    (3) トマト果実およびクロロプラスト中の遊離脂肪酸を調べたところ,果実では,breaker期で一時多くなり,light pink期で減少し,その後多くなった。一方,クロロプラスト中の遊離脂肪酸は,mature green期でもっとも多くlight pink期で最少となり,着色が進むと再び多くなった。両者の脂肪酸組成をみると,トマト果実では不飽和脂肪酸が多く,クロロブラストでは逆に少ないことがわかった。
    (4) 果実の成熟に伴うクロロフィラーゼ活性の変化は,breaker期でもっとも強く,着色が進むと活性は低下した。クロロフィル含量もbreaker期からlight pink期にかけて急減した。
    (5) 果実の着色に伴うクロロプラストの形態変化を電子顕微鏡で観察した。緑色果のクロロプラストは,緑葉植物のものとよく似ており,ラメラ構造が発達している。着色が始まるbreaker期ごろのクロロプラストは,ラメラ構造が薄くなり,所々に球体が認められる。dark pink期になると,緑色果のものと明らかに異なり,ラメラ構造はなく,球体が多くなることが観察された。
  • 岡本 辰夫
    1972 年 19 巻 10 号 p. 460-464
    発行日: 1972/10/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    L-リンゴ酸の分解力が強いと認められるSchizosaccharomyces pombe IFO 0358の生育に必要な栄養素について検討した結果,生育用基本合成培地として次のものが適当であると認められた。glucose 5%,NH4H2PO4 0.3%,KH2PO40.1%,MgSO4・7H2O0.05%,meso inositol 2000μg/l, nicotic acid 400μg/l, calcium pantothenate 400μg/l, biotin 2μg/l, pH2.6,必要に応じてL-リンゴ酸を0.3%添加。次に,上記の生育基本合成培地ではL-リンゴ酸の分解力が,リンゴ果汁中での分解力に比べると弱いので,L-リンゴ酸分解用の基本合成培地を検索したところ,とくに窒素源として,NH4塩の代わりにL-asparagineを用いることにより,この菌のL-リンゴ酸分解力を強化させうることが見出された。また,この菌のL-リンゴ酸分解力の主因となっていると認められるリンゴ酸脱水素酵素活性におよぼすビタミン類,無機質,窒素化合物の影響についても検討を加えた。
  • (第2報) トマト中のフラボノイド組成及びそれらの抗酸化能
    三木 登, 赤津 一衛
    1972 年 19 巻 10 号 p. 465-470
    発行日: 1972/10/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    トマトおよびトマトジュースの酢酸エチル抽出液に抗酸化能のあることを前報で指摘した。抗酸化能を示す物質のひとつとしてフラボノイドに注目し,トマト搾汁液中のフラボノイドを分析し,分離されたフラボノイドの抗酸化能について調べた。その結果,
    (1) 二次元ペーパークロマトグラフィーにより4つ(S-1, S-2, S-3, S-4)のフラボノイドを検出した。Rf値,呈色試薬による発色および吸収特性により,S-1,S-2, S-3はそれぞれquercetin, naringenin, rutinであると同定した。ポリアミドカラムクロマトグラフィーにより多量のS-4を採取し,その塩酸加水分解生成物を二次元ペーパークロマトグラフィーおよびガスクロマトグラフィーにより調べ,それらを定量した結果,naringeninおよびグルコースが等モル含まれていた。HOROWITZの方法に従い,吸収特性を調べた結果,S-4はpruninであった。
    (2) Rutin, prunin, naringenin, quercetinの含量はそれぞれ0.35, 0.22, 0.21, 0.15mg%であった。
    (3) 分離されたフラボノイドの抗酸化能は,β-カロチンの自動酸化に対してはquercetinが比較的強い抗酸化能を示していた。酵素酸化に対してはrutinが最も強く,prunin, quercetinの順で活性を示した。Naringeninの活性はわずかであった。
  • (第3報) Diffuser内における庶糖損失について
    鴨居 郁三, 菊池 修平, 谷村 和八郎
    1972 年 19 巻 10 号 p. 471-474
    発行日: 1972/10/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    甜菜糖製造工程中のunknown lossは甜菜に対して0.29~0.38%といわれている。われわれはこの中微生物によって起る蔗糖損失を明らかにすべく,その活動の場であるdiffuser内で生成される乳酸量から,これを推定することを試み,次のごとき結果を得た。
    (1) cossettesおよび滲出汁中の乳酸を,イオン交換樹脂処理により分離し,比色法により定量した。cossettes中および滲出汁中の平均乳酸量は34mg/kgおよび376mg/kgで,diffuser内で相当量の乳酸が生成されていた。
