カキ果実の甘渋の差,あるいは脱渋速度の品種間差異などを説明するための一助として,甘ガキ8品種,渋ガキ11品種およびVariant 4品種について,果肉中のアセトアルデヒド含量,エタノール含量およびアルコール脱水素酵素活性について調査した。
(1) 甘ガキは渋ガキに比べて約10倍量のアセトアルデヒドを含んでいた。渋ガキを炭酸ガス脱渋法およびアルコール脱渋法で脱渋すると,いずれの場合も甘ガキと同程度ないしはそれ以上のアセトアルデヒド含量が認められた。
(2) アルコール脱水素酵素活性は,甘ガキと渋ガキおよびVariantの脱渋部分と未脱渋部分とで差は認められず,いずれも充分強い活性を持っていた。
(3) 甘ガキの場合,渋ガキの炭酸ガス脱渋後およびアルコール脱渋後のいずれの場合も,アセトアルデヒド含量とエタノール含量とは平行的な関係があり,両者間に有意の相関関係が認められた。一方,アルコール脱水素酵素活性とアセトアルデヒド含量およびエタノール含量との間は,いずれも一定の傾向を認めることができなかった。
(4) 渋ガキの炭酸ガス脱渋法とアルコール脱渋法の場合とで,果肉中のアセトアルデヒド含量およびエタノール含量の増加の様相が異なり,前者は後者に比べてアセトアルデヒド含量が多く,エタノール含量が少なかった。この相違は,脱渋法の相違によってアセトアルデヒドおよびエタノールの生成系にある程度の差があることが,1つの原因になっているものと推察した。
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