かっ変反応物の窒素含量と抗酸化力との関係を知るため,窒素含量の異なるメラノイジンを精製し,リノール酸に対する抗酸化力を試験するとともに,数種の市販抗酸化剤との効力の比較および相乗性について検討した結果はつぎのとおりである。
1) 2
Mキシローズに対して2
M, 4
M, 10
Mのアンモニアと,その割合を変えて調製したメラノイジンの抗酸化試験においては,各メラノイジンの窒素含量の差異が1%程度と少なく,3者はほとんど等しい抗酸化力を示した。このことは基質が同じで,しかも同じ程度の窒素含量のメラノイジンの効力は等しく,さらに消極的ではあるが,桐ケ谷らの窒素含量がますと抗酸化力が増大するとの説を支持していると考える。
2) 2
Mギシローズに対して2
Mのアンモニアおよび数種のアミノ酸を反応させて調製したメラノイジンの抗酸化試験において,各精製メラノイジンはその窒素含量によって大きく2つのグループにわかれた。すなわち,グリシン・キシローズ系,リジン・キシローズ系のメラノイジンでは窒素含量が約6%と低いが,アルギニン・キシローズ系,ヒスチジン・キシローズ系およびアンモニア・キシローズ系のメラノイジンでは約11~12%と高い窒素含量であった。窒素含量と抗酸化力との関係では,6%台のグリシン・キシローズ系,リジン・キシローズ系メラノイジンの抗酸化力は11~12%台の他の3者に比較して著しく弱かった。しかし同じ6%台のリジン・キシローズ系とグリシン・キシローズ系メラノイジンとの間には大きな効力の差があり,また12%台のアルギニン・キシローズ系より,11%台のヒスチジン・キシローズ系のメラノイジンの方が抗酸化力は強かった。これらの結果から窒素原子がメラノイジンの抗酸化力に影響する重要なる因子であると考えられるが,量的な問題だけでなく,メラノイジン中の窒素の結合様式なども関係していることが推察される。
3) メラノイジンと市販抗酸化剤との単位還元力あたりでの抗酸化力の比較では,メラノイジンは他の抗酸化剤に比べて非常に強力な抗酸化力を示し,メラノイジンの還元性にもとづくラジカル・インヒビター的作用が抗酸化性の主因であるとは考えられない。また単位重量あたりの効力の比較ではBHAと同程度の抗酸化力を示したが,BHTよりは劣った。さらに,BHAとの間には相乗性が認められたが,クエン酸との併用による効果は示されなかった。
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