    (2) diffuser内での生成乳酸量に対する消費蔗糖量の比率は1:3.32で,乳酸1gを生成するために,蔗糖が3.32g消費されていると推定した。
    (3) diffuser内における蔗糖損失は,甜菜に対して約0.13%であり,unknown lossの35~45%は,diffuser内で微生物により起っていることを知った。
  • 中川 致之, 田村 真八郎, 石間 紀男
    1972 年 19 巻 10 号 p. 475-480
    発行日: 1972/10/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    味の異なる20種の緑茶の浸出液について,苦味,渋味,うま味,甘味など味要素別の強さと総合的な味の強さを官能検査により測定し,構成味要素の強度のパターン(呈味構造)とし好度との関係を究明した。
    (1) 苦味,渋味,総合的な味の強さが強過ぎても弱過ぎてもし好度が低下し,中程度の近辺でし好度の高いものが多かった。
    (2) うま味,甘味は緑茶としてのイメージが損なわれない範囲内では強いほどし好度が高かった。しかし,味要素としてのうま味がある程度以上になると異質感が生じ,その増加に伴ってし好度が低下した。
    (3) 苦味,渋味が強くなるとうま味,甘味が弱く感じられること,また,うま味,甘味が強くなると苦味,渋味が弱く感じられることが認められた。
  • (第2報)*製パンにおけるインベルターゼの効果について
    田中 康夫, 小柳 妙子, 工藤 範子, 佐藤 友太郎
    1972 年 19 巻 10 号 p. 481-486
    発行日: 1972/10/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    インベルターゼを製パンに使用した場合の効果について検討し,次の結果を得た。
    (1) インベルターゼ活性が全般に低いわが国のパン酵母を,中種法による食パンの製造およびリーンブレッドの製造に用いた場合,インベルターゼの補足効果が認められた。。
    (2) インベルターゼの添加によって発酵時間の短縮が可能となり,リーンブレッドの場合,パンの体積増大,品質向上などの効果も得られた。
    (3) 製パンに用いる小麦粉とパン酵母の組み合わせによっては,インベルターゼの効果の現われない場合があるが,小麦粉のフラクトサイド含量が多く,パン酵母のインベルターゼ活性の低い場合,たとえば前者が約800mg%以上,後者が約8U以下といったような組み合わせの場合,効果は顕者に現われた。
    (4) インベルターゼを添加しても生地の粘弾性に及ぼす影響は現われなかった。
  • 相沢 孝亮, 山辺 誠, 中村 博治, 谷村 和八郎
    1972 年 19 巻 10 号 p. 487-490
    発行日: 1972/10/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    豚皮の食品化を目的として油熱処理を行ない次のような結果を得た。
    (1) 豚皮の油熱処理条件は膨脹率の点で1回処理法よりは,2回処理法がすぐれている。
    油の温度と時間は膨脹率を左右する。1回目処理条件は油の温度が60°~70℃の時に豚皮を入れ,110℃になったら取り出す。この間の時間は約10分である。2回目処理条件は130℃では21分,140℃では9分,150℃では6分がよかった。最高膨脹率は1800%であった。
    (2) 膨脹率を高める目的でpHの変化および(NH4)2CO3の前処理を検討したが効果はなかった。
    (3) 油皮の一般成分およびアミノ酸組成を調べた。油皮のアミノ酸組成は食品としておおむね良好である。
    (4) 油皮の人工消化試験は96.8%であった。油皮の状態はポーラスのセンベイ状を呈し香ばしく軽い風味がある。そのまま食品としてあるいは,調理用材料として用いられる。
  • 高坂 和久, 新村 裕, 檀原 宏
    1972 年 19 巻 10 号 p. 490-492
    発行日: 1972/10/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    羊腸のγ線照射処理および次亜塩素酸ナトリウム処理による殺菌効果と強度への影響について検討し,次の結果を得た。
    (1) γ線照射による殺菌効果は,5Mradで完全,1Mradでほぼ完全,0.5Mradでは不十分であった。次亜塩素酸ナトリウム処理は,大体1Mrad照射に匹敵する効果があった。
    (2) 羊腸の引張り強度,伸び率は,5Mrad照射では明らかに劣化し,その他の処理区はほとんど劣化しなかった。また,1Mrad以下の照射区と次亜塩素酸ナトリウム処理区の間には,有意の差はみられなかった。
    (3) したがって,γ線1Mrad照射処理は,現行殺菌法(次亜塩素酸ナトリウム処理)に代え得ることが明らかとなった。
    (4) なお,現行殺菌法は,羊腸の強度に影響しないことも明らかとなった。
  • 1972 年 19 巻 10 号 p. 493-498
    発行日: 1972/10/15
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
feedback
Top